昨夜久々に六本木で飲み歩いた。
 だが、昨日は何かが変だった。半年前までは毎日通っていた東京のネオン街なのに、何となくだが、馴染みの無い観光地に居るような違和感を感じたのだ。
 ひょっとしてボクの心は、毎日の太平洋から吹きつける清らかな潮風によって、徐々に洗浄され、あの純情でウブだった小学生の頃の心に戻りつつあるのかもしれない・・・、なんて思った。酒もタバコも知らなかった。女性とはフォークダンスで手をつなぐだけでも顔が火照った、あの頃の心だ。
 「そうだ、こんな汚れた大人の街から、一刻も早く抜け出さなくては」そう思って、店を出て足早に駅へ向かった。しかし何という事か、茅ヶ崎へ帰れる終電はすでに終わっていた。さらに何処を探しても携帯電話もない。
 小学生の心になってしまっていたボクは、あわてふためいて公衆電話を探した。しかし最近は地下鉄の駅構内ですら、公衆電話など置いていないのだ。
 駅から一旦出て、やっとのことで公衆電話を見つけ、受話器に向かって「おか~さ~ん」と叫んだら、
「何言ってるの!今何時だと思ってんの!用事は何!」と、聞き慣れた奥さんの声が響いた。
 「どうやって帰ればいいでしょうね?」
 「何子供みたいなこと言ってるの!」
 その言葉でやっと現実に帰ったボクは、酒の恐さを思い知り、夜空を見上げて途方にくれた・・・。