飲み屋さんなどでは、どんな客にだって営業上、歯の浮くようなことを言う。ボクの場合、近頃では「ヒゲが似合いますねえ」というほめ言葉をしばしばいただく。勿論、それがお世辞だとはわかっているが、滅多にほめられることがなくなった昨今、気分は悪くない。だから「おかわり下さい」なんて、思わず言ってしまうわけだ。
 小学生の頃、父親に頼まれて近所のタバコ屋にハイライトを買いにいかされた。するとそこのおばさんが「ボクちゃんは鼻筋がピッと通っていて、二枚目だねえ。こりゃ将来は女泣かせだ」とボクの顔を見るたび言ってくれた。意味はいまいち理解できなかったが、ほめられていることは何となくわかり、ボクはいつも照れていた。
 しかし、その後大人になって、二枚目と言われたことはないし、女性を泣かせたこともないという事実を考えれば、あれもお世辞だったことに気付く。しかし、今でもそのおばさんのことは嫌いではない。
 やっぱり気分よく生きていくためには、ほめることを忘れてはいけないのだ。