私は、デザインを学ぶための基礎的なデッサンについて、よく解説しています。
⇒『デザインのためのデッサン講座(考え方・初級編)』
そのデッサンは、昔ながらの鉛筆と画用紙を使ったデッサンです。
しかし、今では、絵を描く場合、デジタル・ツールを使っている人が多いと思います。
例えば、液晶タブレットに、タッチペンで描く、という方法ですね。
だから、デッサンもデジタル機器を使って、描いた方がいいんじゃないか、と思う人もいると思います。
でも、私は、ぜひ、鉛筆や画用紙を使ったデッサンを、経験して欲しいと思います。
その理由を、説明します。
一つ目の理由は、デジタル機器を使って、絵やイラストを描くにしろ、やはり、アナログの手書きの絵を基本としている、ということです。
別の言い方をすると、2次元、つまり、平面の絵は、まだデジタルから発生したものというのは、ないんじゃないでしょうか。
アナログの絵筆を使って描かれたタッチの絵が、デジタルでも主流であれば、一度は、絵の具や筆を使って、画用紙に描く、ということを、経験してみてもいいと思うのです。
また、そちらの方が、デジタル機器を使って、絵を描く時にも、上達しやすいと思います。
これは、別の表現方法を例にすると、わかりやすいかもしれません。
例えば、パソコンで、3Dを作る場合です。
最近は、ゲームや映画などでも、3Dで作られたキャラクターが、多いですよね。
もし、そういった3Dキャラの作り方を学ぶ場合、いきなり、パソコンで3Dソフトを使い始めるのは、ちょっと難しいと思うんです。
できれば、一度は、粘土などを使って、自分の手や指を使って、立体造形物を作る練習をしてみてもいいでしょう。
また、音楽を作る場合も、いきなりデジタル・ツールを使って曲を作るよりも、実際のピアノやギターなどを練習した方が、いいと思います。
一見すると、ちょっと遠回りのような気もしますが、一度、自分の手を使って、アナログな表現に触れることで、デジタル機器の使いこなしや表現も、うまくいくと思います。
だから、絵を描く場合の、基礎の基礎を学ぶ場合、鉛筆と画用紙を使ったデッサンが、とても有効なのです。
もう一つ、お勧めする理由は、表現の可能性が、グッと広がるからです。
極端な話、デジタルは、プログラムされた範囲内でしか、表現できません。
また、モニタやディスプレイで、表現できる、もしくは、再現できるものしか、映し出してくれません。
しかし、手や指を使って、現実にある、あらゆる素材を使うことができるアナログ表現は、無限の可能性を秘めています。
そのため、あまりにも早い段階で、デジタル機器だけを使ってしまうと、そのデジタルの枠の中で、表現が収まってしまう可能性があります。
人によっては、それが、非常に狭い世界に、感じてしまうのではないでしょうか。
もちろん、アナログな表現技術を、もっと効率的に、また、表現を増幅させるために、デジタル・ツールを使う、ということは、いいことだと思います。
その場合は、あなたの表現したいことが先にあり、あくまでも、手段、つまりツールとして、デジタル機器を使う、ということですから。
また、デジタル・ツールを、うまく使いこなすことができない、もしくは、その表現結果に満足できない、という人は、アナログを試してみたらいいかもしれません。
自分の指を、自由自在に動かし、指先で、繊細な感覚を感じる。
それが、素晴らしい表現に結びついていくかもしれません。
プラスチックのタッチペンよりも、鉛筆や絵筆は、非常に微妙な感触を伝えてくれます。
それで脳が刺激され、新たな発想が生まれるのです。
こういった、アナログ手法を、時間をかけて試し、学ぶことができるのは、時間のある若い時が、チャンスなのです。
なんといっても、脳も心も若いため、繊細な感覚も、どんどんと自分のものにできます。
ぜひ、自分の指先を動かし、その繊細で、微妙な感覚を、体験してみてください。
その第一歩が、鉛筆と画用紙を使ったデッサンなのです。