このドラマを見たのは数か月前だ。当時、ニュース番組で、今一番ストリーミングされているドラマ、ということで紹介されていて、表紙やタイトルだけ見ても何の話なのか全く分からなかったので、何の話だろう?熊の話でそんなに人気が出るドラマってどんな話なんだろう?と思いながら見始めた。Huluでストリーミング中。(もちろん、タイトルは熊、という意味。でも、特定のクマ、という意味の、Theがついているので、誰の事だろう?と。)

このドラマはずっと継続して人気があるらしく、この前ゴールデングローブの候補が発表されたけど、推薦されたドラマにはSuccession、Only Murder In the Building、The Crown(最近のはまだ観てない)、この前ブログを書いた1923などもあって、あとこのドラマもあった。この前ABCテレビで、ABCが思うところの、2023のベストランキング番組をやっていて、ベストドラマとして言われていたのが、Succession、Only Murder In the Building、The Bearだった。

 Succession は有名で、エミー賞も取っているんだけど、どうしても、お金持ちの人がもっとお金持ちになる話はあまり興味なくて、いまだに見ていない。ビジネスや、銀行、金融の話はもともとあまり興味ない。だから私はお金持ちには縁がないのかもしれない。でもそんなに面白いなら、Successionいつか見てみようかな。歴代で最高のドラマの一つ、なんていう評価も聞くし。

 話はそれるが、同じビジネス系のドラマで、Billionsというのもある。これは、HomelandのDamian Lewisが主役のドラマで、Billionsもノミネートこそされていないが、結構面白いらしい。それでちょっと見てみたけど、やっぱりあまり面白いとは思わなかった。でも見たいドラマ全部見つくしてしまったら、見てみようと思う。

 

BillionsのDamian Lewis

 

 The Bearは、まず何の話か言ったら、タイトルも少しはわかりやすいかもしれない。まず、テーマとしては、料理とレストラン。家族愛、職場の仲間・同僚同士の信頼関係。下から上にのし上がっていく。つぶれそうな事業を立て直す、といったところだ。シリアスだけど、ユーモアもあって、心温まる話。ゴールデングローブでも、一応コメディーとしてノミネートされている。でも、フレンズとか、サインフェルドみたいなコメディーじゃない。もっと深刻なドラマだ。

 ニューヨークで世界的に有名なシェフコンテストで優勝し、国連ビルのそばにある三ツ星レストランで若手シェフとして働いて、世界の要人に料理を提供していたシェフ、カーミーが、兄が経営していた、シカゴのダウンタウンにある、小さなサンドイッチショップに帰ってきた。兄が自殺して、店をカーミーに残したからだ。

 

Carmy

 

 小さいころから親分肌で、カリズマ性のあった兄。高校時代はフットボール選手で、女の子にはモテモテ。部屋に入ると皆がわっと兄を取り巻いて、それににこにこ応じて、光り輝いていた兄。親も親戚も兄が自慢だった。それに比べてカーミーは大人しくて、地味で、女の子にもてるわけでもない、あまり目立たない存在だったが、兄が大好きで、そんなことは気にならなかった。むしろ、こんな兄を持って、鼻高々で、自慢だった。兄も面倒見がよくて、弟のカーミーをかわいがってくれた。

 兄は料理が得意で、家族に代々伝わるレシピを難なくこなし、あまりにも評判がいいので、サンドイッチショップを開いた。そこのサンドイッチはシカゴのダウンタウンの名物で、毎日行列ができるほどだった。血筋なのか、あこがれの兄をまねてカーミーも料理をはじめたら、上手だった。地元では兄が活躍してカーミーは陰の存在だったから、彼は町を出て、腕試しにニューヨークに修行に行った。それから、腕を見初められて、ミシェラン星レストランで取り上げられるようになり、修行を積ませてもらって、ヨーロッパに料理留学などもして、ニューヨークに戻ってきてコンテストで優勝した、というわけだ。彼は料理雑誌に写真が載ったり、一躍有名シェフになった。

 その時コロナになった。好評だったサンドイッチショップはおおくのレストラン同様、たちまち経営難に陥ったが、どうやらやって行っているようだった。コロナが終わってから見ると、シカゴでは多くのレストランがコロナの間は何とか生き延びたけど、その後持ちこたえられなくなり、ドアを閉じた。兄のショップは何とか閉店もせず、持ちこたえているようだった。

 

お兄さん、Mike

 

 カーミーがトップシェフとして働いていたニューヨークのレストランは、コロナで打撃は被ったものの、経営難に陥るまでは行かなかった。ニューヨークの一等地にある名門レストランは、オーダーが減ったといえども、それなりに経営し続けていた。コロナが終わって、客足もまた元に戻り、カーミーは元通り、そこのシェフとして忙しい毎日を送っていた。そこに突然、兄が自殺したという知らせを受けた。店をカーミーに残す、という遺書があったという。カーミーは即レストランを辞め、自分が得たすべての名誉も、地位も捨て、兄が残したショップを継ぐためにシカゴに戻った。

ドラマはここから始まる。

 

 The Bearsとは、高校時代にカーミー一族に付けられたあだ名だ。地元では兄のマイクをはじめ、有名な家族だったので、地元の人たちや、周りの生徒たちは愛情をこめて、彼らをThe Bearsと呼んだ。名字がBerzattoなので、発音がBearに似ているからか、彼らが熊のような人たちだからなのかは、私がよく聞いてなかったからか、もともと説明がなかったのか、忘れちゃったからなのか、わからない。

 カーミーがシカゴに戻ったときは、サンドイッチショップは「シカゴ名物、ビーフサンドイッチショップ、ザ・ビーフ」という店名だった。カーミーが戻ってふたを開けてみると、兄が経営していた、ザ・ビーフは相当な経営難で、兄は裕福な叔父から大金を借りて、返せないでいた。このままでは倒産必至という状態だった。借り入れた金はどこに行ったのか?使い込んでしまったのか?だから兄は自殺したのか?お兄さんの自殺の原因は最後までわからない。

 兄は親友リッチーと共同経営していたが、兄が亡き後、リッチーが一人でレストランを切り盛りしていた。カーミーが戻ってみると、リッチーはレストラン経営のことは何も知らないし、大した料理人でもないことを知った。そこにいたスタッフもちゃんと料理の訓練を受けた人は誰もいなかった。なので、「ザ・ビーフ」が販売していたサンドイッチの味も大したことがなかった。こんな状態だったが、カーミーはどうしても兄のレストランを一から建て直し、立派なレストランにしたかった。

 

Richie. レストラン経営のことも料理のことも何も知らなかった。

 

 カーミーは、カーミーの名声を知って、雇ってほしいと言ってきた、地元の名門料理学校を卒業したばかりの若い女性、シドニーを雇って、アシスタント役を任せることにした。この女性はのち、カーミーがレストランを経営するうえで、なくてはならないパートナーになる。スタッフもくびにするのではなく、シドニーに任せて訓練した。そして資金。肝心の資金はどうするか?兄は大金を借りこんでいたが、それを使うのではなく、隠しておいた。そして自分は自殺した。カーミーにこっそり置手紙を残して、金の隠し場所を教えた。手紙には「思いっきりやれ」とだけ書いてあった。

こうしてカーミーは、兄の意志をついで、つぶれかけていたサンドイッチショップを一流レストランに建て直す資金を得た。新しいレストランの名前をThe Bearという。一族を指す複数のThe Bearsではなく、単一The Bearだ。カーミーのことである。(それとも兄の事かな?)カーミーが一族を代表してこの一流レストランを経営する、という意気込みがこもった店名だ。

ざっとこういう話だ。

 

Sydney. この女優さんは、このドラマの役でゴールデングローブ助演女優賞にノミネートされ、今注目の人となっている。

 

大好きだった兄の遺志を継ぐべく、兄のものだった、つぶれかけていた小さな店を一流のレストランに建て直そうとする男性の熱意と、底力と、それをあきらめて辞めず、我慢強く耐えてついて行き、精進して、マスターシェフ(カーミー)を支えて、一介の小さなサンドイッチショップを一流レストランにしたスタッフの話だ。レストランが建て直される頃には、カーミーと、シドニーをはじめスタッフたちは職場の同僚や仲間という関係を越えて、家族になっていた。

 

このドラマがなぜアメリカ人にうけたのか、わかる気がする。アメリカでは今、料理とか、グルメが流行っていて、日本人みたいに、おいしいものを追求したり、自分で作ってみたりする人が増えている。このドラマでは、ストーリーも追っているけれど、今あるイマイチのビーフサンドイッチをおいしくする方法だとか、レストランで出す美味しいパンの焼き方だとか、ヨーロッパの留学先で習得した料理の調理法だとか、シドニーが考案した新しい料理を作っているところとかも映していて、見ている方も、ほ~こういう風にやるのか、と参考にしながら見ることができる。見ていて、おいしそう、とか、やってみよう、とか思うシーンがたくさん出てくる。

あとレストランの裏方を見ることができる。例えばマスターシェフが皆に号令をかけるように指示を出し、皆「わかりました、シェフ!」と同時に返事をしなければならない。予約が入っているお客さんの好みや、扱い方の説明をしたり。(だから予約を入れるってことは大事なんだ)どんなものを作る担当でも、必ず皆お互いを「シェフ」と呼ぶ。「シェフ、これをかき混ぜてください。」「はい、わかりました、シェフ」という具合だ。このようにして、お互いを尊重しあい、上下関係がない。みな平等だ。あと、「後ろをとおります!」とか、「手に何々を持ってます!」とか、掛け声をかける。そういうのは、表にいるお客さんには見えないので、客しかやったことのない私にとっては面白かった。まるで、お客さんが食べてるところが表舞台でスタッフのいるところが裏舞台のようだ。この、礼儀というのは、訓練を受けている人ほどしっかり実行している。ドラマの中では、キッチンでは、カーミーと、シドニーが一番礼儀正しい。キッチンから出ると皆普段着の顔になって、普通の会話をする。

カーミーや、シドニーが家に戻ると、くたくたになっていて、手っ取り早く食べたい、という事で、アメリカでは貧しい家庭で育った人(だと思う?)が食べるピーナツバターとジャムのサンドイッチや、甘いシリアル、カップラーメン(だったと思う)などを食べるというのも見てて面白かった。

それから、ヨーロッパに修行に行って、こんなことをするのか、と思って、面白かった。

 

キッチンから出て普段着に着替えると、お互いの関係も普段着になる。

 

ドラマ全体的には、私はいつもストーリー重視なので、ストーリー的には特別感動した、というわけではなかった。端的に言うと経営破綻していたレストランを立て直す、という話なので、検査パスしない、とか、冷蔵庫のサイズが合わない、とか、これ全部買っちゃったけど、検査パスしなかったから無駄遣いしちゃった、お金使い果たしちゃった、どうしようとかいう事がドラマになっているので、こんなに大げさにいう事もないかな、と思った。ただ総合点が高いのかな、と思ったのは、ストーリーもそこそこ感動的だし、たまにクスッと笑えるセリフや、場面もあり、参考になる料理法も見れるし、レストランの裏方をみれて珍しいし、色々盛沢山だった。今までここまでレストランのことをリアルに詳しく見せてくれたドラマは無かった気がするので、それはアメリカ人にとっては目新しかったかもしれない。

 

あと、これはこのドラマが有名になってからのことだと思うけど、このドラマには有名な俳優さんが結構出てくる。

リッチーの派遣先のレストランのオーナー役、オリビア・コールマンとか、

 

カーミーに随分同情的なおば役、Sara Paulsonとか、

 

Saul Goodman役で有名な、Bob Odenkirkはカーミーのお母さんのBF役。お金目当てで、カーミー一家に嫌われている。

 

そして、極めつけが、カーミーのハチャメチャな母親役を演じるJamie Lee Curtis.

 

皆このドラマが有名になってから出てきている気がする。こういった、今ちょっと忘れられている(と思う)大物俳優が、無名俳優ばかりが出ているドラマがヒットしたら、人気にあやかって便乗出演するみたいなのは、ちょっと欲張りな気がするなあ。(Bob Odenkirkは今有名なので、例外)見ている方は、「え?この人もしかして?」って無名な人ばかりのドラマに突然(私にとって)超有名な人が現れて、驚く、というか、へえ、こんな人が出るんだから、このドラマ売れてるんだな、とか、やっぱり演技上手だなあ、と思って突然ドラマの格が上がって見えるけど、売れない時から一生懸命に出演している俳優さんがハイジャックされてるように見えて気の毒に、と思ってしまう。多分ギャラも全然違うんだろうし。有名俳優はちょっと出ただけで、レギュラーの無名俳優さん達より何倍ももらえるんだと思う。

でも、Jamie Lee Curtisはかなり出ていたし、熱演だったと思うけど。

 

今はシーズン3まであるが、未だに人気が衰えないので、これからも続くんじゃないかな。