横溝正史原作のドラマや映画について毎週金曜日にお届けする
「週刊金田一」
忙しい日々もあと少しで終わり
多分、今が一年で一番忙しい時期なんじゃないかと思います。
そんな中、DVDコレクションについての連載(なんて立派なもんじゃないが)を終え、
読んでいただいた方のアドバイスにヒントを得て、
ランキングを勝手につけちゃおうって決めました。
でもやっぱり簡単には決められないので、
きょうはちょっと中継ぎの話題
DVDコレクションを見ていて、私だけでなく多くの方が感じたことじゃないかと思うのですが、
横溝正史シリーズに比べ、金田一耕助シリーズは格段につまらない
もちろん長いストーリーを2時間ドラマにしなきゃいけないということで
無理矢理な感じがあるのももちろんだけど、
やっぱり脚本家さんからあんまり「金田一愛」を感じないというか、
原作の魅力を無視したつくりになっていたからじゃないかと思うのです。
素人なので専門的な言い方ができないのですが、
肌感覚でそう感じます。
「横溝正史シリーズ」の面白さは、原作に忠実・・・本質的なところで忠実なところ。
そこだけは外してほしくないってところがきっちりと映像化されていました。
不気味な佐清と京マチ子さんはじめ迫力ある三姉妹に震えた「犬神家の一族」
原田大二郎演じる真面目すぎる椎名くんが光ってた「真珠郎」
原作にないシーンでも面白かった愛があった。
あ、この台詞、原作にあったな
あ、このナレーション原作のままだ
というだけでワクワクします
これって、ドラマ放送時に横溝先生がご存命で
やっぱり「ご覧になるかも」という思いもあったと思うし、
かなりの敬意を払って書いてたと思うんです。
だけど「金田一耕助シリーズ」はそうではなかった・・・
わりと忠実なものもあったけど、
全く違う話で見る気がしないものや
いくつかの作品を混ぜてしまい横溝作品とは程遠いものになったドラマもありました。
オリジナルという言葉でお茶を濁した「トランプ台上の首」
もはやこれは「女王蜂」ではない
先生自身は映画化が始まった当初は、映画と小説は全く別物と考えていたようです。
「映画会社と契約書を取りかわし、原作料を貰ってしまえば、その小説は私の手をはなれ、まったく別の物になるのだという考えかただったから、その映画が当たろうと当たるまいと、おれのしったことかというわけで、自分の原作のよる映画を見ずにすませたことさえたびたびである。」
『真説 金田一耕助』 小説と映画 Ⅰ より
私は、昔の金田一の映画をほとんど見たことないんだけど、
高倉健さんの「悪魔の手毬唄」などを見れば、
先生が「別のもの」と言いたくなる気持ちも分かります
でも高林陽一監督の「本陣殺人事件」はそうではなかったみたい。
先生は、原作に忠実なところと監督の「キマジメさ」に感激されていました。
斬新な金田一だが面白かった「本陣殺人事件」
そうは言っても、原作と結末が違う映画「獄門島」は
本質を変えずに新たな魅力が生まれていてすばらしかった
横溝先生も逆にそれを楽しまれていたようで。
だけどねーーー。
「金田一耕助シリーズ」はそんな面白さはなかったな。残念ながら
最近、面白い記事を読みました。
原作付き脚本の達人といわれる脚本家の野木亜紀子さんのインタビュー。
脚本家が「原作を繰り返し読まない理由」という記事。
「原作を脚色する時って、一度原作を忘れた方がいいと思うんですよ。忘れないと再構築できないので。物語の根幹を理解して、印象的なセリフや大事なシーンを頭に入れてさえいればいいんじゃないかと。(中略)結局、重要なのはパーツではなく、作品の哲学を曲げないようにすることなんじゃないかと。」
文春オンライン “テレビっ子”野木亜紀子が語るテレビのこと #2 より
http://bunshun.jp/articles/-/1886?page=2
は~、納得
野木さん脚本のドラマは「逃げ恥」ぐらいしか見てないけど、
達人と呼ばれる理由が分かる気がする・・・
こういう話を聞くと、
あの「金田一耕助シリーズ」はいったいなんなんだろう・・・と思ってしまう。
ホント、素人が何言ってんだと思われるかもしれないけど、
横溝ファン、金田一ファンの率直な感想でした
ではでは・・・また来週っっっ