審判奇譚 第八章21 | 神鳥古賛のブログ

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古典。読めば分かる。

 K、思ひ出でらるべう促さんとて、かく云ひぬ。「爾、立ち所に事の顕れんを望みて、為に口叩きの士のもとへと赴きけれ。」と。


「しかり、その云はれるが如し。」と商うど云へど、後とを継ぎて、もの云ふ事なし。


「レニをまへにして、云はざらまく欲りするものか。」とK思ひ、ひた心に後とを聞かばやと心いられせらるゝを思ひとゞめて、更に強ひんとするは控へたり。


「我が事を取り次ぎて賜びしや。」と彼れ、レニに問ひぬ。


「云ふに及ばんや。」とレニ云ふ、「汝れの来たるを待ちゐたるを。はや、ブロクをば、な構ひそ。


ブロクとは、いづれ後ちになりと語らふを得ん。何さま、これなるひと、飽かず此れにはんべるべし。」と。


K、なほも躊躇ひゐたり。「なほも此れにとゞまりをるや。」と彼れ、商うどに問ひぬ。商うど身づから、いらへするを聞かんとてなり。


レニ、これ、あたかも在らざる者の如くに商うどを持て扱ひ種に云ふが憎ましう覚えたり。


けふが日、レニには、下紐の下ゆ腹立たしき思ひのみ募りたれ。


しかるあひだ、またも、レニ、これ、いらへせしのみなる。「これなるひと、しばしばも、これへ泊まりぬれ。」と。


「これへ泊まるとや。」とて、K、叫びぬ。


彼れの思ひゐしは、商うど、これ、たゞに己が帰り来たらんを待つべきのみにして、さて、身づからは弁護の士との談合を手短かに済ませ、


戻り来たらば、ふたりして共にうち連れて、ひそかに障り所なく、有らん限りの事を残りなく語らはん心積もりなりしなり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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