クモ膜下出血患者の標準看護計画(脳動脈瘤)
クモ膜下出血とは
クモ膜下出血は働き盛りの40~50歳代に多発し、しかも死亡率が高く、また救命したとしても重篤な後遺症を残すことの多い疾患である。クモ膜下出血の原因の約80%は脳動脈瘤の破裂で、次いで脳動静脈奇形によるものがある。クモ膜下出血の経過中には、再出血・血管攣縮・水頭症などの重篤な病態がある。
アセスメントの視点
急激に発症し、しかも死亡率の高い疾患である。発症からの時期によってさまざまに変化する病態を有する疾患であり、再出血・血管攣縮・水頭症の三つに関して注意する。突然に発症することから、家族の動揺も激しいため家族への援助も重要となる。
症状
突発性の激しい頭痛(殴られたような、割れるような)で発症し、しばしば嘔吐を伴い、半数以上に意識消失を認める。痙攣発作を伴うことも少なくない。またクモ膜下出血の重症度や脳動脈瘤の部位によって症状が異なる。
1.クモ膜下出血の重症度
Grade0-非破裂例
Grade1-意識清明で神経症状のないもの、またはあってもごく軽度の頭痛・強直のあるもの
Grade1a-意識清明で急性期症状がなく、神経症状の固定したもの
Grade2-意識清明で中等度の強い頭痛・項部強直はあるが、神経症状(脳神経麻痺以外の)を欠くもの
Grade3-意識障害は傾眠、錯乱である。軽度の局所神経障害をもつこともある
Grade4-意識障害は昏迷、中等度から強度の片麻痺、ときに除脳硬直、自律神経障害の初期症状を示すもの
Grade5-昏睡、除脳硬直、瀕死の状態のもの
2.脳動脈瘤好発部位の主な神経症状
脳動脈瘤は内頚・後交通動脈分岐部が最も多く、次いで前交通動脈、中大脳動脈とウィリス動脈輪の前半部に多い。
1)内頚動脈(IC)、内頚・後交通動脈(IC-PC)分岐部
動眼・三叉・滑車神経の障害の症状、片麻痺、精神症状、痙攣など
2)前大脳動脈、前交通動脈(A-COM)
意識障害、一過性片麻痺、精神症状、視力障害など
3)中大脳動脈
片麻痺、失語症、精神症状、痙攣など
4)椎骨・脳底動脈
意識障害、小脳症状、眼振、一過性の呼吸停止、心停止など
検査
CTスキャン
腰椎穿刺
脳血管撮影(脳動脈瘤の検索)
治療
病態の変化に伴い、再出血・血管攣縮・水頭症の治療が中心となる。
1.再出血に対する治療
脳動脈瘤クリッピング術
手術の時期は神経学的所見および全身状態によって決定される。また出血量が多い場合には、脳槽・脳室ドレナ-ジや脳内血腫除去などが追加される。
2.血管攣縮に対する治療
手術による血腫の洗浄、脳槽・脳室ドレナ-ジ
Hyperdynamic療法
輸液、血漿製剤、昇圧剤により、積極的に人為的な血漿増量、高心拍出量の状態を維持して、攣縮血管に少しでも多くの血液を送り込む方法である。厳密な循環系の評価も必要とする。
血管拡張(カルシウム拮抗剤、亜硝酸剤投与)
経皮的血管形成術
3.水頭症に対する治療
脳室ドレナ-ジ
シャント術-脳室腹腔吻合術(V-Pシャント)、脳室心耳吻合術(V-Aシャント)
経過と管理
1.精神的サポ-ト
術前では、急激に発症し、緊急入院・手術となる場合が多いので患者および家族の動揺・不安は大きい。患者に対しては医療者・家族を含め、周囲の者が一貫して「クモ膜下出血」「手術」など不安となるような言葉は使わず、外からの刺激は極力与えないようにする。そのため家族が状況を理解し、協力が得られるような援助も重要である。
術後では、特に術前に意識障害のあった場合や手術の説明を受けなかった患者ではすぐには自分の状態を理解し容認するのは困難である。このような患者の気持ちをくみ取り、援助していくことが大切である。
2.再出血予防の管理
一度破裂した脳動脈瘤の多くは、放置すれば二度三度と再出血を繰り返す。再出血は初回出血日に最も起こりやすく、日が経つにつれてその危険性は減少する傾向にある。再出血は突然起こり、急激な意識消失、バイタルサイン・神経症状の変化や嘔吐を認め、状態が急激に悪化するため、再出血予防は最も重要である。外からの刺激を極力避けるために、部屋を暗くし、絶対安静を保つ。また、意識が清明な場合や不穏状態の場合は鎮静剤を投与する。また血圧のコントロ-ルは大切であり、平常血圧以下に血圧を維持するように努める。頭痛時は鎮痛剤を与え、あまり我慢させないようにする。
3.脳血管攣縮の管理
クモ膜下出血発症後4~14日くらいの時期に起こるが、攣縮の程度が強い場合には広範囲の梗塞を生じ、重篤な症状を後遺する。脳血管攣縮の徴候を認めた場合には、速やかにHyperdynamic療法によって血圧の上昇を図るなどの治療を開始しなければならないので、患者の意識レベルや麻痺のごくわずかの変化、食欲の低下、表情の変化など、脳血管攣縮初期症状を見逃さないことが重要である。また、脳血管攣縮の時期にたとえ短時間でも血圧を低下させることは、症状を悪化させる決定的な誘因となることがあるので特に注意が必要である。
4.水頭症の管理
急性水頭症と慢性期の正常圧水頭症がある。
急性水頭症-術前にクモ膜下腔の出血による脳脊髄液の循環・吸収障害により頭痛、嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状や意識障害をおこす。CTで確認後、脳室ドレナ-ジが行なわれる。
正常圧水頭症-術後に脳室の拡大が著名であるにもかかわらず、頭蓋内圧が高くないものをいう。失見当識などの意識障害、小股歩行などの歩行障害、尿失禁などの水頭症の症状の発現に注意しなければならない。脳室ドレナ-ジやシャント術を施行した場合はドレナ-ジからの排液量や閉塞、チュ-ブの抜去、そして感染に注意が必要である。
5.神経脱落症状の管理
支配領域の脳・神経細胞の障害によって正常な機能を失って現われる症状で、運動・言語・嚥下・排泄などの障害である。急性期は慢性期のリハビリテ-ションを円滑に行なうために良肢位の保持や関節可動域の確保に注意する。バイタルサインが安定すれば早期より訓練を開始していく。
術後合併症
1.術後出血
術後数時間~24時間以内に血圧の上昇によりおこりやすい。術後は1~2時間毎に観察する。
2.脳浮腫
術後出血より発現時間は遅く、術後24~48時間以後に発現することが多い。意識レベルの低下、神経症状の悪化などの頭蓋内圧亢進症状で発症してくる。
3.水頭症
脳室ドレナ-ジやシャントシステムに閉塞が生じたり、流量が不十分な場合には水頭症が再発し頭蓋内圧亢進症状をきたす。
4.感染
術後感染で最も問題となるのは髄膜炎である。手術創やシャントシステムの感染により発熱、項部強直、手術創の発赤などを認める。髄膜炎併発により、水頭症、けいれんなどの後遺症が起きる割合も高くなるため注意が必要である。また肺炎、尿路感染などの二次的合併症の出現にも注意が必要である。
5.消化管出血
ステロイド剤の多量な投与、精神的ストレスなどによりおこしやすい。
看護計画(急性期)
Ⅰ.アセスメントの視点(急性期)
一度破裂した動脈瘤は再破裂しやすく、再出血の予防に努めなければならない。また経時的な観察を行い、異常の早期発見に努める。そして動脈瘤の破裂による合併症、安静による合併症を起こすことなく、意識障害状況下で充足されないADLの援助を行うことが大切である。突然に発症し、またさまざまに変化する病態があり、家族の動揺が激しいため、家族への援助も重要である。
Ⅱ.問題リスト(急性期)
#1.再出血
[要因]・クモ膜下出血後1~2週間までが最も再出血の危険性が高い
・内的刺激(安静のストレス、頭痛、排便時の怒責など)による血圧変動
・外的刺激(音、光、振動など)による血圧変動
#2.頭蓋内圧亢進
[要因]・動脈瘤の再破裂
・急性水頭症(髄液腔への出血による髄液の循環障害、吸収障害)
・脳浮腫
#3.脳血管攣縮
[要因]・クモ膜下腔に残っている凝固した血液の作用
#4.肺炎の合併の危険性
[要因]・長期臥床による沈下性肺炎
・咳嗽反射の消失による唾液、吐物の誤嚥性肺炎
#5.疼痛
[要因]・髄膜刺激症状(頭痛,悪心・嘔吐,項部硬直,痙攣)
・手術による皮膚の損傷
・チューブ類の挿入による苦痛と体動の制限
・長時間の同一体位による血行障害
・頻繁な状態観察と処置によるストレス
#6.褥創
[要因]・同一体位の長期臥床での持続的な圧迫、循環障害
#7.電解質のアンバランス
[要因]・脱水または水分過剰
#8.セルフケアの不足
[要因]・絶対安静による行動の制限
・意識障害
・運動障害
・頭痛,悪心,嘔吐
・体動による症状悪化への不安
#9.外傷の危険
[要因]・意識障害(不穏,失見当識,思考能力低下等)
・ドレーン挿入
・各種医療器具装着による体動の制限
・痙攣発作
・運動障害
・知識不足
・視野障害
#10.疾患や手術に対する不安
[要因]・突然の発症
・緊急入院
・緊急手術の適応
・疾患や治療,予後に対する理解不足
・社会的役割の変化(仕事の中断、休職)
・経済的不安
Ⅲ.看護目標(急性期)
1.再出血を起こすことなく、手術まで心身ともに安定した状態を維持できる
2.制限された入院生活の中で安全・安楽に過ごす
3.脳血管攣縮による症状の悪化や安静による合併症を起こさない
4.疾患や手術に対する不安が軽減される
Ⅳ.看護問題(急性期)
#1.再出血
[要因]・クモ膜下出血後1~2週間が最も再出血の危険性が高い
・内的刺激(安静のストレス、頭痛、排便時の怒積など)による血圧変動
・外的刺激(音、光、振動など)による血圧変動
&再出血することなく手術を迎えることができる
異常が早期に発見され、早期に対処される
$発症~手術直前
O-1.頭痛の有無と程度
2.悪心、嘔吐の有無
3.意識レベルの変化
4.呼吸状態
5.運動麻痺の悪化
6.瞳孔散大、対光反射の消失
7.急激な血圧の変動
8.不穏な体動
T-1.自動血圧計・モニター装着により、1~2時間毎に観察する
1)麻痺の程度の判定には、痛み刺激を与えずに観察する
2)意識レベル、瞳孔の観察は刺激を少なくするため頻回に行なわない
2.異常が見られたら、すぐに医師に報告する
3.救急カートの準備
4.酸素マスク、吸引の準備呼吸状態が悪い場合は人工呼吸器の準備
5.点滴の管理
6.不穏時、医師に指示にて鎮静剤の与薬
7.安静度は、医師の指示による;原則として絶対安静
1)精神安定を図るため、個室に収容する。ブラインドを引き、部屋を暗く、静かな環境を整える。面会制限(家族のみ可)を行い、テレビ・ラジオなどの音の刺激を避ける
2)精神の動揺を避けるため、刺激を与えるような質問や説明を避け、不安の除去に役立つように話を進める。家族や職場の問題を持ち込まない
3)ベッドはセミファーラー位または水平とする。ADLは全面介助する
4)ナースコールの使用は患者からのコールのみとし、ナースからの送話はしない
5)吸引の必要な患者には、できるだけマイルドに行なう
8.排便時の怒責を避けるため、医師の指示により緩下剤を与薬し、排便を確認する浣腸は行わない
9.尿失禁のある患者は、状態の改善が見られるまで留置カテーテルを留置する意識清明な場合は、床上排泄とする
10.処置時には、十分な説明を行い、了解を得る
E-1.患者,家族に必要以上の話はしないように説明する
2.暗室、安静の必要性を説明する。家族にもその重要性を説明し、協力を得る
#2.頭蓋内圧亢進
[要因]・動脈瘤の再破裂
・急性水頭症(髄液腔への出血による髄液の循環障害、吸収障害)
・脳浮腫
&頭蓋内圧亢進による初期徴候が発見され、初期に対処される
$発症後~2週間目
O-1.意識障害の有無、程度、出現パターン
2.呼吸状態(回数、深さ、パターン、チアノーゼの有無)、SpO2値
3.バイタルサイン(血圧と脈圧,脈拍数と性状,体温の変動)
4.頭痛、悪心・嘔吐の有無
5.瞳孔の大きさ、形、左右差、対光反射の状態
6.運動麻痺の有無、麻痺の部位と程度
7.痙攣の有無と状態
8.出血の部位と範囲を示す検査データー(CT、アンギオの結果)
9.脳室ドレーンからの排液量,性状,ドレーンの高さ
T-1.頭蓋内圧亢進を予防するため、以下の方法を実施する
1)指示された輸液や薬物(高浸透圧利尿剤、ステロイド剤、抗痙攣剤)を投与する
2)指示どおりの酸素吸入を行う
3)脳室ドレーンは指示された高さに保つ
4)快適な室温を維持し、体温上昇時は腋窩・背部や鼠径部のクーリングや指示された解熱剤を投与する
5)騒音を避け、室内は薄暗くする
6)ベットの頭部を15゚~30゚挙上し、枕は使用しない
7)膀胱留置カテーテルを挿入する
8)浣腸は行わない
2.吐物による誤飲を予防するため、手術前日まで経口摂取は禁止とし、頭部は横に向ける
3.頭蓋内圧亢進症状の徴候を認めた場合はただちに報告し対処する
E-1.頭蓋内圧亢進予防のための上記の(T.1)実施事項について必要性を説明する
#3.脳血管攣縮
[要因]・クモ膜下腔に残っている凝固した血液の作用
&初期徴候が発見され、初期に治療をうける
$発症後3・4日目~2週間目
O-1.意識障害の出現の有無と程度
2.運動麻痺の出現の有無と程度
3.瞳孔の大きさ、形、左右差、対光反射の有無
4.瞳孔の動き、複視の出現の有無
5.バイタルサイン(血圧低下、徐脈、呼吸抑制)
6.頭痛,悪心,嘔吐の有無
7.水分in・outのバランス
8.会話内容の混乱の有無
9.昼夜逆転の有無
10.表情の変化の有無
T-1.8時間ごとに水分in・outのバランスをとり、常に体内をプラス傾向に保てるように、必要時補液などを追加する
2.血圧が目標内にコントロールされるように、指示された輸液や薬物を使用する
3.異常を認めた場合は早期に報告し対処する
E-1.多少の飲水や食事の許可が出ている患者の家族には水分出納表の記載について説明する
2.頭痛、悪心・嘔吐、その他異常出現時は、直ちに報告するよう説明する
#4.肺炎の合併の危険性
[要因]・長期臥床による沈下性肺炎
・咳嗽反射の消失による唾液、吐物の誤嚥性肺炎
&肺で適切な換気が行われる
$入院当日~離床
O-1.意識障害の程度
2.呼吸状態(数、リズム、深さ、胸郭の運動、SpO2値)
3.肺雑音の有無
4.喀痰喀出状況と性状、量
5.バイタルサイン(熱発の有無)
6.口腔内の乾燥の有無、舌苔の有無
7.胸部X-P、血液ガス値、血液データー(WBC、CRPなど)
T-1.指示された酸素吸入の実施
2.体位交換
3.タッピング、吸痰(必要時吸入施行 3~4回/日)
4.適宜口腔ケア施行(舌のブラッシング、サリペートの散霧)
E-1.深呼吸、喀痰の指導
2.O2吸入、吸痰の必要性を説明する
#5.疼痛
[要因]・髄膜刺激症状(頭痛,悪心・嘔吐,項部硬直,痙攣)
・手術による皮膚の損傷
・チューブ類の挿入による苦痛と体動の制限
・長時間の同一体位による血行障害
・頻繁な状態観察と処置によるストレス
&頭痛や創痛が緩和したことを言葉に出して表現する
くつろいだ表情となり、くつろいだ体位をとる
$ドレーン抜去まで
O-1.髄膜刺激症状(頭痛,悪心・嘔吐,項部硬直,痙攣)の有無と程度
2.創痛の有無と程度
3.チューブ類の挿入状況とそれによる苦痛の有無と程度
4.体動の制限や抑制,頻繁な観察や処置による苦痛の有無と疼痛の訴えとの関係
5.休息,睡眠の状態
6.精神状態,表情
7.バイタルサイン
T-1.頭蓋内圧亢進を予防する
2.照明の調節や面会人の制限,騒音の防止により周囲からの刺激を最小限にする
3.安静度内での安楽な体位を保持し、面会,会話などで気分転換を図る
4.チューブ類は体動の妨げにならないように工夫して固定する
5.指示されている鎮痛剤を効果的に使用する
E-1.安静やその他の医療行為の必要性,今後の見通しについて説明する
#6.褥創
[要因]・同一体位の長期臥床での持続的な圧迫、循環障害
&褥創を起こさない
$入院当日~離床
O-1.皮膚の状態
2.腸骨、仙骨部など骨突起部の発赤、皮むけ、ただれの有無
3.オムツかぶれの有無
T-1.体動の少ない患者にはエアマットを挿入し、2~3時間ごとの体位交換を介助する
2.1~2日ごとに全身清拭を行い、皮膚の状態を観察する
3.オムツ汚染時は直ちに皮膚を洗浄し、清潔を保つようにする
4.皮むけ、ただれは早期からクリームや軟膏で対処し、ガーゼ保護を行う
5.必要時、眠前にもケアを行う
E-1.ルートに注意して患者の活動可能な部分を説明し、体動を促す
#7.電解質のアンバランスの危険性
[要因]・脱水または水分過剰
&経口と補液により、必要な栄養、電解質が満たされる
$入院当日~退院前日
O-1.意識レベルの変化
2.顔色、表情、皮膚の状態
3.倦怠感、悪心・嘔吐等の自覚症状の有無
4.血液データーチェック
5.バイタルサイン
6.尿量、尿の性状チェック
T-1.指示された輸液は確実に投与する
2.異常を認めた場合は早期に報告し対処する
E-1.体に異常を感じたときは我慢せずに直ちに報告するよう説明する
#8.セルフケアの不足
[要因]
・絶対安静の制限
・意識障害
・運動障害
・頭痛,悪心,嘔吐
・体動による症状悪化への不安
&介助により安全、安楽な生活が送れる
$入院当日~離床
O-1.意識,意欲状態
2.運動状態(麻痺,筋力,ROM)
3.視野
4.身体的苦痛の有無
5.治療上の制限範囲内でのADL状況
T-1.治療上の制限や身体状況に合わせたADLの介助
E-1.コミュニケーションをとり、不満や訴えに対処する
2.状態がよければ、可能な範囲でできるかぎり自力で行うように促す
#9.外傷の危険
[要因]・意識障害(不穏,失見当識,思考能力低下等)
・ドレーン挿入
・各種医療器具装着による体動の制限
・痙攣発作
・運動障害
・知識不足
・視野障害
&危険なく安全に過ごすことができる
$退院当日
O-1.意識障害の有無と状態(不穏,失見当識等)
2.症状や治療,医療器具装着の必要性に対する理解度
3.痙攣の有無と理解度
4.運動麻痺の有無と程度
5.視野障害
6.ベッド上とその周囲の環境
7.ドレーンや医療器具の装着状態
8.抗痙攣剤の効果
T-1.ベッド柵を常にしておく
2.必要に応じて、四肢、肩、体幹を抑制する
3.指示された抗痙攣剤を確実に投与する
4.環境整備を行いドレーンやその他のチューブ類は患者の手に届かない所に固定する
5.ナースコールは手に届く所におく
6.不穏時医師に報告し指示を受ける
E-1.治療、安静、医療器具装着の必要性を繰り返し説明する
2.家族への説明
1)安静の必要性を説明し協力を依頼する
2)ベッドサイドを離れるときは看護婦に声をかけるよう説明する
#10.疾患や手術に対する不安
[要因]・突然の発症
・緊急入院
・緊急手術の適応
・疾患や治療,予後に対する理解不足
・社会的役割の変化(仕事の中断、休職)
・経済的不安
&不安の内容を表出できる
緊急の処置、検査、手術の必要性を理解し、術前・術後の経過と状態がイメージでき表現できる
表情が和らぎ、安定した気持ちを維持でき、睡眠・休息が十分に取れる
家族の不安が軽減し、手術の準備ができる
$退院当日
O-1.表情、言語、態度の表出状況と不安の程度との関係
2.睡眠、休息状態
3.疾患、処置、手術、予後についての医師からの説明とそれに対する反応
4.術前処置に対する反応
5.性格傾向
6.対処方法と対処能力
7.サポートシステムの状況
8.突然の発症と入院によって生じた問題の有無とそれに対する考え
9.家族の状況判断能力
T-1.不安を表出しやすい環境、人間関係づくりに努める
1)患者や家族の訴えをよく聞き、受容的態度で接する
2)疾患に対する不安は、医師から十分に説明が受けられるようにする
2.患者と不安について話し合い、原因がはっきりしている不安に対しては、解決できるように努める
3.サポートシステムを活用する
E-1.入院生活に早く適応できるように、入院時に病棟の日課等について、床上で簡単なオリエンテーションを行う
2.検査・処置の内容と必要性を説明し、患者が納得して検査や治療を受けられるようにする
3.医師の説明内容と患者の精神状態や理解度に合わせた手術前オリエンテーションを行い、手術後の状態が具体的にイメージできるようにする
看護計画(慢性期)
Ⅰ.アセスメントの視点(慢性期)
脳血管攣縮も含めて、患者の状態が安定した時期である。徐々に安静度が拡大され、それに伴いADLの拡大にむけ、援助していかねばならない。
Ⅱ.問題リスト(慢性期)
#1.水頭症の危険性
[要因]・血球の破壊産物による髄液の通過、吸収障害
#2.外傷の危険性
[要因]・意識障害、病識の欠如
・長期の床上生活による筋力低下
・片麻痺、四肢の拘縮
・不慣れな環境
・視野、視力障害
#3.セルフケアの不足
[要因]・意識障害、病識の欠如
・長期の床上生活による筋力低下
・片麻痺、四肢の拘縮
・視野、視力障害
・転倒の不安
・自発性の低下
#4.睡眠パタ-ンの障害
[要因]・意識障害
・長期の床上生活
・身体的苦痛
・日中の活動不足
・睡眠時の環境
#5.コミュニケ-ションの障害
[要因]・構音障害
・失語症(運動性失語、感覚性失語、全失語)
#6.不安
[要因]・脱落症状の残存
・退院後のライフスタイルの変化
・役割の変化
・サポ-トシステムに対する不安
Ⅲ.看護目標(慢性期)
1.ADLが拡大し、退院後の身体的、精神的準備ができる
2.危険を伴うことなく、安全に入院生活を送ることができる
Ⅳ.看護問題(慢性期)
#1.水頭症の危険性
[要因]・血球の破壊産物による髄液の通過、吸収障害
&異常が早期に発見され、対処される
$発症2、3週間後~退院日
O-1.意識レベルの低下、痴呆
2.歩行状態
3.尿失禁の有無
4.CTにて脳室拡大の有無
5.水頭症の悪化による頭蓋内圧亢進症状の出現
T-1.指示された薬物の確実な投与
2.水頭症の徴候が認められた場合は、医師に報告する
E-1.患者、家族に、水頭症の病状を説明し、退院後も観察できるように指導する
#2.外傷の危険性
[要因]・意識障害、病識の欠如
・長期の床上生活による筋力低下
・片麻痺、四肢の拘縮
・不慣れな環境
・視野、視力障害
&転倒による外傷を起こさない
$離床時~退院日
O-1.意識レベルの程度
2.病状の認識
3.ベッド周囲、病棟内の環境
4.ADLの状況
5.筋力低下と歩行の状況
6.視野、視力障害の有無
7.退院後の生活環境
T-1.ベッド上での生活の環境整備
1)必要時低床ベッドを使用し、ベッド柵を固定する
2)必要物品やナ-スコ-ルは、手の届く範囲内に設置する
3)必要時、抑制帯を使用する
2.歩行状況にあわせ、歩行器や杖を使用する
3.患者の所在を常に確認する
1)必要時、氏名、病棟名を印した名札を病衣に付ける
4.生活パタ-ンを知り、患者の行動を予測し、早めに促す
5.ポスタ-を提示する
E-1.障害の存在と危険性を繰り返し説明し、注意を促す
2.正しい移動動作の方法を患者に指導する
3.必要時は援助を求めるように指導する
4.退院後の生活環境について、患者、家族と相談する
1)必要時はリハビリテ-ション医に相談する
5.退院後の生活指導(運動、仕事、車の運転など)に関しては医師と確認し説明する
#3.セルフケアの不足
[要因]・意識障害、病識の欠如
・長期の床上生活による筋力低下
・片麻痺、四肢の拘縮
・視野、視力障害
・転倒の不安
・自発性の低下
&能力を最大限に生かしたセルフケアを行ない、徐々にADLの拡大ができる
$離床時~退院日
O-1.意識、意欲
2.四肢の運動状態(麻痺や拘縮の有無、筋力)
3.ROM
4.視野の状態(視野欠損、複視の有無)
5.現在のADLの状況の把握
6.リハビリテ-ションの状況
7.体力、疲労感
T-1.十分な時間を与え、焦らせない
2.ADL評価表を参照し、セルフケア能力に応じた援助を行なう
E-1.障害の能力に応じた効果的なセルフケアの方法を指導する
2.積極的にセルフケア能力を拡大することの意義を患者、家族に指導する
#4.睡眠パタ-ンの障害
[要因]・意識障害
・長期の床上生活
・身体的苦痛
・日中の活動不足
・睡眠時の環境
&夜間睡眠をとり、日中の生活リズムが整う
$退院日まで
O-1.睡眠、覚醒パタ-ンの状況(パンフレットの使用)
2.熟睡感の有無
3.疼痛や掻痒感の有無
4.患者の不眠の訴え
5.日中の活動内容、活動量
6.ベッド周囲、病室内の環境
7.照明、騒音、屋内気候の状況
8.夜間の尿回数の頻度
9.緊張、恐れ、怒り、悲しみ、不安の感情の有無
10.集中力、注意力の低下
11.作業能率の低下
12.感覚機能の衰え
13.睡眠剤服用の有無
T-1.身体的苦痛の緩和
1)頭痛、創痛がある場合、温・冷罨法やマッサ-ジ、鎮痛剤の使用により就寝前に疼痛の
コントロールを図る
2)掻痒感がある場合、患部を冷却したり、外用剤を塗布したりする
3)清拭や洗髪、許可があれば入浴による清潔の保持を行なう
4)就寝前に排泄を行なう
5)空腹感がある場合は、胃に負担のかからないものを摂取する
2.環境の調整
1)夜間の見回りは、静かに行なう
2)布団や枕が合わない場合は、家族に相談し自宅から持ってきてもらう
3)換気や湯たんぽ、布団により、温度の調整を行なう
4)プライバシ-の確保
3.睡眠サイクルの認識のため、一日の生活行動をポスタ-に提示する
4.日中はなるべく離床を促し、適度な運動を行なう
5.就寝の時間を教え、入眠を促す
6.イブニングケアの習慣をつける
7.必要時医師と相談し、睡眠剤や精神安定剤を考慮する
#5.コミュニケ-ションの障害
[要因]・構音障害
・失語症(運動性失語、感覚性失語、全失語)
・意識障害
&患者の二-ズを充足し、ストレスがたまらない
言語、非言語を用いてコミュニケ-ションがとれる
$退院日まで
O-1.発音の状態
2.舌、咽頭の動き
3.発語の内容
4.言語的指示、非言語的指示(命令)に対する反応
5.会話における言語的及び非言語的反応
6.非言語的表現(表情、動作)
T-1.STの協力を得て効果的な訓練を病棟でも行なう
2.会話の機会を多くもち、患者の発語を促すような問いかけを意図的に行なう
3.患者が好んで参加できそうな会話内容を選択する
4.ゆっくりと短い文章で話しかけ、必要に応じて繰り返す
5.問いかけがどの程度理解できたかを確認する
6.忍耐強く患者の言葉を理解しようとする態度で臨む
7.あきらめずに繰り返し表現するよう励ます
8.患者が理解できるコミュニケ-ション手段を探す(書字、文字盤の使用、日常の二-ズのコ-ド化、ジェスチャ-など)
E-1.焦らずゆっくりと繰り返し発語するように指導する
2.患者、家族に会話の必要性について説明する
#6.不安
[要因]・脱落症状の残存
・退院後のライフスタイルの変化
・役割の変化
・サポ-トシステムに対する不安
&適切な対処行動により、不安が軽減される
障害に適応し、状態に応じた社会復帰ができる
$退院日まで
O-1.脱落症状と残存機能の状態
2.表情、態度、言語による表現
3.患者、家族の理解度
4.患者、家族の不安や問題に対する克服能力
5.性格傾向
6.患者、家族の関係
7.介護の協力状況とケア能力
8.退院後の生活様式
9.社会的サポ-トシステムの有無と内容
10.家庭、社会における役割の内容
11.精神状態、意欲の状態
T-1.今後についての話し合いの場を、患者、家族と共に作る
2.現実的で達成可能な目標を患者自信が設定できるように援助する
3.患者のコ-ピング反応を認めたり、それ以外の有効なコ-ピング手段を見つけられるように援助する
4.家族の協力を依頼する
E-1.退院後の生活がイメ-ジできるように、退院後の日常生活について知識を与える