【観劇日記】東海道四谷怪談 俳優座 | kaネとmo観劇日記

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年間200本程の観劇。
その感想やらを忘れないように、記しておこうと思います。




1/25(土)昼公演 俳優座劇場
7列 センターブロック

オープニング。
出演者のほとんどが左右の客席入口から登場し、
町人のお祭り騒ぎの喧騒で幕を開けました。

これまで何本もの『四谷怪談』を観てきましたが、
目から鱗が落ちるように、発見することが多く、
『観てよかったなぁ』と本心から思える公演でした。
同時に、いままでどれほど上辺だけを眺めていて、内容を把握できないでいたのかと
反省しています。
ひと言で言うならば、
「夫に殺された恨みで成仏できずに化けて出る怖いお岩の話」という認識が、
「立身出世の願いや政治的な謀略に踊らされた男と、巻き込まれた女の悲劇の話」
に変わりました。
同時に、背景には「忠臣蔵」があるということも知りました。
人物相関や事件(出来事)の背景が、とてもわかりやすく描かれている
素晴らしい公演でした。

色男の伊右衛門が妻のお岩を捨てて女に走り、
邪魔になった妻を殺害したという話だと思い込んでいました。
お岩に毒をもったのは、伊右衛門に一目惚れした娘の気持ちを成就させるために
その親が騙して飲ませたもの。
それも毒殺が目的ではなく、顔を爛れさせて伊右衛門に嫌われるようにすることでした。
死んだのは偶発的なこと。
その偶発も、見事に演出されていました。

これだけわかりやすく組み立てられているにもかかわらず、
全く説明的ではなく、気持ちよく作品世界に引き込まれました。

また、簡単に言えば、『四谷怪談』は「お岩」の話ではないということです。
おどろおどろしい作品ではなく、ドロドロとした謀略の渦巻く作品でした。

そんな作品の中で、唯一客席の笑いを誘うシーン。
按摩師の宅悦が運営する「地獄」と呼ばれる女郎宿。
ここで一人の女郎が二人の客を相手にするシーン。
といっても別の床に、別の女のフリをしてバレないように潜り込むという場面。
大中小と名づけられた年齢別コースがあり、大(熟女)、小(少女)を選んだ客を
好みの女に化けて相手するというドタバタ喜劇シーン。
美しい容姿で存在感のある小澤英恵さんが熱演。
まさかのコメディエンヌっぷりを披露して、会場を大いに沸かせました。
あの白塗りで、おてもやんのような頬紅と、極太の付け眉毛は、
一見バカ殿風でありながら、
そのユーモアのある演技の質は、むしろC・チャップリンです。
美的に華のある老舗劇団の女優さんの、新たな一面、新たな可能性を見た気がします。

また、お岩の妹のお袖を演じた佐藤あかりさんの好演が光りました。