ヴオルフガング・アマデウス・モオツアルトの数あるコンサート・アリアの日本語版を作成せんとす。
これらを以て、交響曲を編まんと思ふ処なれど、未だ、その想を得たるものにあらず。
先づは、ソプラノの曲を纏めて、その日本語版を成さんとせり。
アリア「朝日は昇るよ、この日」K70
朝日は昇るよ、この日、
ご許されませ、我が才(ざえ)薄きを、
え讃へなん、いや慎み、
え讃へなん、いや畏み。
爾(なんじ)の輝きは晴れやかにいみじき
おん徳をうづに装ひせらる、
いや尊(たつと)きは、我が知る能はず、
え為し難し、言葉にも。
アリア「百の憂へ、また百の」K88
百(もゝ)の憂へ、また百の
胸走り、震ひ、また覚ゆ、
氷れる血は引きて、
我が胸のこゝに走(わし)れるを。
予て知りぬ、我が善きものは、
いやおぞき、いけにへと、
美なるものは、歎かふ、
無くしなん、親しきもの。
これらは、モオツアルト十歳の作品と云ふ、きらびやかにして、既に才気煥発なり。
猶、チエンバロ多用したるものは用ひず、また、レチタティーボと併用のゆゑに意味通じ難きものあり、敢へて抽象化せざるを得ざらんか。