「きゅうの正体」※新作番外 | さらさの「粗野がーる」

さらさの「粗野がーる」

アメーバの携帯ゲーム「艶がーる」の主人公を、28歳・恋愛偏差値20の女性に置き換えた実験的小説を書いています。

あくまでフィクションなので、深く考えずに読んでください

※第四部十三話を受けた話です。

単品で読んでもイミフなので、未読の方はこちらから→十三話



新選組からの平和的分離策を、盟友の篠原に託した伊東甲子太郎は、遠く離れた長崎の地で、人生最大の衝撃に見舞われていた。

いわゆる、カルチャアショックというやつである。


若き頃の水戸への遊学にて水戸学に触れて以来、攘夷思想を掲げていた彼ではあるが、元来の柔軟な気質が幸いした。

闊歩する異人に、立ち並ぶ洋館。丸山の遊郭には、聞きなれない異国語が飛び交う。

見るもの、聞くもの、会う人のすべてが珍しく、新しかった。


「大開国だよ、新井君!(大声)」


攘夷、どこいった。

西洋不服、どこいった。

コペルニクスもびっくりの大転回を遂げた伊東に、同行者の新井は面食らったが、攘夷は、行うのだそうだ。

大開国により、富国強兵を遂げた後に。


そんなことできるのか。当然、新井は疑問に思ったが、伊東の放つキラキラした粒子を浴びてしまうと、なんとかなる、いや成せば成る。必ず成る。成さいでかっ!と闘志の燃ゆること甚だしく、そこに冷静さの挟まる余地などなくなってまうのが不思議である。

 

「これからは、エゲレス語だ!エゲレス語を学ばねばっ(大声)」


仏語はもう古い。蘭語など論外。エゲレス語一択だ。



―――というわけで、京は五条の善立寺にて。

伊東を教授に、エゲレス語を学ぶ衛士の面々は、それぞれの帳面に例文を書き付ける。


「かたじけない、は、『さん きゅう』」

「お慕いしております、は、『あい らい きゅう』」


ふむ、と頷いたのは、篠原泰之進。


「つまり、『あい』が我で、『きゅう』が汝というわけか」

「なるほど!」


違う。


「では、伊東先生がもっとも尊ぶべきとおっしゃっていた『らぶ』を使うとなると・・・・・・?」


篠原の問いかけに、藤堂が答えた。

元気よく、溌剌と。


「あい らぶ きゅうっ!!」


はい、みなさんご一緒に。


あい らぶ きゅうっ!!


おしまい


※御陵衛士が、英語の勉強をしていたのも、「ゆう」を、「きゅう」と間違って理解していたのも実話!