滝山公園の幽霊滝伝説 | 四季の彩り

四季の彩り

四季の魅力を感じ撮り、私なりの表現で発信していきます

写友に案内されたのは

日野郡日野町中菅にある

『滝山(たきさん)公園』である

 

 

 

春には

桜やツツジの名所として知られており

3万本のミツバツツジで

ピンク色に染められる

 

 

 

 

 

公園の奥には

滝山神社があり

その奥には

落差70mの“龍王滝”がある

 

 

 

 

断崖絶壁から

一本の滝が流れ落ちていた

見事な滝である

 

 

 

 

 

モミジが青々と茂っており

秋の紅葉の季節が楽しみに感じられた

 

 

 

 

滝山公園を案内してくれたのには訳があり

幽霊滝伝説があるからであった

 

 

小泉八雲の幽霊伝説である

 

 

 

 

ある寒い冬の晩に、黒坂村の麻取場に働いている

女房や娘などが大きな囲炉裏を囲んで

怪談話に気味悪さを感じていた

 

その中の一人が

「今夜これから一人で幽霊滝へ行ってみたら」と言い出した

 

「もし行く人があれば、今日取った麻を全部その人にあげる」と…

「私もあげる」、「私も」、「私も」と全員が言った時

安本勝と言う大工の女房が立ち上がって

「皆さんが麻を私に下さるのなら、私が行く」と言い出した

 

「そんならお勝さん、幽霊滝に行って賽銭箱を

持ってきてつかえ、それが証拠になるあね」と…

 

お勝は眠っている吾子を背に負い、麻取場を駆け出て行った

 

霧の深い夜で、星明りを頼りに凍てついた道を

険しい岩石や大杉の根をふみしめ

道ならぬ道を踏みしめ登って行くと

滝の轟然たる音で身も心もしびれおののいた

ふと見ると白々と氏神の祠が見え、賽銭箱も見えた

 

お勝は駆け寄り、ずいっと手をのばしたその時

「お勝つっあん」と滝の中から声がした

お勝は恐ろしさに、ぞっと立ち尽くした

「オイお勝さん」と再度の声は

警告と脅すような怒気をふくんだ様な声であった

 

しかしお勝は気を取りなおし、いっさんに麻取場へ駆けもどり

皆の前に賽銭箱を置いて、幽霊滝の次第を話した

 

「お勝さん背中の坊やが寒かろう」と

おぶった子供の紐を解くのを手伝ったその時

「アッ背中に血が」と叫んだ

「血だ」、「血だ」と一同が驚き

よく見ると子供の首がいつの間にか取られていたのである

 

小泉八雲集『骨董より

 

 

 


ぞっとする様な怪談話であるが

幽霊滝と言われる

龍王滝は見事な落差で断崖を落ちていた

 

 

 

 

〔2021.8.29  撮影〕