今にして分かること | 古典技法額縁制作修復 KANESEI

今にして分かること

 

小箱制作では、ある程度まとまった数の小箱に石膏下地を施しています。ボローニャ石膏を塗り重ねて乾かしておけば、いつでも思い立った時に装飾作業が出来るという流れ。

 

今日もウサギ膠にボローニャ石膏を溶いて石膏液を作りました。

そしてふと、フィレンツェ留学時代に弟子入りしていた額縁工房でのことを思い出しました。

 

 

午後に工房へ行くと、同じころに来たパオラがひとこと「あ!今日の石膏液は良い感じにできてるねぇ!」

それを聞いたマッシモが「でしょ?午前中に作っておいたんだ。フフフ・・・」と2人でホクホク喜んでいました。

わたしはその「良い出来」の石膏液を混ぜたり触ったりして「へえぇ」と思いつつ、今ひとつ「何が良いのか分からない」のでした。

 

 

そして今日、小箱用に作った石膏液は、とても良い出来でした。

トロリとなめらか、少しふんわりとしている・・・とても美味いポタージュのような。

あの時、ふたりが言っていた「良い出来」の石膏液は、きっとこんなだったのかな、と思い出していたのです。

そうして振り返ってみれば、今のわたしは当時の2人の年齢に近づいて来ました。

 

結局、そういう事なのですよね。制作をずっと続けて、ああでもないこうでもないと経験しつつ考えて、ようやく積み重なって、石膏液の良し悪しだとか、「どうして今日の石膏液が良くできたか」が理解できるようになった。

 

しみじみと感慨にふけった午後でした。