『わたし、一度死にました』(東京都:匿名希望)
―――どん底からこそ、人生の勝利への扉
「痛っーーーーー!!!!!!!」
栄子は、久しぶりに近所に買い物に自転車を走らせている最中だった。
「ええっ??!!な、なに??!!肉離れ??!!
急に起きて自転車をこいだから肉離れかな??
わたし、いちおうは元体育会だし、そんな身体やわかったっけ。。。」
ちょうど、栄子はこの一週間、壮絶な激痛で病床に伏していたのだ。
それは、「結石」。
結石の激痛は、床を這いずり転げまわり呼吸困難になるほどのものすごい苦しみなのだ。
だが幸い、結石は無事すぐに落ちてなくなったのだ。
ようやく回復した栄子は、
久しぶりにリハビリを兼ねて自転車をこいで近所に買い物へ行くところであった。
とりあえず、栄子はびっこを引き引き、早めに買い物を切り上げ帰宅した。
「!!!!!!!!!!!!!」
びっこを引きながら帰宅し靴を脱ごうとその時、
家の玄関口の下足棚の姿見に写し出された自分の姿が目に飛び込み驚愕した。
「片方の足だけが、、足が、、足が、、、うわーーーーーーっ!!!!!!」
片方の足だけが2倍の太さになっており、
それはそれは目を覆うほどのおぞましい足になっているではないか。
しかも、色もどんどん腐った色に変色していく。
栄子は、パニックで何が起こったのかもう理解ができなかった。
とにかく頭が狂いそうで発狂寸前であった。
あまりにも片足だけが太い為、
足がお互いこすれ合いうまく歩くことすらもできなくなり、、、みるみる歩行すらもできなくなった。
「なんだこれはーー??!!うわーーーーーっ!!!」
発狂寸前の中、救急車でまたもや運ばれる。
病院でCT検査。
栄子は、とにかく嗚咽で声にもならなかった。
「な、な、なんですか??足が片方だけ2倍の太さなんて、
治りますよね??治りますよね???!!!」
と、声にならない声でレントゲン技師に尋ねる。
「・・・・・・・一見すると、おそらく片足切断になるかもしれません・・・・・」
「???!!!はーーーーーーっ???!!!ぎゃーーーっ!!」
もう栄子は、声にもならなかった。頭をハンマーで殴られたようだった。
医師の診察になり、
「先生!!!これだけ医学が発達しているのですから、
元の太さに戻りますよね?戻りますよね??せんせい!!!」
と栄子は、号泣の中、医師の袖にすがり揺さぶった。
「残念ですが、太さは一生涯こうでしょう。
そして、一生涯、後遺症と付き合うことになります。覚悟して生きて行かなければなりません。」
容赦なく残酷なとても信じがたく、断定しきった医師の言葉に、生きる希望を失った。
涙がとまらず発狂した栄子であった。
「足の先から、太腿の付け根まで、血栓で隙間なくびっちりです。
足の弁が全壊ですので、太さを戻すことはできません。
それより、よく生きておられました。なぜか、肺の直下で血栓が止まっています。
いやこれは不思議なことです。
ですが、いつ肺に血栓が飛ぶかわかりません。簡単に飛ぶものです。
飛んだら即死ですので、とにかく動かないでください。」
栄子は、「いつ即死するかもわからない状況だ。」などと言われ、
恐怖におののきもう頭が狂う寸前であった。
もう何が起きたのかもわからず号泣で、いつ即死するかわからない恐怖。
死ななかったとしても、一生涯、太さが元に戻らないという現実、
一生涯、後遺症と付き合う現実、もう栄子は死んだ方がよいとさえ思った。
ーー栄子は、かつて、足が自慢でさえあった。
芸能界で活躍していた時期もあり、アイドル活動、モデル、レースクィーンなどなど、、
それはそれはもう自慢の足であり、他人もうらやむ足だったのである。
とりわけ自慢の足であった栄子にとって、
一生涯、足を隠して過ごさなければならない苦しみは死に匹敵するほどの辛さなのである。
片方の足だけが2倍の太さでは、絶対に人目につかない様につま先まで隠さなければならない。
―通称「エコノミークラス症候群」 重症クラス
一週間ほど前に患った結石により安静にしすぎた為、
身体に血栓が発生し、いきなり起きあがり自転車をこいだ為に、
片足全部に血栓が広まり肺の直下にまで隙間なくこびりついたのだ。
普通であれば、当然、肺にまで飛び一瞬にして即死であったが、
不幸中の幸い、なぜか不思議なことに肺の直下で止まっているという。
だが、油断は一瞬もできる状況ではなく、一命は取り留めても足の弁が全壊の為、
太さが戻る可能性はなく、さらに後遺症と死ぬまで付き合っていくという
あまりにも残酷な結果を余儀なく言い渡されたのである。
栄子はもう死にたくて死にたくて死にたくて仕方がなくなっていた。
どうして助かってしまったのかとさえ悔やんだ。
「どうして死ななかったの??!!
死ねばよかったのに!!死んだたら良かったのに!!うわーーーん!!」
来る日も来る日も、朝、目が覚めるのが地獄であった。
終わりがみえない地獄。目が覚める地獄。
どうして目が覚めてしまうのだ。このまま永遠に目が覚めなければよいのに。と。
地獄の闘病生活だった。
病院の窓から、東京タワーがみえた。六本木ヒルズがみえた。
この日まで、
「これからビジネスで成功するんだ!!」と東京タワーに向かって叫んで頑張っている日々であった。
この時の栄子には、もう東京タワーが視界に入ってももう立ち上がれなかった。
どうでもよかった。むしろ早く死にたかった。
どうして死なせてくれなかったのか悔やんだ。
東京タワーがみえる病院から度々飛び降りる気持ちにさえかられた。
首に穴をあけ、カテーテルを入れ血栓溶解を行った。
だが、足にできた血栓は既にカチカチに塊となり血管壁にこびりつき溶解不可能、
血管壁にたくさんついているなんと髪の毛よりも細い弁は、
当然に全損傷、全壊、医学的に、世界中のどこの優秀な医療機関に行こうとも、
人間の髪の毛より細い弁を再建する術はなく、弁を取り付けることも、
人口弁もできないのである。
カチカチに固まった血栓が、血管壁にへばりつき塞いでしまっている為、
溶解不可、このまま一生付き合うのはもちろん、肺塞栓という命の危険とも隣り合わせだという。
既に、全壊してしまっている弁はもう復活はできず、
粉々に壊れてあとかたもなくなっているのだという。
日本中、いや世界中のこの専門の優秀な医療機関、
ありとあらゆる名医を調べ尽くしては診察を受けた。
だが、すべての名医が同じ結論であった。一生涯、腐った、変色した色、二倍の太さの足。
肺塞栓で命を落とす危険。
「スーパーに行けば、陳列棚の下の方の商品が取れない!
屈伸ができない!自転車も、お風呂も、正座も、トイレの和式も、
何もかも、、、片方の足だけピーンと延ばした状態を保つから不自由で仕方がない!!
生きていたくなんかない!
しかも、片方だけこんな腐った変色した色、二倍の太さじゃ、
死ぬまで足を出して外出できないうわーーーん、死んでればよかった!!
死ぬその日まで付き合うなんて、、死なせてーー!!」
栄子は、終わりのない地獄の日々に、生きた屍のようだった。
ストレスで顔も肌もぼろぼろ、髪も一気に白髪が激増した。
ーーー
母親が毎日毎日来る日も来る日も、
「死なしてくれ!」と発狂する栄子を抱きしめながら取り押さえ慰める闘病生活だった。
ほうっておくと、ふらっと自殺しかねないのだ。
包丁を手に取ったり、踏切にふらっと行ってしまうような気持にかられたりと、
目が離せない状況なのだ。
いつも、抱きしめて少しずつ少しずつなだめ慰めていくのだった。。。
当然、まったくどんな慰めも栄子の耳には入らなかった。。
「栄子ちゃん、あなたはどうして奇跡的に生きていたかわかる?!
あれだけの著名医師すべてが、不思議なものだ。
不思議なことが起こったものだ。と首をかしげていたでしょう。
本当は即死であったあなたは、どうして生きていたと思う??
それは、あなたは生きるべくして生きていたのよ。生きる使命があったからなのよ。
生きるべき使命があって生きているの。
だから、生きて活躍する使命があるのよ。
栄子ちゃんは、そういえば昔から文章を書くのが好きだったわね。
人を笑わせるのが好きだったわね。たとえたとえ足がなくたって、「書く」ことはできるでしょう。
せっかく、助かった命、栄子ちゃんは、人の為に何かを書いて、
笑わせて、人に元気を与え、希望を与えていく道を進むのはどう?
何も飾る必要もない。ありのままの自分で、他人に元気を与え、希望を与えること。
それがどれだけ尊いことだと思う?
他人に元気を与えれば、自分にも不思議と恩恵はかえってくるものなのよ。」
―――
栄子は、最初は当然もちろんなかなか生きた屍から脱することはできなかった。
思考能力もゼロ、気力もゼロ、、
だが少しずつ少しずつ、母親に言われたように「書くこと」、
「言葉」を意識するように少しずつ励んでいったのである。。
―――数年経ち・・・
栄子は、ビジネス社会への復帰を果たす。
その一部に「ライター」としての仕事も。足は、なんとも奇跡的に「完治」したのだ。
日本、いや世界中の名医が不可能だと断定しきった病がなんとも完治したのだ。
名医達は、再度の不思議な出来事に驚愕している。
あれだけびっちり隙間もなかった血栓は、身体中すべてから微塵、あとかたもなくなり、
なんと全壊したはずの髪の毛より細い足の弁が正常にしっかり動いているという。
もちろん、なんの「治療」もしていない。
この世になんの「治療法」も存在しないからだ。
本当に不思議なことだが、勝手に、身体中の細胞が蘇生したのだ。
勝手に自己免疫力で治してしまったのだ。度々、なんとも不思議なことである。
人は、人の為に生きるという決意をした時、
人に希望を与え、人を元気にさせ、世の為に尽くそうと決意した時、
身体中の細胞が蘇生するのかもしれない。
医学では決して解明できないが、無限の力が湧くのかもしれない。
まさに「蘇生」とはこのことである。
栄子の現在の足は、正常な人の足とまったく同じ弁機能だと医師は言う。
病気は「なかったこと」にさえなった。
栄子は、「書く」ことによって、人間の無限の蘇生力、
底力の可能性を多くの人々に伝えていきたいと意気込んで
日々活き活きと充実した日々を過ごしている。
―――どん底をみたからこそみつけた人生の勝利への新しい扉。
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