閑古堂は節約オヤジの店である。さらに今年も節電の夏である。
 というわけで今日もエアコンのスイッチはオフのままで、店内のドアはもちろん、窓という窓を全開にした。
 
 するとどうだ、外の話し声がストレートにボクの耳に飛び込んでくるようになってしまったではないか。 
 
 「おまえ、○美のこと好きなのか?」
 さっきまで、サッカーボールを蹴っていた小学生男子の声だ。
 すると聞かれた方の男子が
 「ああ・・・。でもキミもでしょ」
 と聞き返した。すると
 「おまえそんなこと誰にも言うなよ」と怒ったような声。

 その後やや声が小さくなり
 「○美はおまえのことが好きらしい」とか
 「いや、キミに気があるって××に聞いた」とか
 そんな、美しい譲り合いの会話が続いたのだ。
 
 初恋が親友との三角関係だなんて、この子達の恋の未来が楽しみだなあ、なんて想いを巡らせていたら、その純な会話が瞬間途切れた。

 するとそこに聞き覚えのあるオバさんの声。
 「閑古堂のマスターってやっぱりケチなんじゃない。こんなに暑いのにエアコン付けないらしいわよ・・・」

 節電の夏。愉快な夏。まだ始まったばかりだ・・・。