脾臓摘出術を受ける患者の標準看護計画
術後の経過と管理
血液疾患における脾臓摘出術は主に溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に適応されるが、術後は出血傾向に特に注意する必要がある。術前より肝機能障害を伴う場合は、術後に肝機能が悪化しないように管理しなければならない。
1.精神的サポ-ト
疾患に対してや手術そのものへの不安、手術後や退院後の予期的不安がある。不安の内容や程度、表出の仕方など個人によって異なるが、精神的・身体的。社会的側面から統合した情報から、患者各人の訴えを判断していくことが大切。
2.全身管理
術後は、バイタルサインのチェック(体温、血圧、脈拍数、心電図、尿量、尿比重など)を行う。また、肝機能障害による糖代謝異常がみられることがあるので、血糖値、尿糖、尿中ケトン体の検査を行う。明かな感染がなく、また、白血球増多も著明ではなく、38℃前後の弛張熱が時に1カ月くらい続くことがある。いわゆる“splenic fever”といわれるもので、抗生物質はほとんど無効でありアスピリンが有効である。
3.疼痛の管理
(消化器系手術の術後管理の標準看護計画の3を参照)
4.呼吸器系の管理
開胸および開腹を同時に施行した場合は、手術時間が長く侵襲も大きいうえ、肝障害による薬物代謝障害もあって麻酔からの覚醒が悪い場合が多い。12時間内外のレスピレ-タ装着により呼吸が補助される。開腹のみで脾臓摘出術を行った場合は、手術直後あるいは麻酔が殆ど覚醒した段階で、気管内チュ-ブの抜去がおこなわれる。肝硬変症では、有効肝血流量が減少し肝予備能が小さいため、手術後の循環動態の変動や動脈血酸素分圧の低下は肝障害の増悪をきたしやすい。よって、肝アノキシアを防ぐように吸入酸素濃度が調節される。血液疾患や外傷による脾臓摘出術後では、ショックや他臓器損傷を伴わない限り毎分3~4リットルの酸素が24時間程度投与される。
また、疼痛による呼吸運動の抑制、痰の喀出不良が原因で術後無気肺になりやすい。そのため、鎮痛をはかりながら深呼吸、痰の喀出、体位変換を促し、痰の喀出が困難な場合は、含嗽や吸入などによって痰の喀出を促す。
5.循環器系の管理
(消化器系手術の術後管理の標準看護計画の4を参照)
6.輸液・輸血の管理
肝機能障害を有する例では低蛋白血症になる傾向が強いので、アルブミン値が3.0g/dl以下であれば新鮮凍結血漿、アルブミン製剤が投与される。経口摂取増量に合わせ輸液量は減量されて行く。
7.栄養・食事の管理
排ガスがあれば、経口摂取が開始される。食道離断術や幽門形成術が施行されていなければ、5分粥より経口摂取が開始される。
8.創・ドレ-ンの管理
ドレーン排液のチェックは一般開腹術に準ずるが、とくに出血傾向を有する疾患が多いので、ドレ-ン排液の観察は厳重を要する。ドレ-ンの排液の性状、量などのチェックを行い、短期間に大量なら出血源の確認、処置のため再手術が考慮される。少量で持続性であれば止血凝固剤、ときに血小板輸血が行われる。脾摘部のドレ-ンは性状が血性でなければ、排液量が1日50ml以下になった時点で(通常3日目)抜去される。肝硬変症などで腹水がドレ-ン抜去孔より漏出するときは縫合されることがある。
9.感染予防
脾臓摘出のため網内系機能低下が予測されるためペニシリン系やセフェム系の広域スペクトラムの抗生物質が投与される。
10.その他
脾臓摘出術後には血小板の一過性増加がみられ、時に100万/mm3にも達する。これらは新生血小板であり、単純な数のみの増加の他に、その機能の亢進も予想される。血小板凝集能が高まるのは術後4日目前後からであり、一方ちょうどこの時期は体動制限や食事制限がまだ残り、血栓ができやすい状態になっている。血小板数が40万/mm3を越えるようなときは、血栓症予防のため血小板凝集抑制作用を持つアスピリンが投与される。ITPでは術前ステロイド剤が使用されていることが多い。脾臓摘出術が有効な症例では、血小板は数日から1週間前後で増加してくるので、術後3~4日はプレドニン30~40mgが投与され、以後減量してステロイドからの離脱がはかられる。
術後合併症
1.肺合併症
(消化器系手術の術後管理の標準看護計画の術後合併症1を参照)
2.術後出血
術後の後出血は巨脾や癒着の高度な例、副血行路の発達が著名な例、凝固線溶系に異常がみられる例に起こることがある。
3.膵損傷、膵炎、胃壁や結腸壁の損傷
きわめてまれであるが胃脾間膜、脾結腸間膜の切除例にあたって胃壁、結腸壁を損傷し、ドレ-ンより内容物の漏出がみられることがある。同様に、脾門部の処理の際は膵尾部を損傷し、膵液の漏出があり、膵瘻や仮性嚢胞を形成することがある。
4.血栓塞栓症
脾臓摘出後血小板数は増加し、術後2~3週でピ-クに達し、約1カ月後にほぼ正常域値になる。血小板数が80万/mm3以上になると、血栓形成の危険が高くなり、血栓塞栓症を発症することがある。発生部位は腸間膜静脈、脾静脈などの門脈系が多く、まれに肺梗塞、心筋梗塞がみられる。
5.左横隔膜下膿瘍
術後7~10日目でも38℃前後の発熱、白血球増多などの炎症所見が強ければ左横隔膜下膿瘍を疑う。確定診断のため超音波検査が行われる。
6.脾摘後敗血症
脾臓摘出術後の重症感染症のうち敗血症は致命的なことが多い。発症は術後数カ月から2~3年が多いが、時に10年以降のこともある。起炎菌は肺炎球菌のほか髄膜炎球菌、大腸菌、インフルエンザ桿菌などである。
看護計画(術前)
Ⅰ.アセスメントの視点(術前)
脾摘術の対象となる原疾患は多岐にわたっているが、大別すると脾機能亢進や門脈圧亢進を伴う脾腫、血液疾患、脾臓の原発性腫瘍や外傷などの3つとなる。
原疾患によるが巨脾を伴う場合が多く、汎血球減少がみられ血小板減少が著しく出血傾向や貧血が存在することがある。また、ステロイド長期使用により易感染状態であることより出血、感染を起こしやすい状態である。その他に肝機能障害を伴うものも多いなど、術前の全身状態を整えるために原疾患をコントロールする必要がある。そのため検査や手術にむけての輸血や薬物の投与が、安全で苦痛の少ない状態で行われるように援助する必要がある。
Ⅱ.問題点リスト(術前)
#1.疾患や手術に対する不安
[要因]全身麻酔を受ける患者の標準看護計画#1を参照
#2.疾患による苦痛
[要因]・原疾患による症状
・症状からくる精神的苦痛
#3.出血による全身状態の悪化
[要因]・巨脾による汎血球減少からくる出血傾向
・肝依存性の凝固因子の減少による出血傾向
・肝機能障害や貧血による全身倦怠感
#4.易感染状態
[要因]・ステロイドの長期使用
#5.手術後の肺合併症の可能性
[要因]全身麻酔を受ける患者の標準看護計画#3を参照
#6.家族の不安
[要因]全身麻酔を受ける患者の標準看護計画#5を参照
Ⅲ.看護目標(術前)
1.疾患、手術に対する不安が軽減され手術に向けて精神的準備ができる
2.原疾患の症状による苦痛の軽減を図り、体力の消耗を最小限にする
3.全身状態の評価により術後合併症を予測し手術に対する身体的準備ができる
4.家族の精神的慰安に努める
Ⅳ.看護問題(術前)
#1.疾患や手術に対する不安
全身麻酔を受ける患者の標準看護計画#1を参照
#2.疾患による苦痛
[要因]・原疾患による症状
・症状からくる精神的苦痛
&身体的、精神的苦痛を最小限にとどめられる
$手術前日
O-1.貧血症状の有無と程度
2.肝機能障害の程度
T-1.衣服をゆるめ胸部、腹部の緊張を和らげる
2.安楽な体位を工夫
3.医師の指示により与薬
4.精神的苦痛もあるため、感情の動揺や緊張を避ける
5.必要に応じてADL介助
E-1.動悸、息切れ、めまい、全身倦怠感、吐気などが自制不可の場合、医師や看護婦に報告するよう指導
2.動作はゆっくりするように指導
#3.出血による全身状態の悪化
[要因]・巨脾による汎血球減少からくる出血傾向
・肝依存性の凝固因子の減少による出血傾向
・肝機能障害や貧血による全身倦怠感
&異常に早期発見ができ、適切な処置を受けることができる
$手術前日
O-1.バイタルサインのチェック
2.皮膚、粘膜、排泄物、出血斑の有無の観察
3.貧血症状の観察
4.血液データーチェック
5.全身状態の観察
T-1.安静の保持
2.出血部位により適切な処置を行う
3.嘔吐後冷水で含嗽させ嘔吐を誘発させない
4.下血後は臀部を蒸しタオルで清拭
5.鼻出血時は冷罨法を鼻根部に施し、鼻の外側から中隔部にかけて圧迫
6.歯肉出血後、止血したら冷水やイソジン液によって含嗽
7.喀血時氷枕、氷嚢などで呼吸運動を制限
8.皮下出血時、摩擦の少ない柔らかいものを着用
E-1.安静の必要性を説明し、処置により状態の改善がみられることを説明
2.嘔吐、下血、鼻出血その他の出血異常時は、医師または看護婦に報告するよう説明
#4.易感染による全身状態の悪化
[要因]・ステロイドの長期使用
&感染を起こさない
$手術前日
O-1.発熱の有無、熱型の把握
2.悪寒、体熱感、発汗、顔面紅潮、頭痛のチェック
3.口腔内、咽頭痛、注射部位、肛門、会陰部の観察
4.WBC値、CRP値の把握
5.全身状態の観察
T-1.口腔内、鼻腔内の上気道清潔保持(イソジンケア)
2.全身の清潔保持
3.注射部位、IVH挿入部位の清潔保持
4.排便後の陰部洗浄
5.悪寒戦慄時の保温
6.発熱時の冷罨法
7.発汗時の清拭、寝衣交換
8.発汗による脱水予防のための水分の補給
9.倦怠感増強時ADL介助
E-1.易感染状態のため感染予防行動が必要であることを説明
2.感染予防行動として上気道感染予防法や全身の感染予防法を指導
#5.手術後の肺合併症
全身麻酔を受ける患者の標準看護計画#3参照
#6.家族の不安
全身麻酔を受ける患者の標準看護計画#5参照
看護計画(術後)
Ⅰ.アセスメントの視点(術後)
脾臓摘出術後の早期の合併症としては、術後出血、他臓器への損傷に注意する。その後は血栓症、膿瘍、敗血症の危険がある.脾腫は肝障害や血液疾患などの原疾患を有することが多く、合併症を起こすと重篤な状態に陥る可能性があるため、術後台併症の予防に努め、早期に術前の生活に戻ることができるような援助が必要となる。
Ⅱ.問題リスト(術後)
#1.術後出血
[要因]・手術操作による腹腔内出血
・原疾患による出血傾向
#2.多量出血や細胞外液の喪失による循環不全(ショック)
#3.肺合併症
[要因]・気管内挿管や麻酔剤による分泌物の増加
・疼痛や不安による呼吸抑制
・不十分な咳嚇力による分泌物の貯留
#4.腸蠕動の低下
[要因]・麻酔の影響
・鎮痛剤の使用
・ドレーン留置などによる体動制限
・血栓による腸管の運動低下
・脾摘後の空洞への大腸の陥頓
#5.疼痛、チューブ類によるストレスや睡眠障害
#6.セルフケアの不足
[要因]・疼痛
・体動制限
・心理的活動低下
#7.膵損傷、膵炎、胃壁や結腸壁の損傷
[要因]・手術操作
#8.左横隔膜下膿瘍
[要因]・ドレーンの長期留置
・脾摘による免疫能の低下
・ステロイド長期使用による易感染
#9.血栓症
[要因]・血小板の一過性増加
・体動制限
・食事制限
#10.脾摘後敗血症
[要因]・脾摘による免疫能の低下
・原疾患による免疫能の低下
#11.脾摘後発熱
#12.退院後の日常生活の不安
[要因]・微熱
・免疫能の低下
・原疾患の残存
#13.家族の不安
[要因]・術後経過
・原疾患の残存
・日常生活
・仕事、経済面
Ⅲ.看護目標(術後)
1.手術からくる苦痛の緩和とともに、患者が現在の状態を理解でき、術後合併症を起こさない
2.心身共に自立し、退院に向けて準備できる
Ⅳ.看護問題(術後)
#1.術後出血
[要因]・手術操作による腹腔内出血
・原疾患による出血傾向
&創部、ドレーンからの出血の異常の早期発見ができる
$術後~48時間
O-1.2時間毎の観察
2.ガーゼ汚染の量、性状
3.腹腔ドレーンからの出血量、性状
4.腹部膨満、腹痛(部位、程度)
5.ショックの徴候(血圧低下、頻脈、脈の緊張の低下、呼吸促拍、尿量の減少、チアノーゼ、四肢冷感、意識レベルの低下)
6.悪心、嘔吐
7.血液データー(Hb、Ht、プロトロンビン時間)
T-1.医師に報告する
2.安静度を確認し、体位交換はゆっくり行う
3.輸血、輸液の介助
E-1.出血している場合、患者の不安を軽減するために状況を理解できるように説明
#2.多量の出血や細胞外液の喪失による循環不全(ショック)
&安定した循環動態が維持できる
$術後~48時間
O-1.2時間毎の観察
2.バイタルサイン(血圧低下、頻脈、脈の緊張の低下、呼吸促拍)
3.尿量の減少、チアノーゼ、四肢冷感、意識レベル
4.intake、Outputのバランス
5.ECGモニターの観察
6.創部のガーゼ汚染、胃管、腹腔ドレーンからの排液の量、性状
7.悪寒の有無
8.心理面(緊張感、恐怖心)
T-1.医師に報告する
2.輸液の管理
3.保温、室温の調整
4.緊張感や恐怖心を持たせないよう落ち着いた態度で接する
E-1.患者の不安を軽減するために状況を理解できるように説明
#3.肺合併症
[要因]・気管内挿管や麻酔剤による分泌物の増加
・疼痛や不安による呼吸抑制
・不十分な咳嚇力による分泌物の貯留
&喀痰喀出が自力ででき、呼吸状態が正常となる
$術後2~7日まで
O-1.麻酔の覚醒状態
2.呼吸状態(呼吸数、リズム、深さ、胸郭の運動、呼吸困難)
3.肺雑音の有無
4.喀痰喀出状況と性状、量
5.バイタルサイン
6.創痛の程度、鎮痛剤の効果
7.口腔内乾燥の有無
8.intake、Outputのバランス
9.胸部X-P、血液ガス値、WBC等の検査データー
10.ストレス状態の有無、程度
T-1.酸素吸入の実施
2.体位変換
3.吸入3~4回/日
4.咳嗽を促し、喀出時は腹部を両手で固定し援助
5.必要時タッピング、バイブレーション、吸引を実施
6.効果的な鎮痛剤の使用
E-1.深呼吸、咳嗽の指導
2.喀痰喀出の必要性を説明
#4.腸蠕動の低下
[要因]・麻酔の影響
・鎮痛剤の使用
・ドレーン留置などによる体動制限
・血栓による腸管の運動低下
・脾摘後の空洞への大腸の陥頓
&排ガスがあり、経□摂取がすすむ
$術後2~3日まで
O-1.腸蠕動、排ガス、腹部膨満、腹痛、悪心、吃逆
2.胃管の吸引量、性状
3.腹部X-P
4.体動の状況
T-1.安静度の範囲内で体位変換を積極的に行う
E-1.術後の腸蠕動促進のために、体位変換、早期離床が必要であることを説明
#5.疼痛、ルート、ドレーン類によるストレスや睡眠障害
&効果的に鎮痛が図られ、夜間の睡眠がとれ、穏やかな表情で過ごすことができる
$術後3~7日まで
O-1.疼痛の程度、鎮痛剤の効果
2.睡眠障害の有無(入眠障害、熟眠障害、睡眠の中断、早期覚醒、覚醒障害)
3.睡眠パターンの変調に随伴する症状(頭痛、悪心、嘔吐、倦怠感、無力感、思考力の低下)
4.睡眠薬の効果
5.ICUシンドロームの症状の有無(幻覚、幻聴、不穏行動など)
T-1.鎮痛剤または睡眠薬の使用と、その効果の確認
2.処置、ケア施行時は、睡眠の妨げにならないよう調整
3.睡眠がとれるように環境(室温、湿度、照明、騒音)を整える
4.昼夜逆転しないように日中はできるだけ起こしておく
5.ストレスがある場合はその要因を把握する
6.術後の経過に応じて日常生活行動を拡大し、気分転換を図る
E-1.コミュニケーションをとり、不眠の原因は何か、どうしたいかについて話し合う
#6.セルフケアの不足
[要因]・疼痛
・体動制限
・心理的活動低下
&許可きれた範囲内で状態に合ったセルフケアができるようになる
$術後3~7日
O-1.清潔行動、移動行動、排泄行動、食事行動等の行動能力の程度
2.身体、口腔内の汚染状況
3.術後の一般状態と経過
4.疼痛、倦怠感の程度と鎮痛剤の効果
5.褥創好発部位の皮膚の状態
T-1.毎日の全身清拭、寝衣交換
2.含嗽、口内清拭、または歯磨き介助
3.ベッド周囲の環境整備
4.ベッド上で四肢の自動運動を促す
5.医師の許可のもと離床を図る(ギャッジアップ座位→自力座位→端座位→立位~室内歩行→トイレ歩行)
6.一般状態や離床状況に応じてバルンカテーテルを抜去し排泄介助を行う(尿器、ポータブルトイレの設置)
7.効果的な鎮痛剤の使用
E-1.離床計画とその必要性について患者に伝え、術後の状態により活動可能な範囲を教え、できる限り自力で行うよう指導
#7.膵損傷、膵炎、胃壁や結腸壁の損傷
[要因]・手術操作
&ドレーン、創部からの異常な排液や、異常な発熱がない
$術後3~10日
O-1.腹腔ドレーンからの排液量、性状、臭気
2.胃管からの排液量、性状
3.発熱、頻脈
4.腹膜炎症状の徴候の有無と程度(腹痛、腹筋の緊張、腹部膨満、腸蠕動)
5.食事開始後の発熱やドレーンからの異常排液(膿性)の有無
6.腹部X-P、術後透視、造影、血液検査の結果
7.術前のリスクの程度と関連性
T-1.腹腔ドレーン、胃管を経時的に誘導又は吸引し、排液があるか確認する
2.ドレーンの逆行性感染予防のため、ドレーン挿入部より低い位置に排液容器を設置し、逆流させない
3.他臓器への損傷発症時は、医師の指示により経□摂取を中止し輸液の管理を行う
4.異常排液のドレナージと必要時皮膚の保護をする
(スキントラブルの徴候がある場合は、ハイドロコロイドドレッシング等で被覆)
E-1.経口摂取中止の必要性と急激な体動を避けるよう指導
#8.左横隔膜下膿瘍
[要因]・ドレーンの長期留置
・脾摘による免疫能の低下
・ステロイド長期使用による易感染
&ドレーン、創部からの異常な排液や、異常な発熱がない
$術後3~10日
O-1.腹腔ドレーンからの排液量、性状、臭気
2.発熱、頻脈
3.腹部X-P、血液検査、腹部超音波、CT等の結果
4.膿瘍貯留による自覚症状の有無と程度(鈍痛、違和感)
5.術前のリスクの程度と関連性
T-1.腹腔ドレーン、胃管を経時的に誘導又は吸引し、排液があるか確認する
2.ドレーンの逆行性感染予防のため、ドレーン挿入部より低い位置に排液容器を設置し、逆流させない。
#9.血栓症
[要因]・血小板の一過性増加
・体動制限
・食事制限
&血栓症による経過の遅れを起こさない
$術後3~10日
O-1.発熱(門脈系の血栓性静脈炎)
2.鼓腸、便秘(上腸間膜動脈の血栓)
3.肺梗塞、心筋梗塞
4.胸部X-P、腹部X-P、血液検査
T-1.ベッド上での自動運動を促す
2.医師の許可のもと離床を図る(ギャッジアップ座位→自力座位→端座位→立位→室内歩行→トイレ歩行)
E-1.離床計画とその必要性について患者に伝え、術後の状態により活動可能な範囲を教え、その日の計画を達成できるように指導
#10.脾摘後敗血症
[要因〕・脾摘による免疫能の低下
・原疾患による免疫能の低下
&敗血症を起こしやすいということを患者が理解し、セルフケアができるようになる
$退院まで
O-1.発熱
2.バイタルサイン(血圧低下、頻脈、脈の緊張低下、呼吸促迫)
3.悪寒の有無
4.意識レベル
5.血液検査
6.創部の観察
T-1.医師に報告
2.医師の指示により速やかに処置
3.保温、室温の調節
4.イソジンケア
5.全身の清潔保持
E-1.敗血症の危険について患者に説明
2.口腔内の清潔方法の指導(含嗽、歯磨き)
3.皮膚の清潔についての指導
#11.脾摘後発熱
&発熱に伴う随伴症状が軽減、消失する
$退院まで
O-1.発熱のパターン
2.発熱の随伴症状の有無と程度
T-1.安静の保持
2.安楽な体位
3.冷罨法の施行
4.環境の調節(室温、照明、騒音等)
5.衣類、寝具類の調節
6.全身の清潔保持
7.食事の援助(水分塩分の補給、食べやすい食事の工夫)
8.医師の指示により速やかに処置
9.輸液の管理
E-1.発熱の随伴症状の有無と程度の主観的データを報告できるよう指導する
#12.退院後の日常生活の不安
[要因]・微熱
・免疫能の低下
・原疾患の残存
&身体的、精神的に自立し退院に向けて準備できる
$退院まで
O-1.発熱
2.全身倦怠感
3.粘膜、皮膚の状態
4.腹部症状、排便状態(鼓腸、便秘)
5.腹痛、創痛
6.血液検査
7.睡眠状況
8.患者の言葉、表情、行動
9.セルフケアの自立度
10.疾病についての患者の認識
11.家族の協力体制(キーパーソン)
T-1.鼓腸、便秘、腹痛が続く場合があるが、自然に消退することを知らせて安心させるとともに、便秘時の処置を医師に相談して、指示を受けておく
2.患者が質問しやすい雰囲気をつくり、気持ちを表出させる
3.家族の協力を依頼する
4.原疾患へのフォローアップが必要な場合は、原疾患の看護基準も含めて退院時指導の計画を立てる
5.社会復帰に向けた個々の目安について医師と連絡をとりながら説明していく
E-1.微熱が続く場合、ステロイド剤が用いられることがあり、医師からの説明を確認した上で、内服指導を行う
2.原疾患に対しての認識を確認した上で、退院時指導計画にそって生活指導を行う
3.規則正しい生活を送り、適度な運動を取り入れる
4.排便コントロール
5.社会復帰については医師に相談する
6.定期受珍(医師の指示)、服薬指導(医師、薬剤師の指示)
#13.家族の不安
[要因]・術後経過
・原疾患の残存
・日常生活
・仕事、経済面
&家族が不安な気持ちを表出でき、家族サポートをとおして患者が支えられる
$退院まで
O-1.家族の表情、言葉、態度
2.家族と患者との人間関係
3.家族、患者間の疾病の理解、認識の差
4.家族間の協力体制
5.家族の状況判断能力
6.家族がとらえている患者の性格傾向、コーピング方法
7.経済的問題の存在
T-1.家族とコミュニケーションをとり、不安や心配事を表出しやすいように接する
2.患者への説明は言動を統一
3.家庭内で起きている問題の対処ができているか、解決困難な場合は相談にのる
E-1.家族が患者の今後をイメージできるように退院後の日常生活について知識を与える
2.家族に継続が必要なケア(受診、服薬等)について指導
3.家族に患者のサポートの必要性を説明