神鳥古賛のブログ

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古典。読めば分かる。

2021年衆院選に立候補、落選。
 リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。

その第三夜「神々の黄昏」より第二幕四場。

並み居る家臣らの奉祝を受けつゝ、グンターは自邸に戻り来ぬ、これに伴ひしブリユンヒルデは、そこにジークフリートあるを見て、いたく驚きぬ。









「神々の黄昏」 第二幕 四場

 




(家臣ら)


 幸きくませ、グンター矣。

 

 幸きくませ、爾が花嫁も矣。


 迎へまつる花嫁も矣。


 迎へまつる矣。



(グンター)


 ブリユンヒルデ、いと尊つとき女人を、


 伴なへるはや、此処ラインに。


 かく気高きをみなは


 嘗て得難けれ。


 このギビフングのうがらに、


 かゞふれる神々の御蔭、


 いと高き誉れへ


 今ぞ聳へ立て矣。



(家臣ら)


 幸きく矣。幸きくませ、


 栄行け、ギビフング矣。



(グンター)


 寿ぎ申す、懐かしの益荒男。


 寿がん、うつくしのいもとよ矣。


 爾が彼れに添へるを見るが嬉しき、


 爾を妻に得たりしな。


 二つの祝はれし夫婦(めをと)が


 見ゆるは、まばゆくも。


 ブリユンヒルデとグンター、


 グートルーネとジークフリート矣。



(男いくばく)


 何んぞや為せし。うつゝ無きかや。



(ジークフリート)


 何ど瞠る、ブリユンヒルデは目を。



(ブリユンヒルデ)


 ジークフリート…これに…矣。グートルーネ…。



(ジークフリート)


 グンターの優しいもと御よ。


 我れと連れ合ふ


 汝れとグンターの如。



(ブリユンヒルデ)


 身が…グンターと…。いつはりぞ矣。


 目ぞ眩までやは…


 ジークフリートが――我れを見分かず。

















 リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。


その第三夜「神々の黄昏」より第二幕三場。


ハーゲン、婚禮の支度を為せと家臣らに命じければ、家臣ら大きに喜び沸く、更にハーゲン、女主人に忠節を尽くし、不忠あらば復讐をと呼び掛く。










「神々の黄昏」 第二幕 三場

 




(ハーゲン)


 強き牡牛を

 

 屠(ほふ)り負(おほ)すべき。


 神祀る石に注げ


 ウオータンに、その血を矣。



(男ひとり)


 何、ハーゲン、その上何んと。



(男八たり)


 その上何んと。



(余四たり)


 何にせよと。



(全て)


 その上何んと。



(ハーゲン)


 猪(しゝ)ひとつを狩れかし


 祀るべく、フローを矣。


 逞しき牡山羊(をやぎ)を


 つんざきては、ドンナーに矣。


 羊なれども


 屠りては、フリツカに、


 深き睦びを祈(ね)ぎまつりて矣。



(男ふたり)


 けもの屠らば、


 更に何に為さん。



(余十六人)


 けもの屠らば、


 更に何に為さん。



(ハーゲン)


 その角のさかづき持ち、


 睦れる女らより


 蜜や葡萄の酒を


 ひたひたに満たせよ矣。



(男ら全て)


 角のさかづき手に、


 如何に為さんず。



(ハーゲン)


 あふり喰らへよ、


 酒に酔ひ痴れよ矣。


 すべて神を敬ひ、


 深き睦びを祈ぎまつれ矣。



(家臣ら)


 ハハハ…


 大き幸ち、安らぎが


 ゑ笑はんか、ラインに、


 かのハーゲンが、その酷(むご)きが、


 いと面白ければ矣。


 かのハーゲドルンの


 うばらに花も咲け、


 夫婦(めを)の仲立ちに


 宴げすとや。



(ハーゲン)


 ゑらくを治めよ、


 いさをしきをのこらよ矣。


 迎へよグンターの嫁矣。


 ブリユンヒルデの嫁入り。


 女あるじを敬へ、


 忠義を致せ。


 冦(あた)なふあらば、


 即ち罪なへ矣。



(家臣ら)


 幸(さ)きく矣。安く矣。


 迎へまつる矣。迎へまつる矣。


 迎へまつる矣。グンター矣。


 幸きく矣。安く矣。




















 リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。


その第三夜「神々の黄昏」より第二幕三場。


ハーゲン、角笛を吹き、家来達を呼び寄せければ、家来ら大挙して現る、劇中最も印象に残る、合唱を伴なふ一節。










「神々の黄昏」 第二幕 三場

 




(ハーゲン)


 ほいほお矣。ほいほお、ほおほお矣。

 

 ギービヒのをのこら、


 詣で来(こ)よ矣。


 集ひ来矣。集ひ来矣。


 つはもの来矣。つはもの来矣。


 国内(くぬち)のつはもの来矣。


 良きつはもの来矣。


 強きつはもの来、


 鋭きを、いくさに。


 迫り来(き)ぬるぞや矣。


 迫り来(く)矣。集ひ来矣。集ひ来矣。


 ほいほお矣。ほいほお、ほおほお矣。



(家臣ら)


 何んぞの角笛か。


 何ど募るいくさを。


 防ぎまつらんず。


 つはもの持て来んず。


 ハーゲン矣。ハーゲン矣。


 ほいほお矣。ほいほお矣。


 何んぞや迫り来ぬ。


 何んぞや迫り来ぬ。


 何んぞの敵か迫れる。


 誰そ争はんず。


 すはグンターや危ふし。


 つはもの持て来んず、


 堅く護らふ。


 ほいほお矣。ほお矣。ハーゲン矣。



(ハーゲン)


 堅く鎧ひて


 弛むなゆめ。


 グンターを迎へまつりぬ、


 そが妻を娶れるを。



(家臣ら)


 危ふきにありや。


 仇た迫れるや。



(ハーゲン)


 さる神懸(かむが)かれるをみなを


 連れ帰り来ん。



(家臣ら)


 追ふや荒し男の


 おぞましき仇たが。



(ハーゲン)


 ひとりのみ渡らふ、


 追ひ及く者なく。



(家臣ら)


 さらば克ちしか悩みに。


 さらば克ちしかいくさに。


 それ言告げよ矣。



(ハーゲン)


 かのをろちを退治たるが


 悩みを退けり。


 ジークフリートとふ益荒猛男が


 救ひとなれり矣。



(男ひとり)


 何にか為すべき、いくさらは。



(余十たり)


 何に助くそのいくさらは。







 












 リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。


その第三夜「神々の黄昏」より第二幕二場。


グートルーネ、求婚の夜るのジークフリートとブリユンヒルデの関係をいぶかりぬ、二人のあひだを剣のノートングが隔てしと、これを示唆すれど明示はせず。









「神々の黄昏」 第二幕 二場

 




(グートルーネ)


 思ひしや、ブリユンヒルデは汝れをグンターと。



(ジークフリート)

 

 異ならじな、かしらの上(へ)も、


 隱れ兜や効きし、


 それハーゲンの指示の如し。



(ハーゲン)


 良き事教へしかな。



(グートルーネ)


 さて、せめぎしや、いさをしきをみなを。



(ジークフリート)


 従へし――グンターの力が。



(グートルーネ)


 さても妻(め)まぎね、汝れこそは。



(ジークフリート)


 その夫(つま)にまつらひぬブリユンヒルデは。


 新枕のその夜るを。



(グートルーネ)


 その夫ながら、さりながら、汝がなれ。



(ジークフリート)


 添ひぬ、グートルーネのそばにジークフリートは。



(グートルーネ)


 されど、まこと添ひしはブリユンヒルデにや。



(ジークフリート)


 ひんがしと、西の、中は斬つた(北)。


 添ひしかど――それブリユンヒルデとは離(さか)れり。



(グートルーネ)


 汝れよりグンターへ、如何に渡せし。



(ジークフリート)


 火は消えかゝる、かつての炎も、


 朝靄のうちを岩山より


 ふたり行く、谷へと。


 岸の辺に近づくや、


 即ち其処にて


 入れ替はる、グンターと我れと。


 くはし細工物の効験に


 願ふや我れ、即ち此処に。


 行く河の疾風(はやち)に吹かれ


 花嫁はラインをのぼる、


 されば備へせよ、うたげの矣。



(グートルーネ)


 ジークフリート、ほしいまゝなる人矣。


 汝れに恐れを覚ゆ矣。



(ハーゲン)


 遠きほどにはや帆が見ゆ。



(ジークフリート)


 伝へびとを言祝ぎね矣。



(グートルーネ)


 をみなを迎へん暖かに、


 朗らに愉しく過ごさんに矣。


 汝れ、ハーゲン、呼び


 寄せよをのこらを


 そのギービヒの花の宴に矣。


 咲き匂ふをみならは


 我れが呼ばめ、うたげに、


 花めきて慕ひなん。


 休みませ、いけずの猛男。



(ジークフリート)


 汝が力とならんに、ひと休み。 



















 リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。

その第三夜「神々の黄昏」より第二幕二場。

夜の明け行くや、ジークフリート、単身ギービヒの館へ帰り来たり、ハーゲンとグートルーネに事の経緯を告げぬ。




 





「神々の黄昏」 第二幕 二場

 




(ジークフリート)


 ほいほお、ハーゲン矣。

 

 侘びし男(を)の矣。


 来るが見ゆるや。



(ハーゲン)


 へい、ジークフリート。


 すはや、素早き猛男。


 いづく天飛(あまだ)む。



(ジークフリート)


 それブリユンヒルデの岩ぞ矣。


 彼処にひと息吸ひて、


 呼び掛くるや即ち、


 さばかり速き走りなりし矣。


 いと長閑やかに参れ、嫁婿は、


 舟漕ぎ、やがて至れ矣。



(ハーゲン)


 ねぢ伏せしか、ブリユンヒルデを。



(ジークフリート)


 在るや、グートルーネは。



(ハーゲン)


 ほいほお、グートルーネ、


 此ち来たれ矣。


 ジークフリートぞ此れ、


 何にたゆたひゐる。



(ジークフリート)


 ふたりに語つて聞かさん、


 妻問ひ、ブリユンヒルデの巻を。


 熱き我れを迎へね、


 ギービヒが子矣。


 良き春告げ鳥よ是れ。



(グートルーネ)


 フライアは言寿(ことほ)ぎぬ


 かむろみの名もめでたく矣。



(ジークフリート)


 勝利の女神なら


 祝ひ給へ、


 妻を勝ち得し我れを。



(グートルーネ)


 さらば兄はブリユンヒルデと結ばれしや。



(ジークフリート)


 たはやすくをみなを娶りしか。



(グートルーネ)


 炎にや焼かれもせずに。



(ジークフリート)


 彼れとても火傷もせざれ、


 されど我が越えける、彼れが為に、


 唯だに汝れを婚(ま)かばやとて。



(グートルーネ)


 さても事無きや。



(ジークフリート)


 まさに恋ひ焦がるゝ歓びよ。