【観劇日記】結婚披露宴会場で演じられる「三人姉妹」 | kaネとmo観劇日記

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年間200本程の観劇。
その感想やらを忘れないように、記しておこうと思います。

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7/10(火)夜公演 結婚式場アンフェリシオン ★初日
円卓席

結婚披露宴会場での公演。
会場の特性を生かした演出がなされ、興味深い公演でした。

酒宴の長テーブルは奥の間に設置され、ガラス戸で仕切られています。
そのガラス戸を開閉し、
閉めた向こうでのやりとりがかすかに聞こえることが上等なBGMとなり、
開けた向こうでのやりとりがグッと近くのこととして迫ってきます。
戸の雌雄の閉まりの悪さを差し引いても、効果的だったと思います。

三人姉妹は美しかったです。
ただ、声質のせいか、オリガは台詞が届かない部分も感じましたし、
逆にイリーナは活力が溢れすぎていた気もしました。

全体的には、設定や動きの演出は良かったと思うのですが
形や約束事への意識が強いのか、心情の受け渡しにもの足りなさを感じました。

注目していたのはナターシャ。
裕福な家の息子との恋に落ち、
裕福な家の住人との関わりに負い目を感じている女性。
やがて結婚し、その裕福な家の家族になり、母に。
女性の、環境や立場によって変貌していく様の恐ろしさを感じます。
上流階級の出ではない彼女は控えめな女性。
それが、母親になると、その親バカぶりは底なし沼のようです。
子どものために、夫の姉妹の部屋を奪い、
家計を牛耳って、長年尽くしてくれていた年老いた家政婦を追い出そうとします。
気弱なところを見せていながら、
スイッチが入れば恋人に馬乗りになって濃厚な接吻。
母になれば子どものことしか目に入らず、
周囲に対してどんどん高圧的になっていく。
それだけ子どもに執着していながら、年配の権力者との情事も。
オンナの怖さを見た気がします。
その振り幅の大きさを、渡辺樹里さんが好演されていました。
幼児の母ということで、胸元を開けた豊満で艶やかな姿に
ドギマギしてしまいました。
本編が始まる前に、披露宴会場よろしく余興が繰り広げられ、
木村カエラの『Butterfly』を歌い踊る姿は柔らかい笑顔でとってもキュートなのに、
家政婦を追い出すべく悪態をつくときの迫力と来たらゾッとするほどです。
その迫力に嫌悪感を抱くほどで、
女優の技量を見ました。


チェーホフやシェイクスピアといった古典の名作は
名作である故に、難しさがありますね。
大胆な発想による演出が施される新鮮さか、
丁寧に心象表現に取り組む忠実さが必要になってきます。
演出家の技量が試されることになるわけです。
逆に言えば、手腕の見せ所ですね。

そんなことを考えさせられた作品でした。


■追記■
会場で久しぶりに再会した俳優座の小澤英恵さん。
相変わらずの存在感と美しさとおとぼけぶりに笑いました。
そして新たな出会い。
俳優座の安藤聡海さん。
キュートな女優さんです。
9月に「かもめ」(これまたチェーホフの名作ですね)の
ニーナを演じられるとのこと。
楽しみが増えました。