ボクの親父は大正生まれで、第二次大戦では、あの有名なラバウルで戦った戦争体験者である。性格は内気で人見知り、無口で口べたで、人前に出た時は、その語り口があまりにしどろもどろで、隣りでドキドキしたことはしょっちゅうだった。その分母親は多弁で人好きで、買い物へ行くと、品選びより立ち話の時間の方が数倍長いというような人だった。
 そんな夫婦の息子だから、ボクはおしゃべりだが、人見知りなのである。しかし最近どうも親父に似て来たようで、ちょっと無口になってきたのだ。しゃべらないとジンマシンが出て来るような性格だったはずなのに、1時間くらいしゃべらなくても平気になってきたのだ。一般的にいえばそれが普通のオヤジなのだが、ボクにとっては大きな変化で、このままいったらどうなるのか不安にもなるわけだ。
 しかし、かっこいいオヤジと言えば、高倉健さんとか、田村正和とか、口数少なくニヒルで、ちょっと照れ屋みたいな感じの人のことだろう。ひっとしてボクもそちらの世界に近づいてきたのだろうかと、家族に話してみたら、誰も相手にしてくれなかった。