安藤書店(名鉄・中京競馬場前駅)、「えろまん」 | タビノス

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一生は案外短いのかも。できるだけ多くの場所を見たい。

各地が大雨に見舞われた。

通勤の際に木曽川を渡るのだが、上流で豪雨のため水かさが増している。普段の広大な河川敷が泥流で覆われていた。

今回は九州と岐阜・長野が特に大雨に襲われた。何とか穏やかになるとよいのだが。

 

(名鉄社内からの河川敷)
 
古書店めぐり『安藤書店』(名鉄・中京競馬場前)
この駅で降りたのは初めて。北口を出るとすぐにある。
①豊富な品揃え・見やすい陳列
歴史、美術、文庫本、マンガ、地元の資料などが並ぶ。新しめの木の本棚に清潔感があるが、古書店らしい雑然さもあり居心地がよい。ケルト関連と漢字関連の本を購入。
②経営のシビアさ
店主のオヤジさんと話す。やはり経営は厳しいようだ。競馬帰りの人も書店に寄る人は減ったとのこと。今の時代、紙の本自体が減っているのに、まして古書など、私のようなマニアでないとなかなか買わないだろう。時代の変化といえばそれまでだが、この財産が散逸せず、何かの形で価値が引き継がれることを願うしかない。
 
読書記録

「えろまん」(大塚ひかり)

「万葉集はかなりエロい」が主題の変な本。解釈・好みは分かれるだろうが、大変おもしろかった。

難しく見えるものをやさしく表現するのは一流だ。

①「天平の雑多なツイッター」

率直な印象である。約4500の歌が収められているらしいが、本当に幅が広い。天皇家をはじめ、庶民、田舎者(方言も読み取れる)など多岐に渡る。恋の歌や政治的な争いを暗示させる歌に加え、ずいぶん(よい意味で)くだらない内容のものもあるようだ。識字率のようなものは分からないが、少なくとも万葉集の編集者のレベルで庶民を含めた当時の世の中の実情を把握し、幅広いテーマから選んでいることは驚異的である。

②政=性

これは筆者の表現で、当時は近親婚も多く、選ぶ相手次第で権力も移り変わった様子。特に母系が強く、女性主体となる表現も多い。 遊女の地位もかなり高い。仏教、朱子学など大陸からの思想が入る前のたいへん性におおらかな(ユルい)様子が見られる。象徴的なのは、雄略天皇のナンパ歌が筆頭に来ていることである。

③変態もいる

「あの娘に(土になって)踏まれたい」

「あの娘の体にかかる水になりたい」

④年を重ねても恋

これも前向きだ。今でいう世間体をあまり気にしないのだ。筆者によると女性が強い社会のため、活躍する女性も多く魅力的な大人の女がいたのではないかとのこと。江戸以降の方がずっと遅れているように思える。

日本最古の歌集だが全く古さを感じない。映像化すればもっと流行するような。魅力を伝えてくれた本書に感謝。