何となくスイッチを入れたラジオから流れる歌を聞いて、初めて歌った歌謡曲を思い出した。それは石原裕次郎の「錆びたナイフ」。
 当時小学4年生だったボクは、テレビのモノマネ番組で聞いた「錆びたナイフ」を歌ってみたくなり、歌詞をメモ用紙に書きとめ、その紙を壁に貼り付け夢中で歌っていた。だから背後に迫るオヤジに気付かなかった。「ウルサイ」の声と同時に、オヤジの平手が思い切りボクの後頭部に飛んできた。その時の痛みは、今でもはっきり覚えている。
 それから歌はボクの友達になり、加山雄三、タイガーズ、吉田拓郎、井上陽水などを好んで歌った。中学生になると洋楽にも興味を持ち出し、ビートルズ、モンキーズ、サイモン&ガーファンクル、カーペンターズ、PPMなどもレパートリーに加わった。
 そういえば高校生の頃「イエスタディ」を熱唱していた時、隣りの部屋に居た祖母が「レコードの音をもう少し小さくしろ」と、怒鳴った。
 「いくら婆さんとはいえ、アカペラで唄った歌をレコードだと思ってしまった?ってことは」なんて勘違いしてしまった頃が、今となっては、無性に懐かしい。