昨夜の大江戸線の車内。座っているボクの前に会社の同僚に見える20代の男女が居た。
 「六本木に結構イケル沖縄料理屋を見つけてさあ・・・」「カクテルが何百種類もあるショットバーがあって・・・」「金曜の夜はオレ、徹底的に遊ぶんだ・・・」。その女性に気があるからだろう、男性は必死に誘いの言葉を投げかけるが、女性の反応は「へぇー・・・」とか「そうなの・・・」とか素っ気ない返事ばかり。顔は窓の外の暗がりをずっと見つめている。しかし男性はメゲルことなく次々に問いかける。
 そしてついにというべきか、彼女が反応した。その言葉は「昨日の夜、キミが夢に出て来てさあ・・・」だった。すると「それどんな夢だった」と、彼女が始めて彼の言葉に食いついて来たのだ。しかし、そこでカッコ良く決められないのが、惚れた男の弱さか、それとも彼の実力か。「いっしょに仕事しててさ、営業先から二人で電車に乗ろうとしてたんだけど・・・」。「そう、つまらない夢ね」と言って、彼女はまた外の暗がりに顔を向け、会話は終了となった。
 そこでボクは考えた。それがどんな夢だったら、彼女が興味を示したのかということを。
 「夕暮れの海辺で二人、波の音を聞きながら・・・」「深夜の高速道路をロックを聞きながらぶっ飛ばしてさあ・・・」「クリスマスの夜、高級ホテルのレストランでディナーを食べながら・・・」。
 ここまで想像して、ボクもその男性と50歩100歩、やっぱりモテない奴ってのはイザという時、イカス言葉が出てこないんだなあ、とつくづく思った。