船は予想よりかなり大きく、たくさんの人が乗り込んだ。
 
 ボクは手ぶらで旅してる異常さをオジさんに指摘されたことを気にして、真っ先に売店へ行き、その頃凝っていた将棋の雑誌と文庫本、それにお菓子を買った。そして案内板に従い、船底にある畳の大広間といった感じの2等船室へ入った。
  
 そこには毛布とそば殻の枕が用意されていて、ボクはそれを持って、大広間のような船室の隅に座った。
 するとあのオジさんが大量のカップ酒とツマミをかかえ、当然のようにボクの隣に来て、微笑みながら腰掛けた。
 そして、酒をグイグイ飲みながら、竹芝桟橋で並んでいた時と同様の
 「噴火口へ飛び込むと地獄を見るぞ」という忠告話を何度もし、次いで酔いがまわってからは
 「オレは大島生まれの大島育ち、だから大島の事は何でも知ってる」 
 「三原山で観光用の馬を引いて40年。オレは馬と話がデキルんだ!」といった、自分の身の上話を得意気に語った。

 その時何度目かの馬引きの話になった時、
 「ボクも馬引きの仕事がしたい」なんて、決意したように言ってしまった。
 するとオジさんは
 「よ~しわかった。まかせろ。じゃ今日の昼、三原山の登山口の所にある小屋へ来い」と言ってくれたのだが、顔を見たら、もう目はうつろで、体は畳に倒れかかっていた。

 それから2~3時間が過ぎただろうか、皆が寝静まった頃、ボクは女性の怒鳴り声で目が覚めた。
 体を起こし、暗がりを見つめるとボクの隣に居たはずのオジさんが、近くに居た女性の毛布の中に入っているではないか。
 そして怒鳴られても、目をつぶったまま、女性の毛布の中から出ようとしない。
 するとその女性がボクをニラむように見て「この酔っぱらいさあ、あんたのお父さんじゃないの、早く連れてって」と大声で言ったのだ。
 
 その女性のあまりの剣幕に慌てて、ボクはそのオジさんを女性の毛布から引きづり出したのだが、
心の中では
 「こんな酔っぱらいのスケベなオヤジと、親子なわけないだろ!」と、叫んでいた。

 でもその時オジさんの顔を見たら、目は閉じていたが、顔は嬉しそうにニヤニヤしていたのだ。

<またまた明日へ続く。やっと終わりが見えてきたようです>