IABPの挿入患者の標準看護計画 | なりたて看護師の試験対策ブログ

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IABPの挿入患者の標準看護計画

IABP(Intra-aortic Balloon Pumping, 大動脈内バル-ンパンピング)とは
 大腿動脈ないし外腸骨動脈から胸部大動脈内にバル-ンカテ-テルを挿入して行なう補助循環方法である。バル-ンをしぼませて大動脈の収縮期血圧を低下させ、心臓の後負荷を軽減して心拍出量を増加させる効果と、バル-ンを膨らませて大動脈の拡張期血圧を上昇させ、冠状動脈の血流量を増加させる効果がある。急性心筋梗塞や心臓手術に引き続いて起こる急性の心不全、心原性ショックおよび低心拍出量症候群などの病態において、この二つの効果により、IABPが心臓機能を回復させる機械的補助手段となる。

アセスメントの視点
 心筋梗塞後の心原性ショックや開心術後のショック、低心拍出量症候群は、薬物による内科的な療法では予後が極めて不良である。IABPはこのような病態に対し、まず最初に最もよく使用される機械的補助循環法である。
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IABPの適応
1.急性心筋梗塞
心原性ショック,僧帽弁閉鎖不全,心室中隔穿孔,難治性虚血性不整脈
2.待期的心臓手術
術前からの予防的使用:左冠状動脈主幹部狭窄,不安定狭心症,左心機能低下(左室駆出率40%以下)
手術中の人工心肺離脱困難,手術後の低心拍出量症候群(LOS)
3.重篤な心臓疾患を合併した一般外科手術
4.ハイリスクのCAGやPTCAにおける予防的使用

IABPの適応とならない病態
1..高度の大動脈弁閉鎖不全(Sellers分類Ⅱ度以上)
2.慢性心不全
3.高度の大動脈病変(解離性大動脈瘤,腹部大動脈瘤,動脈硬化性変化による動脈の狭窄や閉塞)
4.心原性以外のショック
5.不整脈による心不全
6.アシド-シスや低酸素血症


IABPの挿入方法
1.バル-ンカテ-テル挿入法としては、
1)経皮的挿入法(Seldinger法): (1)シ-スを使用する (2)シ-スを使用しない
2)外科的に血管を露出し挿入する方法:(1)人工血管を使用する(2)人工血管使用しない
2.準備するもの(経皮的挿入法について)
大動脈バル-ンカテ-テルセット、IABP装置、滅菌手袋・術衣、帽子、マスク、滅菌デッキ、消毒薬(イソジン、ハイポアルコ-ル)、滅菌生理食塩水、ヘパリン、金属シャ-レ、局所麻酔薬、縫合セット、固定用糸針(ブレ-ドシルク1-0、角針5~7号)
3.手順と介助
1)意識のある患者には、IABPの挿入手順を簡潔に説明し協力を得る。
2)必要に応じて、抑制や鎮静剤の準備をする。
3)患者の準備
 (1)患者を仰臥位にし、両鼠径部を剃毛清拭し、下肢を軽く外転させた状態で固定する。
 (2)挿入前に足背動脈が触知できることを確認の上、マ-キングを行い、ドップラー血流計を装着する。
4)駆動源の電源部、ボンベのヘリウムガスの有無、心電計に接続して駆動状態をあらかじめ点検しておく。
5)ワゴンの上に滅菌デッキを広げ、必要物品を出す。術者は、帽子、マスク、滅菌術衣、手袋をつける。
6)イソジンで挿入部位を広範囲に消毒し、滅菌デッキをかける。
7)バル-ンのAir抜きをする。バル-ンカテ-テルの先端が第2肋骨のところにくるように体外で長さを測定する。
 カテ-テルの内腔はヘパリン加生理食塩水でフラッシュし、長いガイドワイヤ-を通しておく。
8)局所麻酔を行なう。
9)穿剌針で大腿動脈を穿剌し、短いJガイドワイヤ-を挿入して穿剌針を抜き、ダイレ-タ-で穿剌口を拡張した後、シ-ス挿入しJガイドワイヤ-を抜去する。
10)バル-ンカテ-テルのマ-クをつけたところまでゆっくり挿入したら、中のガイドワイヤ-を抜去し、耐圧チュ-ブをとりつけ、圧測定システムに接続し、正しい動脈波形がでることを確認する。
11)胸部X線で位置確認後、カテ-テルとシ-スを皮膚に固定する。
12)バル-ンをIABP器械に接続して駆動を開始する。

IABP挿入後の管理
1.精神的サポ-ト
IABP挿入中の患者は器械に対する恐怖感、操作音や体動制限によるストレスや不眠が生ずることが多い。
2.IABP挿入位置の確認
胸部X線撮影を毎日行い、IABPの先端部が、大動脈弓部直下にあり移動していないことを確認する。
3.挿入バル-ンおよび血管に起因する合併症の予防および早期発見
血栓形成による閉塞や、バル-ン自体での閉塞、血管周囲の血腫による圧迫などにより下肢虚血となる。その為、下肢の温度の左右差、チアノ-ゼの有無、足背動脈の触知の有無をチェクする。又、下肢虚血の進行は、下腿筋の腫脹によるコンバ-トメント症候群を引き起こし、神経圧迫による下腿疼痛、知覚運動麻痺へと進展するので、下肢に関する訴えを聞くことも大切である。
4.挿入部局所の管理
バル-ンを挿入していることにより、血小板の破壊が起こりやすく、抗凝固剤を使用するため、出血傾向に陥り易い。股関節の屈曲を避け、ベッド挙上は20度以内とし、挿入部の安静を保ち、出血、ガ-ゼ汚染に注意する。又、発熱の原因となりやすいので、挿入部は清潔に保ち、感染兆候がないかを確認する。
5.血液デ-タ
血栓症予防のため、ACT値は150~180秒前後を目安として抗凝固療法を行なう(術後のIABP挿入においては行なわない)。バル-ン挿入による血小板減少、出血傾向、溶血、貧血などが問題となってくるため、血液検査の結果に注意する。
6.IABP装置の管理
1)充分な容量を有するコンセントへ電源プラグを接続し、外れないよう固定する。
2)IABPが効果的に行なわれているかどうか、動脈圧波形およびバイタルサインの変化に注意する。
3)ECGモニタ-のR波でトリガ-している場合は、ECGを除去すると、IABPが停止する。
 清拭や体位変換などで外れないよう、電極板の接着状態に注意する。
4)不整脈出現時は、IABPが有効に作動しにくくなるので注意し、できるだけ不整脈を抑制する。
5)ヘリウムガスの残量をチェックする。
7.IABPの離脱
血行動態の安定改善が得られたら、心拍に対するIABPの補助回数を1:1から2:1次いで、4:1、8:1と減少させ、最後に補助を停止する。

IABP抜去の手順
1.抜去部の消毒を行なう。
2.術者は滅菌手袋をつけ、穴あきデッキをかける。
3.固定の糸を切り、陰圧をかけてバル-ン内ガスを抜いた後、バル-ンがシ-スの手前までくる程度にカテ-テルを引抜き、次いで、カテ-テルとシ-スを同時に抜去する。
4.止血するまで十分に用手圧迫をする。
5.用手圧迫による止血確認後、弾性テ-プで圧迫固定し、抑制帯を巻く。最低24時間は局所の安静を保つ。


IABP挿入による合併症
1.下肢虚血
 バル-ン挿入側の下肢の虚血は、原疾患による末梢循環不全が素因としてあると共に、多くの例に合併する閉塞性動脈硬化症による挿入側腸骨動脈、大腿動脈の狭窄が基礎にあることが多い。そのため、カテ-テルによる血流障害、二次的な血栓形成、動脈損傷による内膜剥離等が原因である。可能な例では挿入前に血管造影にて、挿入側を可及的に硬化狭窄のない大腿動脈にて行なうことが肝要である。そして、注意深い下肢の観察が大切である
2.動脈損傷
挿入時の合併症である。損傷内容としては、動脈解離と穿孔がある。出血が確認されれば、緊急手術が原則である
3.血栓・塞栓症、アテロ-ム塞栓症
1)挿入時の局所のアテロ-ムプラ-ク遊離による下肢塞栓症や、挿入側動脈の狭窄・うっ滞に伴う二次的血栓形成およびそれに伴う塞栓症は、同様に下肢虚血による症状、所見を呈する。
2)IABPバル-ンに付着した血栓遊離や、バル-ンが接触する下行大脈壁のアテロ-ム、血栓の遊離による塞栓症は、下肢動脈のみならず、腹腔動脈、腸間膜動脈、腎動脈等のび慢性塞栓症による血行障害をきたす。
4.IABPバル-ン破裂
 挿入時のバル-ンの粗雑な扱い、シ-スでのバル-ン損傷とともに、バル-ン留置部位の下行大動脈内面の石灰化部位でのバル-ン慢性損傷・過膨張等が誘因となる。破裂の徴候としては、駆動装置ガスリ-クアラ-ムが頻回に作動するようになったり、バル-ン駆動内圧低下、およびそれにともなう拡長期圧低下を認めたり、カテ-テル内に血液を認める場合等である。多くはピンホ-ルからのバル-ン内血液流入を起こすものである。
5.挿入部局所の出血・仮性動脈瘤
挿入部局所の出血は、開心術後症例や、動脈硬化の強い大腿動脈を挿入部として用いた例、凝固系の異常を認める例等にみられ、局所圧迫止血、あるいは局所皮膚の縫合止血では不十分なことが多い。その場合、局所を切開し、挿入部大腿動脈を露出しての止血が必要である。IABP抜去後の仮性動脈瘤は、局所の圧痛を伴う拍動性腫瘤がある場合に疑う。局所の超音波ドプラ-検査にて、血管外に血流の腔を認めることで診断する。

看護計画 は コチラ から