リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。
その第三夜「神々の黄昏」より第三幕二場。
ハーゲン、度々小鳥の歌の話を持ち出だし、ジークフリートを促すに、彼れはグンターの気を引かんとて、小鳥の歌にまつはる己が武勇伝を歌ひ始む。
「神々の黄昏」 第三幕 二場
(グンター)
混ぜけるは濁り病める
爾の血ばかりかな矣。
(ジークフリート)
されば汝れのと混ぜ合はせん矣。
混ざりて溢れ出でしか。
母なる大地にも
良き一献傾けつれ矣。
(グンター)
いと浮かれし猛男や矣。
(ジークフリート)
思ひ病むや、ブリユンヒルデの事を。
(ハーゲン)
わきまへぬれば良きに、
汝(いま)しが小鳥の歌の如矣。
(ジークフリート)
をみならの歌ふを聞きてより、
絶えて小鳥は忘れつ。
(ハーゲン)
されど嘗てや聞きし。
(ジークフリート)
はい、グンター、
もの憂げなる人よ矣。
思ひ晴らせよ、
歌はん、物語を
我が在りし日の。
(グンター)
喜びて伺はん。
(ハーゲン)
さらば歌へ、猛男よ矣。
(ジークフリート)
ミーメと云ふ
こちたき矮人(わいじん)ありき。
妬みに駆られて
我れをば育てつ、
いつか其の子が、
猛く生ひ為らば、
をろちを斃せ、森に、
蟠り守れる、さる宝の。
彼れが我れに教へたる
鋳物と鍛冶を。
されど、その親方の
得為さゞりしを、
弟子の力もて
果たさねばならず。
破(や)れし鋼を粉なにして
新たにつるぎを鍛へんと。
父のつはものを
再び継がんと。
鍛へに鍛へし、これぞ我が悩遁。
これ幸ひと
見て取つたる矮人。
連れ行きぬ、さても森へと。
それにて斃せる、フアーフナーを、そのをろちを。


















