夜が丁度明ける頃、船は大島に到着した。
 
 「トイレ」と言って立ち上がったオジさんは、それきり船室には戻って来なかった。
 
 船を降りると、桟橋には「路線バスや観光バスが出るまでの時間、休憩しませんか」と、旅館や食堂の人たちが懸命に客引きをしていた。

 何の目的もないボクは、どうしていいかわからず、人のいない桟橋の裏へ行き、石の上に腰掛け、ボーッと海を見ていた。

 30分ほどすると、あんなに賑わっていた桟橋から、人の気配は消え、波の音だけが寂し気に響いていた。

 始めての土地なのに、ガイドブックも地図もない。
 
   何となく海辺をぶらぶらし、当ても無く港町をさまよい歩く。
 そこでふと目に止まった神社の鳥居をくぐり、小さな社の前に立ち、さい銭でもと思って財布を取り出して、気持ちが突然現実に戻った。

 お金がもうほとんどない。これからいったいどうするんだ!と。

 選択肢は二つ。
 
 このまま島に残る場合は、あのオジさんと約束した、三原山登山口にある小屋へ行き、馬引きの仕事をさせて欲しいと頼む。
 帰るなら、また船着き場へ戻り、帰りの船の時間を見て、東京へ戻ってどうするかを考える。

 結論を出せないまま何となく歩き、桟橋まで戻って案内板を見た。
 東京行きの船が出るのは3時間後の午後2時過ぎだった。

 そこで思い知ったのは、人間はどんなに悩み、迷っていたとしても、お腹はちゃんとすくということだった。

 ふと立ち止まると、船の待合所からいい匂いがしてきた。のぞいてみるとそこには立ち食いそば屋があった。

 「よし、決めるのは腹ごしらえをしてからだ」と。
 しかし、カウンターの前に立ち、値段表を見てガッカリした。一番安いかけそばを食べても、帰りの船の切符は買えなくなる。
 腹は空腹警報を発しグーグー鳴り出した。
 
 決断しなくては、登山口へ行くか、ここでそばを食べるか・・・。

<またまたまた続くです。スミマセン。でも来週月曜日は、とうとう最終回?>