このドラマはShowtimeでストリーミングしている、Breaking BadのBryan Cranstonが主役のドラマ。

クランストンが高名な裁判官役だ。アメリカでは、法廷で裁判官に話すときに、Your Honor、と呼ぶ。だから、無理に訳すとすれば、「裁判官」というタイトルだ。

今見始めたばかりなのだが、物語の設定が面白いので、ブログに書くことにした。この裁判官の奥さんは何年も前に悲劇的な死に方をしていて、彼と、彼の一人息子はまだ立ち直れないでいる。彼の息子は体が弱くて、ぜんそく持ちで、心が繊細。お母さんが死んだときは何時間も悲鳴を上げて泣き、深い悲しみから立ち直れないのではないか、と判事は心配していた。その息子も成長した。

母の命日に、息子は母の写真を写真立てに入れて、母が死んだゲットーに花束とともにお供えしてきた。そこは治安の悪いところで、白人の彼を見つけて、周りの黒人の男たちが彼を追いかけ始めた。息子は慌てて車に乗った。逃げようと思ったが、パニックして道に迷ってしまった。と同時に、喘息の発作が起こった。インヘーラーを吸おうとしたら、慌てて車の床に落としてしまって、手探りでつかもうとしたが見つからない。やっぱり実際に見ないとだめだ。息が苦しい。足元を見ようと一瞬道路から目を離した。すると、偶然そこを走っていたオートバイと正面衝突してしまった。オートバイに乗っていた人は飛び上がって道路に落ちた。息子は、まだインヘーラーが見つかっておらず、ぜんそくを起こしながら車から出て、道路に投げ出された男の様子を見に行った。それは、彼と同じぐらいの若者で、頭を縁石の角で打って、頭から大量の血を流していた。足は不自然な形にひん曲がっていた。それを見て、息子はますますパニックし、今度こそ息ができなくなって、顔が真っ青になった。息子はすぐ父親に携帯をかけた。しかし、相変わらず録音されたメッセージしか出なかった。そのまま切った。あてた若者はまだ生きていて、息がピーピー言っていた。何か言いたそうに、彼の目を見て口をパクパク動かしていた。息子は聞こうとして耳を近づけたが、若者はどっと血を吐いた。息子は息が詰まりそうになりながら、911を押した。コールセンターの人が出たが、息ができないので、声が出なかった。彼は説明しようと、インヘーラーを取りに車に戻ろうとしたが、彼も窒息しそうだったので、はって行った。ここで、息子は若者を置き去りにした。

やっと車まではって戻って、床に落ちているインヘーラーを見つけて、吸った。息ができるようになって、元に戻ったが、若者はもうじき死にそうだった。息子は怖くなって逃げた。911をかけた携帯は川に投げ捨てた。

 

息子Adam

 

家に戻って、慌てて血の付いた服を洗濯した。息子は血の付いたものを全部水で洗ってごみ袋に入れて、ごみ箱に捨てた。

 

家で落ち込んでいると、父が帰ってきた。父に正直に人を轢いて、そのまま逃げてきたことを告白した。判事は息子の弁護をしっかりするから、警察に出頭しようといった。息子も当然そうするものだとばかり、立ち上がり、二人は車に乗って警察まで行った。判事は知り合いの刑事に事前に電話を入れた。だが用件は言わなかった。

 

二人は車に乗って警察まで行った。判事は自分が先に入って、知り合いの刑事に事情を話してから、息子を警察の建物に入れるつもりで、息子をそのまま車の中で待たせた。警察署に入ると、ただならぬ雰囲気。廊下を見ると、中年の女性がふらふらと部屋から出てきて、号泣し始めた。すぐ、息子が轢いた若者の母親だということが分かった。判事はとっさに躊躇した。その女性の嘆き方が相当激しかったからだ。ここに息子を出頭させたらどうなるか。その後ろから、主人と思える男性が部屋から出てきて、女性の肩を抱いた。判事は男性の顔を見てハッとなった。州で史上一番凶暴と言われているマフィアのボスだったからだ。判事は自分の顔を見られる前に警察署から抜け出した。

 

戻ってきた父親の姿を見て、息子は車から出た。「早く車の中に戻れ!」足早に走ってきた父親が息子に言った。「え?でも僕自首するんじゃなかったの?」息子は動揺して聞いた。すっかり覚悟はできていた。自分は人を殺して、置き去りにした。罪は償わなければならない。息子の顔はむしろさばさばしていた。ところが父は車に戻れという。出頭するなという。「どうしたの?」「いいか、よく聞け。お前が轢いたのは、史上最も暴力的だと言われているマフィア組織のボスの息子だ。お前がやつの息子をひき殺したことは、一生明るみに出してはいけない。わかったな?」さっきと打って変わって厳しい顔つきをした父親が言った。息子はこれでいいのだろうか、いいわけない、という顔つきで、車の中に座っていた。

 

マフィアのボス

 

罪を隠すために必死にごまかす男を演じさせたら、クランストンの右に出る者はいない。そういう意味では、このドラマは彼にとってははまり役だと思った。高名な判事の一人息子がひき殺したのは、最も残虐な暴力団のボスの息子だった。このことがばれたら、息子だけじゃなく、判事の人生も終わりだろう。生きていけなくなるだろう。激しい暴力を振るわれた後に、二人ともむごたらしい死を迎えるだろう。逃げ道はあるのか。今まで心優しく、何人にも公平だった判事は、息子が犯した罪を隠すために別人になっていく。

ここまで見て面白そうなので、これから見続けることにする。