神鳥古賛のブログ

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古典。読めば分かる。

2021年衆院選に立候補、落選。

 リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。


その第三夜「神々の黄昏」より第三幕一場。


ジークフリート、ライン河の精なる娘らに脅されしを憎みて指環の返還を固辞せる、娘ら、ジークフリートの死と指環のブリユンヒルデへの相続を予言して去る。










「神々の黄昏」 第三幕 一場

 




(ジークフリート)


 我がつるぎは砕きつる、さる槍を。


 その太古の法りなる


 とこしへの綱に、


 編み込まれけん


 荒けなき呪ひも、


 悩遁は絶ち切らんず、ノルンのなぞ矣。


 その呪ひを嘗て


 戒めけん、さるをろちが、


 されど恐れすら教へられざりけり矣。


 世界を受け継が


 しめんとする此の指環。


 愛の恵みには


 替はるもの無し。


 我が給へ、汝が情けを交はさば。


 されど命や身が危ふきとか。


 指ひとつにも


 価ひせざらん、


 この指環は捕らるまじき矣。


 何故と云へ、身も命も、


 見よ――そら――


 遠くへ擲つ我れなれば矣。



(ラインの娘ら)


 行かん、姉妹(おとゝい)矣。


 うつけは措いて矣。


 いと賢(さか)し、いと強しと


 しか思へる猛男ぞ、


 縛られて、盲ひたる、あはれ彼れ。


 誓ひを立てし彼れは――


 それ軽んずれ矣。


 ルーネの奇しきを知るに――


 それ重んぜざる矣。



(フロースヒルデ、次にウオークリンデ)


 いと畏き賜物に


 与りける。



(三たり)


 それ捨て去つて、


 顧みざる。



(フロースヒルデ)


 指環のみを――



(ウエルグンデ)


 死をもたらすに――



(三たり)


 後生大事にすれ矣。


 左様なら、ジークフリート矣。


 気高きをみなが


 けふにも其の禍つひを受け継がん。


 聡きをみなこそ良けれ。


 それよ矣。それよ矣。


 わあい、やあ、らあ、らあ、


 らいや、わら、らあ、らあ。



(ジークフリート)


 をかにゐても水漬きても


 女の性(さが)を学べり。


 おだてに乗らざる者には、


 脅して怖れさせんとす。


 強く抗はんか、


 挙げ句には口争ひぞ。


 さは云へど、


 背かずば、グートルーネとの契りに、


 艶めきし女のひとりを


 手懐けんに、可惜(あたら)女を矣。





















 リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。


その第三夜「神々の黄昏」より第三幕一場。


ライン河の精なる娘ら三たり、ニーベルングの指環に込められし呪ひによつて、今日にもジークフリートは死すと云ふ、されど、彼れ物ともせず。









「神々の黄昏」 第三幕 一場

 




(フロースヒルデ)


 留め置きね、猛男よ、


 しかと握り締めて、


 災ひに思ひ至るまで――



(ウオークリンデ、ウエルグンデ)


 汝が真愛しの指環の。



(三たり)


 嬉しとや思ぼすらん、


 我れらが呪ひを解きし時。



(ジークフリート)


 いざ歌へよ、聴かうず矣。



(ラインの娘ら)


 ジークフリート矣。ジークフリート矣。


 爾に禍事ありなん。



(ウエルグンデ)


 爾の災ひをこそ


 祕めたる指環ぞも矣。



(三たり)


 それやラインの黄金より


 ほむら燃やせり。



(ウエルグンデ)


 あざとく巧み出だし


 恥ぢしめられ失へる――



(三たり)


 そが呪ひは、


 悠か末の世まで


 死に至らしむる


 欺きし輩を。



(フロースヒルデ)


 斃しゝな、をろちを――



(ウエルグンデ、フロースヒルデ)


 即ち爾も殪る――



(三たり)


 そはけふにも。


 我れら斯くは諭せ、


 我れらに指環を取らせじとなら――



(ウエルグンデ、フロースヒルデ)


 深みなるラインの流れに沈めね。



(三たり)


 その大水にのみ


 呪ひは雪がるゝ矣。



(ジークフリート)


 あくどき女どもや、


 云はぬが良い矣。


 爾らのお世辞は愚か、


 威しには尚の事懼ぢざる矣。



(ラインの娘ら)


 ジークフリート矣。ジークフリート矣。


 まことの事こそ云へ。


 避けよ、避けよ、呪ひを矣。


 それ縒り合はされし


 夜毎紡ぐノルンの


 太古のさだめの綱に矣。




















 リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。


その第三夜「神々の黄昏」より第三幕一場。


ライン河の精なる娘三たり、ジークフリートにニーベルングの指環を請へど、彼れ是を惜しむ、されど嘲られたるによつて、是を手放さんと即断なせり。









「神々の黄昏」 第三幕 一場

 




(ウオークリンデ)


 ジークフリート、何に給(たも)る、


 その獣差し出ださば。



(ジークフリート)


 未だ獲物も無し、


 されば問はん、何にをか望む。



(ウエルグンデ)


 こがね色の指環が


 およびに輝ける矣。



(娘三たり)


 それ給もれ矣。



(ジークフリート)


 ある大いなるをろちを


 斃せしにまつはる指環ぞ。


 醜(しこ)の熊の爪などゝ


 引き換へん事あるべきか。



(ウオークリンデ)


 しわいお人や。



(ウエルグンデ)


 しみたれておりやる。



(フロースヒルデ)


 気前よく


 あれかし、女には。



(ジークフリート)


 爾らに家財を与へなば、


 思ふに妻に叱られめ。



(フロースヒルデ)


 妻や恐き。


 

(ウエルグンデ)


 打ち叩くや。


 

(ウオークリンデ)


 はやはたかれしと覚ゆれ矣。


 

(ジークフリート)


 笑はゞ笑へよ矣。


 哀しみに沈むが落ちぞ。


 そのいたく欲りする指環は、


 罔象(みづは)どもには与ふまじ矣。


 

(フロースヒルデ)


 いと美し矣。


 

(ウエルグンデ)


 いとたくまし矣。


 

(ウオークリンデ)


 いときらめきし矣。



(三たり)


 うれたきかな、しみたれしが矣。


 

(ジークフリート)


 かくも徒だなる


 称へ言こそ無けれ。


 あなづられてやおくべき。


 ふたゝび水辺に


 来たりなば、


 指環なんどは放らめ。


 へい矣。へゝい矣。愛敬なの


 河原者ら矣。


 疾く来たれ矣。取らせん指環を矣。


 
















 リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。


その第三夜「神々の黄昏」より第三幕一場。


ライン河の精なる娘三たり、ラインの河畔に歌ひつゝ、失はれしラインの黄金をいとほしむ、かゝる処へ、ジークフリート、獲物狩らんとて現る。










「神々の黄昏」 第三幕 一場

 




(ラインの娘三たり)


 お日さまや


 あまねく光照らせど、


 夜るは暗む闇に。


 かつて明かゝりし、


 貴(あ)てに誇りかに


 父の黄金がうちに輝けば。


 ラインの


 清らなる黄金矣。


 かつてはまばゆかりしかな、


 貴てなる星にも紛ひ矣。


 わあい、やあ、らあ、らあ、


 わあい、やあ、らあ、らあ。


 お日さまよ、


 益荒男を招(を)きね、


 それ黄金を返さしむべく矣。


 彼れが解き分かば、


 汝がまぶし瞳を


 羨みはせざる我れらよ。


 ラインの


 清らなる黄金矣。


 いつかは光放たな、


 澄める星と清まり矣。



(ウオークリンデ)


 彼れの角笛よ。


 

(ウエルグンデ)


 益荒猛男来ぬる。



(フロースヒルデ)


 語らひ寄らなん矣。


 

(ジークフリート)


 悪しきあやかしの迷はしか、


 獲物見失ひてゝん。


 山彦や、いづれの山に


 獣を隱し負ほせる。


 

(ラインの娘三たり)


 ジークフリート矣。


 

(フロースヒルデ)


 何にをか地に怒鳴る。



(ウエルグンデ)


 いづれのあやかしをか恨む。


 

(ウオークリンデ)


 蠱物(まじもの)にや誑かされたる。


 

(三たり)


 何にと、ジークフリート、何にと矣。


 

(ジークフリート)


 けだものゝ連れ合ひなりしかな


 失せてんげれ、


 魅入れたるや。


 囲ひ者とあらば、


 愉しきをみならに


 譲るべし。
























 リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。


その第三夜「神々の黄昏」より第二幕五場。


ブリユンヒルデ、グンター、ハーゲンの思はく一致して、明日の狩りにて、事故を装ひ、ジークフリートを討たんと決意する、その三重唱にて幕。









「神々の黄昏」 第二幕 五場

 




(ブリユンヒルデ)


 彼れぞ裏切れ、


 また我れを裏切れる爾らぞ矣。


 我れに償ふに、


 この世の全ての血を


 流すとも其の罪消ゆるかは矣。


 されど一人が死なば


 全てに代はれ、


 ジークフリートを斃さば


 償ひとなれ、爾らにも彼れにも矣。



(ハーゲン)


 彼れを討たば――爾救はれん矣。


 おぎろなき力に与りぬれ、


 彼れの指環を得なば、


 さてこそ死をもつて代へんのみ。



(グンター)


 ブリユンヒルデの指環を。



(ハーゲン)


 それニーベルングの至宝よ。



(グンター)


 さすればジークフリートは殪る矣。



(ハーゲン)


 我れら全てを利する、彼れが死ぞ。



(グンター)


 されど、グートルーネ、あゝ、


 彼れに嫁がせたり矣。


 我れらが其の夫(つま)を罪なはゞ、


 如何に面目も無からん。



(ブリユンヒルデ)


 何かは諭せる我が智慧や。


 何かは導く我が霊(くし)び。


 むごき悲しみのうちに


 今ぞ明らかなる。


 グートルーネなる祕めし蠱業(まじわざ)もて、


 我が夫に魅入りけれ矣。


 禍神(まがゝみ)よ憑け矣。



(ハーゲン)


 その死を悲しむべくんば、


 戮(りく)するは隱さへ。


 狩りを催さん


 明日朝まだきより。


 逸り男は先駆け行かん、


 猪(しゝ)に殺められて、などゝ云へ。



(グンター、ブリユンヒルデ)


 (さうさう)さあるべき矣。


 ジークフリートを斃せ矣。


 恥ぢを雪げ、


 彼れが齎せし矣。


 契りのまことを


 彼れが裏切れ。


 血をもて償はせ


 責めを果たさせめ矣。


 荒神(あらがみ)よ天降(あも)りて、


 報いを下だせ矣。


 誓ひを破るは


 まことの廃り矣。


 ウオータンよ矣。


 見そなはせ矣。


 ゆゝしくも畏き


 うごなはるみ民に、


 聞こえさせね


 仇報ぜんと矣。



(ハーゲン)


 命も尽きよ、


 まばゆき益荒男の矣。


 我れが宝は、


 我が持つべきぞ。


 されば指環をば


 奪ひ取らなん。


 あやかしの父よ、


 身罷りし盟主矣。


 夜るのみかど矣。


 ニーベルングのあるじ矣。


 アルベリヒ矣。


 まぼらひませ矣。


 おほみこと宣れ


 そのニーベルングのみいくさに、


 爾に従へと、


 指環のあるじよ矣。