幸せな娘時代を思い出すマダム風 | 古典技法額縁制作修復 KANESEI

幸せな娘時代を思い出すマダム風

 

現在、ご注文を頂いて作っている額縁は楕円形です。

白木(無塗装)の額縁木地を日本で調達する場合、木工所に頼むか、木地メーカーから購入するか、既成の木地を買う。おおむねその3パターンです。

そして日本で楕円形の木地を手に入れるのは困難なのです。

需要が少ない上にサイズ調整もできないし、板を刳り貫くので材料費もかかる・・・入手困難もやむを得ないことでございます。

 

今回の木地は、ご注文下さったお客様ご自身が購入されてKANESEIに持ち込んで下さったものです。イタリア製だとか。いいなぁ、楕円・・・

 

さてさて、デザインはすぐに決まりました。パスティリア(石膏盛上げ)で模様と文字「CHAOS」「ORDER」を入れることになりました。

 

木地に石膏を塗り磨きまして、わたしの好きな技法パスティリアで左右に模様。

そして上に CHAOS 上に ORDER とゴシック体で入れます。文字アウトラインに線刻を入れて

 

▲額縁サイズはB5の縦長な感じ

 

純金箔の水押し。古典技法真っ只中を進みます。

 

▲ボーロは赤。やはり赤が一番美しく仕上がると感じます。

 

今回、楕円形の額縁の箔作業は初めてでした。ずいぶん昔に作った楕円額縁は木地仕上げでしたので・・・。

箔作業は、貼り始めの場所を記憶しておくことが必要(次の作業の開始場所でもあるので)ですが、四角など角が無い形、始まりと終わりが無い繋がった形ですので不思議な感覚でした。楕円(正円)の額縁制作の注意点を知る。

途中、どこから始めたか分からなくなってしまって気づきました・・・。

 

▲机の上の散らかり様は見て見ぬふりでご容赦ください・・・

 

箔を貼り磨き、部分的に黒で彩色して、文字の中をマイクロ点々打ちをして、さて。

楽しい楽しい古色付けです。

キラキラ輝く金箔をスチールウールで擦って傷をつけ、ワックスで汚して、ボロボロ加工をしてアンティーク調にします。

 

輝く金と艶やかな真っ黒な色が、この加工でしっとりと落ち着いてきます。

勝手なイメージですけれど、古色加工前の額縁は「露出度高めの黒いドレスを着た若い女の子が、瞳をキラキラさせて楽しくパーティーへ向かう!」という雰囲気だったのが、古色加工をすると、「50年後、その女の子は沢山の人に愛されて沢山の経験をして、奥底から湧き上がるような美しさを湛えるようになった。そうして幸せな娘時代を思い出して微笑んでいる」というような変化。

そんな感じになったら良いなぁフフフ・・・と思いつつ、今日も嬉々としてガサゴソ作っています。