ブラームスの四重奏 | 神鳥古賛のブログ

神鳥古賛のブログ

古典。読めば分かる。

ヨハネス・ブラームスの弦楽四重奏曲は三曲あり。

その第一番と第二番とは同じ作品番号五十一にして同時期の作品なるなり。

この二曲は共に大曲なれども、技巧を衒ひアイデアを誇るに重点あり、ジャズの如くにして論評し難きものあり。

技巧の論評にあらずして曲の心を褒めんと思ふものなれば、総合的詩情に欠くる作品は評価するを得ざるなり、但し大曲なるは疑ふべくもなし。

「弦楽四重奏曲第三番」は作品五十一の二年後に書かれ、先の作品より更に風格を備へて、ブラームスの弦楽四重奏曲の白眉なるべし。

殊に低音域を効果的に用ひて音色に広がりを持たせたるが、詩情を醸してゐたるなるべし。

第一楽章は軽快なる中にも哀愁をたゝへて主題を自在に操り、第二楽章の高音と低音との掛け合ひなどは哀切にして情味あり、三楽章は朗らに切々たりノスタルジックなり、第四楽章は情趣深きも平安に満ち希望に溢れゐたり。