リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。
その第三夜「神々の黄昏」より第三幕一場。
ジークフリート、ライン河の精なる娘らに脅されしを憎みて指環の返還を固辞せる、娘ら、ジークフリートの死と指環のブリユンヒルデへの相続を予言して去る。
「神々の黄昏」 第三幕 一場
(ジークフリート)
我がつるぎは砕きつる、さる槍を。
その太古の法りなる
とこしへの綱に、
編み込まれけん
荒けなき呪ひも、
悩遁は絶ち切らんず、ノルンのなぞ矣。
その呪ひを嘗て
戒めけん、さるをろちが、
されど恐れすら教へられざりけり矣。
世界を受け継が
しめんとする此の指環。
愛の恵みには
替はるもの無し。
我が給へ、汝が情けを交はさば。
されど命や身が危ふきとか。
指ひとつにも
価ひせざらん、
この指環は捕らるまじき矣。
何故と云へ、身も命も、
見よ――そら――
遠くへ擲つ我れなれば矣。
(ラインの娘ら)
行かん、姉妹(おとゝい)矣。
うつけは措いて矣。
いと賢(さか)し、いと強しと
しか思へる猛男ぞ、
縛られて、盲ひたる、あはれ彼れ。
誓ひを立てし彼れは――
それ軽んずれ矣。
ルーネの奇しきを知るに――
それ重んぜざる矣。
(フロースヒルデ、次にウオークリンデ)
いと畏き賜物に
与りける。
(三たり)
それ捨て去つて、
顧みざる。
(フロースヒルデ)
指環のみを――
(ウエルグンデ)
死をもたらすに――
(三たり)
後生大事にすれ矣。
左様なら、ジークフリート矣。
気高きをみなが
けふにも其の禍つひを受け継がん。
聡きをみなこそ良けれ。
それよ矣。それよ矣。
わあい、やあ、らあ、らあ、
らいや、わら、らあ、らあ。
(ジークフリート)
をかにゐても水漬きても
女の性(さが)を学べり。
おだてに乗らざる者には、
脅して怖れさせんとす。
強く抗はんか、
挙げ句には口争ひぞ。
さは云へど、
背かずば、グートルーネとの契りに、
艶めきし女のひとりを
手懐けんに、可惜(あたら)女を矣。

















