単なるおしゃべりは意味がない [11/07/20]
単なるおしゃべりは意味がない [11/07/20]
鈴木信行
「あなたは医療の現場をわかっているのか?」
患者の側から医療者への教育活動をしている仲間(ここでは「患者講師」と呼ばせていただきます)が講演後に聴講していた医療者から言われた言葉です。
前回、「患者の声は医療に活きる!」第1期の報告をさせていただきました。
そこでは、私を含め患者講師の6名が講義をしました。
私たち患者講師は、今回の講座だけではなく、大学、専門学校、病院、患者会などからの依頼に応じ、講義・講演などをさせていただいています。
その際には、自分の医療体験だけではなく、その時々に応じ、聴講していただく方々により効果が出るよう、内容を吟味し、お話ししています。
しかし、ときに、前述のように、聴講していただいた方から厳しい言葉が浴びされるときもあります。
そこで、今回のテーマは、「単なるおしゃべりは意味がない」。患者講師の資質について考えます。
私が思う、患者講師に必要な「資質」を挙げてみます。
- 自分の疾患を客観的に説明できる
- 同じ病気の人を複数知っており、自分の疾患を取り巻く医療を把握する努力をしている
- 聴講していただく方と同じ職種や立場の側の方とつながりがあり、現場の現状を把握する努力をしている
- 聴講していただく方の側に立った言動ができる
- 自分の話だけではなく、客観的な話ができる
- プレゼンテーションの技術がある
- 人の話に耳を傾けられる
- 自分を高めていこうとする意欲がある
これらは、なにも患者講師に限りません。講師として講演活動をされている方なら、ごく当たり前の「資質」です。
私を含めた患者講師の仲間たちは、切磋琢磨し、互いの発表を聞きあい、意見しあい、発表技術も磨いています。さらに内容が時代遅れにならないように、常に医療界の最新情報をチェックし、休みの日には医療系のシンポジウムや会合などに参加し、医療を提供する側の動向も把握するようにしています。
数年前までは、患者という立場で発表できる人材が乏しかったこともあり、自分の疾患の愚痴や医療者への文句のような話だけを聞かせるような講師がいたのも事実です(今でも・・・?)。いうなれば、単に自分の経験と意見をおしゃべりするだけ。
これでは、聞かされた医療者や学生は追い詰められるだけであり、講義や講演の意味はありません。
しかし、いまは時代が変わってきていると感じています。
患者講師の話は、そこで聴講者が何かを学び、次に踏み出せるステップになるべきです。つまり、患者講師は相手の現在の問題点や課題が分かっているからこそ、自分の体験を踏まえて、その解決策を示唆できなくてはならないと私は考えています。
例えば、私は、学校の場合は教育方針を、病院の場合は理念を、最低限のこととして確認します。製薬企業や医療メーカーなどで話をする際には、企業理念に加え、その会社が提供している製品も調べ、必ず事例として取り上げます。
それでも、冒頭のようなセリフを言われるときがあるのも事実です。
理解しているかと聞かれれば「努力している」としか答えられません。
しかし、大学の一般的な講義のように、周知の事実がありそれを記憶させるような授業とは違います。
患者講師の存在は、医療者と患者の歩みよりができる貴重な場だと思うのです。
先ほど、私が経営するみのりCafeには、私に相談があるというお客さまがご来店。彼女は、「大手術を受けたが医師に謝礼はいくら渡せばいいのか?」が相談内容。渡す必要はないと申し上げましたが、「以前通っていた○○病院の○○先生は○○万円を受け取った」と言います。
患者はこういうことでも悩み、わざわざ私のような所まで相談に来るのです。
まさに、医療者には見えない患者の感情の現場です。
「あなたは患者の現場をわかっているのか?」
私たち患者講師はいくら努力しても医療現場を100%理解することはできません。
一方で、医療者がいくら努力しても患者の感情を100%理解することもできません。
だからこそ、その接着剤役として患者講師がいて、互いの理解度を上げる仕事を引き受けるのだと思います。
私個人としては、患者講師による講義を、医療者にはぜひ聞いてほしいと願っています。
医学系の授業の一環として取り入れられてほしいとも願っています。
患者講師は、講師料の大小で動くわけではありません。
どのような方が、どのようなことを目的として私たちを求めてくれているのか、によって動くのです。
金銭的に乏しい学生たちの集まりでも、やる気さえ感じられれば、喜んで協力します。
その原動力は「自分の経験をこれからの医療環境を良くすることに結びつけてほしい」という思いなのです。
患者講師の活動に興味があれば、ご連絡をください。
さて、次回は、以前より私が述べている患者としての質向上策の一つ「健康手帳」について、私が最近学んだことを紹介したいと思います。