バーバーの快挙 | 神鳥古賛のブログ

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古典。読めば分かる。

米国の作曲家、サミュエル・バーバーは「弦楽のためのアダージョ」を以て知られあり。

この曲は、バーバーの「弦楽四重奏曲第一番」を原曲とし、指揮者アルトゥーロ・トスカニーニの薦めによつて弦楽合奏版に編曲されしものなりき。

原曲の「弦楽四重奏曲第一番」は、作品全体としては小規模のものにしてさほど評価するものにあらず。

バーバーには他に交響曲二曲あり、また、ピアノ作品わづかにありき。

然るに、そのバーバーの唯一の「ピアノソナタ」は国際的に米国初のピアノソナタと認識されゐたるとぞ。

されど、米国初の草創期の作品なるとも、バーバーの「ピアノソナタ」はオリジナリティ溢るゝ円熟の名曲といふべし。

作品は大ピアニスト、ウラジーミル・ホロヴィッツに献呈されたるといひ、天下のヴィルトゥオーゾ、超絶技巧家なれば満を持したる作品たりしなるべし。

バーバーの「ピアノソナタ」は無調的前衛なす作品にして、その第一楽章は大胆かつ瑰麗にして、しかも、人をして惑はしむる事なき正調の音楽性に満ちたり。

第二楽章は前章の高音による高速の亀裂の如き第二主題を受けて、これを展開したるスケルツォ楽章なりき。

第三楽章は、その亀裂の如き懐疑的主題をアダージョを以て更に展開し、正調なすソナタ形式たるは深く印象付けらるゝ。

しかして、第四楽章の終楽章は快調もつてジャズ風にカタストロフィを形成せり。

この「ピアノソナタ」を以てバーバーの名は永遠不滅なるべし。