僕の仕事の基本は取材である。原稿を書くにしても、企画書をまとめるにしても、取材と調査をどれほど突っ込んでまじめにやったかが、その内容の質を大きく左右する。確かに取材をして、未知の世界の話を聞かされ、感動し、興奮したことはこれまで数えきれない。しかしだ、僕は本当は取材が好きではない。人の話を聞き出す過程が嫌いなのだ。
 それじゃ何が好きかといえば、質問されることが好きなのだ。相当落ち込んで、テンションが低い時でも、好きな事項の質問をされると、とたんにテンションが上がってくる。きっと多くの人がそうなのだと思うのだが、人に頼られる、質問されるということは、地味だが、おおきな喜びに違いないのだ。
 周囲に元気の無い人がいたら、その人の好きなことを質問してあげよう。そんな簡単な行為が、心のヘルスケアになることが多いからだ。
 ただ僕の場合、テンションが上がって、興奮して話だすと、その後長時間、原稿が書けなくなる。心が高揚してくると、書くという行為の頭ではなくなるかららしい。全く世の中はうまくいかない。