宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』。ジョバンニが持つ天上でもどこまででも行ける特別の切符が何かという話がラジオで流れていた。四つに折ったはがきぐらいの大きさの緑いろの紙ーーいちめん黒い唐草からくさのような模様の中に、おかしな十ばかりの字を印刷したもの。
宮沢賢治は日蓮宗の信仰をもっていた。「我、日本の柱とならん」という日蓮の精神を受け継がんとする国柱会に所属しており、そこの機関紙がまさにジョバンニが持っていた緑色の切符そっくりだという。
その切符に書かれていた文字らしきものは「南無妙法蓮華経」の梵字を意味していることになる……。
今は亡き私の父が夢に現れて言ったことがある。「住む家は質素でよか。宮沢賢治がそげん人やったもんね」。父が宮沢賢治を尊敬していたかどうかは、生前聞いたことがない。ただ、日蓮宗の信仰を持っていたという点では繋がりがあったと言えよう。