【観劇日記】おのれナポレオン | kaネとmo観劇日記

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年間200本程の観劇。
その感想やらを忘れないように、記しておこうと思います。

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5/11(土)昼公演 東京芸術劇場プレイハウス
D列 ステージサイド

何から書けばいいでしょうか?
まとまらないままにパソコンに向かっています。
でも、今回は書かなくてはいけないと思い、とりとめもなく書いてみます。

天海さんが急病で入院され、やむなく降板されたことを心配しています。
とりあえずは大事に至らなかったとの報道にホッとしました。
この、近年では比類無き大人気公演でチケット確保の困難さは際立っていました。
わたしの目当ては天海さんでした。

わたしが最初に確保できたのは5/8と5/9の夜公演です。
このままだったら、見事にこの公演を観られなかったことになります。
ですが、このコミュの1番の友人のご配慮で5/2のステージシートを確保し、
さらに、追加販売で5/11のステージサイドを手に入れました。
ですから、2日に天海さんの演技を堪能いたしました。

だから…、天海さんのご病気については本当に心配しているのですが…、
代役に立たれた宮沢さんの、たった4回の公演についての希少価値に
かなり舞い上がっていたように思います。
実を言うと、最初に確保した8日と9日のチケットは後方だったので手放し、
11日のチケットを8日の同等席のチケットと交換していました。
そう、11日を手放していたのです。
それを元に戻しての観劇となったわけです。

劇場の当日券売り場には、劇場では見たことのない長蛇の列がありました。
それくらい、宮沢さんのわずか2日半での出演に対する興味が
世間から集まっているという証で、
チェックしてはいませんが、オークションではきっと高騰していたことでしょう。


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そうした『世間の関心の高い』『珍しい』『たった4公演』という
希少な公演を観られることのみに呑み込まれてしまっていた気がします。
そんなゲスな考えでいっぱいになっていたわたしを
カーテンコールの空気が、洗い流してくれました。

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『この公演を、観させてくれてありがとう』
この感謝が客席に満ちていたのです。
すべての観客(つまり、他の俳優のファンの等)が、
この公演を観られなくなるところだったわけで、
それを救ってくれた宮沢りえさんに感謝するスタンディングオベーションでした。
わずか2日半の稽古で舞台に立ったことへの賞賛などではありません。
(もちろんそれも無いわけではないでしょうけど)
そして、当然ながら共演者はそれを充分に理解して感謝している表情でした。

迫りくるわずかな時間しかなくても、代役を引き受けて舞台に立ったことの価値よりも、
たった4公演のためにでも、チャレンジする気持ちを持ったのは、
1公演の舞台に宿る未知の可能性と
1公演の舞台に寄せる観客の思いとを
宮沢りえという女優は、充分に知っているからだと
ハッキリと解りました。


作品を
舞台を
純粋に楽しもうという気持ちを忘れて、
その価値やら、両者(2つの公演)の違いにばかり囚われていた自分を
自戒させ、
まるで、汚れた心と身体を洗い流し、洗礼を受けたような気分にさせてくれた
熱くて、それでいて優しくて、包み込むようなカーテンコール。
初めての気持ちです。



そんなことは必要なく、
無意味であり、無粋だと解っているのですが、
敢えて二人のアルヴィーヌを比較すると…。
天海さんは、明るくチャーミングで、コメディ色の濃い公演。
宮沢さんは、陰がありキリッとしていて、重厚でシリアスな公演。
どちらも素晴らしかったです。

9日に予定されていた収録とライブビューイングが中止されたことは、
天海さん、宮沢さん、両者への配慮だと思うのは勘ぐりすぎでしょうか。
こうなれば、アルヴィーヌを豪華ダブルキャストにした再演を望むのは
欲張りでしょうか?
お二人の競演…こんな贅沢な妄想を巡らせているのは
わたしだけではないはずです。
お二人にとっては勿論のこと
他の出演者にとっても
スタッフにとっても
そして観客にとっても
大切な大切な作品になったはずですから…。



■追記■
三谷幸喜さんが、宮沢りえさんへ「お礼に芝居を書く」とコメントされています。
そう言えば、2002年3月の三谷作品『You Are The Top 今宵の君』では、
ダブル主演の一人である鹿賀丈史さんが初日3日前に降板して、
代役に浅野和之さんを立てて、4日遅れで開幕したということがありました。
その後、三谷さんはたくさんの作品に浅野和之さんをキャスティングし、
今では三谷作品の顔と言える俳優さんの一人となり、
素晴らしい活躍をされて、多くの演劇賞を受賞しています。
三谷さんが、宮沢さんにどんな作品を提供され、
今後はどんな関わりになっていくのか楽しみです。

2005年7月の松尾スズキ作・演出『キレイ~神様と待ち合わせした女~』再演で
主演女優降板で鈴木蘭々さんが出演されましたね。
その後、松尾さんは『サッちゃんの明日』で蘭々さんに主演させています。
蘭々さんはその後に何本も代役に抜擢され
(2005年、東宝制作『ジキル&ハイド』、
 2008年、後藤ひろひと作・演出piper『ベントラー・ベントラー・ベントラー』)
驚きました。

2009年5月にはシアターコクーンで蜷川幸雄演出の
『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』でも
千秋楽間近で代役公演がありましたね。
2公演を中止して、2日間で毬谷友子さん(他の役で出演されていた)を代役に
前楽・千秋楽の2公演を上演されています。
あれも鬼気迫る…という感じで、大喝采でした。

『レ・ミゼラブル』も主演の怪我で、バタバタしていますね。

「舞台は生もの」を実感させる、伝説ですね。