いつものショットバーのカウンターに座りマスターと話していたら、50代のオジさんと20代中頃に見える若者の二人組が入って来た。
「マスター、こいつ高校の後輩。さっき焼き肉屋で偶然知り合ったんだけどさ」と、オジさんが若者を紹介した。すると若者は
「初めまして、○○です。よろしくお願いします」と爽やかに挨拶した。
そこでオジさんが若者の肩を叩き
「今日は遠慮すんな、好きなもの飲め」と大声で言った。
すると若者は
「それじゃお言葉に甘えて、△△(良く聞こえなかった)でもごちそうになっちゃおうかな?」と微笑みながら答え、トイレに立った。
トイレのドアがしまった瞬間
「ねえ、△△ってどんな酒?、いくらすんの」
オジさんがカウンターに身を乗り出すようにして、小声でマスターに聞いた。
「うちじゃ一番高いウィスキーですよ。一杯4千円です」と、マスターが答えた。
「なんじゃそりゃ。まずいよ、△△は無し。マスター、あいつに俺と同じもん出してやって」
と、きっぱり言った。
そこで若者がトイレから戻ってきた。オジさんはすぐにハシャイだような感じで
「まあ最初は俺と同じ酒飲め」と言って席に座らせ「ところでさあ・・・」と話を変えようとした。
すると若者はオジさんの話を聞き流すようにして
「マスター、スモークサーモンとチーズの盛り合わせ、それにサラダ下さい」と言った。
その注文を聞いたオジさんの顔はみるみる固まり
「おまえ、さっき焼き肉あんなに食ったのに、まだ食うのかよ」と怒ったように言った。
すると若者は「ボクまだ若いから」と悪びれることなく答えた。
その瞬間から、二人の会話はなくなり、あたりに重い空気が流れ出した。
「せっかく気分良く、カッコつけてたのに、オジさんが可哀想だ。若者よ、純なオジさんをあまりイジメるなよ」と、ボクは心の中で呟いた。
その時だ、突然そのオジさんがボクの方を見て「先輩!」と笑顔で話しかけて来たのだ。
その言葉と同時にボクは立ち上がり「マスターお勘定」と言った。
だって「ボクはお人好し先輩の先輩じゃないもの」。