ふわり
ふわり、としたものがすきだ。
たとえば
ガールフレンドの素肌にエプロンだけ
ふわり、とまとわせて朝のマフィンを焼いてもらうとか、
あ、ごめんなさい。
そんなことしたこともありません。
たとえば
お好み焼きのうえでふわり、と踊る鰹節とか、
それなら経験済みです。
ふわり、としたホイップクリームとか
感動社がボールと泡だて器でガシャゴオショグシャグシャガリガリと
やっても、どろおーりとしたホイップクリームにしかならないのに、
エプロンドレスなんか着た女の子がつくると
ふわり、としたホイップクリームができちゃったりする。
不思議だね
って、感動社がガサツなだけです。ごめんなさい。
感動社の住処のすぐそばにセブンイレブンがある。
お昼時になると近所のOLさんたちが
制服のうえにこれまたふわり、と
パステルカラーのニットのカーディガンをはおっていたりする。
わるくない。
男のカーディガンは無様だ。
どうしても日曜日の
ごろごろおとうさんになってしまう。
だいたいあんなもン着てオートバイのって120キロくらいだしたひにゃあ
あんた、防風性はないし、こけたら肉までもってかれちまう。
でも、あんまりごろごろおとうさんはオートバイで120キロもだしません。
で、まあ、
セブンイレブンが
近所にあるおかげで
感動社は日に二、三度はお世話になるわけだ。
すると、とうぜん店員さんと顔なじみになるわけだ。
ある日曜日の朝なんか娘と
歩いていたら突然声をかけられた。
「おはよあざーす。さんぽっすか」
おはようございます、おさんぽですか、と言っているらしい。
見ると、身の丈190センチ角刈りジャージこぶしに拳ダコの大男が
娘と「おー」なんて言いながらハイタッチしている。
セブンイレブンの店員さんだった。
制服着ていないとわからない。
そのセブンイレブンのことだ。
夕方でけっこう混んでいた。
雑誌コーナーの前で一人の女性とすれちがった。
髪の長い御嬢さんだ。
感動社とすれ違いざまにぺこりとおじぎしてくれた。
「あ、どーも、むにゃむにゃ」
と、こちらもおじぎをかえして
はて、誰だったけなと考えてた。
いやーこれはもしかするともしかして、
あなたのことを影からずっと、お慕いしておりました、なンてなことに
なっちゃたりなんかしたりして。
レジの前に列が長く伸びていた。
バイトのシフトの谷間だったらしく
店長がひとりで接客をしていた。
さっきの御嬢さんが懸命にレジを打っていた店長に声をかけた。
そして
ふわり、と
ほんとうにふわりと、髪をかきあげる。
てばやく、かきあげた髪をくるくるっとまとめるとピンでとめた。
いつものレジのおねえさんだった。
時間外だというのにそのまま名札だけつけてもう一つのレジにむかうと
いつものようにレジを打ち始めた。
これだけの話だ。
いつものレジのおねえさんは、いつものように
午前中からお昼過ぎにかけてレジを打っている。
もう一度、あのふわり、と髪をかきあげるしぐさを見たいもんだ。
だから、男ってのはふわり、としたものに惹かれるのだな。
