このドラマ、すごくよさそうと思っていたわけではなく、前からあったのはわかっていたけど、あまり興味がなかった。犯罪の多い街の話、というイメージがあって、ギャングとか、ドラッグとかあまり興味ないので、見ていなかった。飛行機の中で提供されていたので、見始めたけど、字幕がついてなかったからやめた。

その程度の、期待度の低いドラマだった。見始めると、やっぱりそうだ、というドラマだ。

今 シーズン3のストリーミングを始めていて、やっとシーズン3を見始めたところだ。シーズン1,2を見た感想はまあまあ。見始めると、アメリカドラマはいつもそうだけど、つまらなくて最後まで見られなかった、というのは、私の場合めったにない。それなりにつじつまもあってきたし、ちゃんと書かれているし、それなりにちゃんとできている。Bというところだ。

通常だったら、Bドラマのブログは書かない。

しかし、

このドラマのブログを書こうと思ったのは、このドラマにはいくつかの面白い裏事情があるからだ。

まずざっと大まかなあらすじから。

 

Jeremy Renner

 

主人公は、Avengersなんかで今人気のある、ジェレミー・レナー。ジェレミー・レナーは、アベンジャーズだけじゃなくて、いろんな大作映画に出ている、今売れている俳優だ。私が好きなミッションインポッシブルにも出ている。私がこの俳優さんを初めてみたのは、アカデミーでベストピクチャーを獲得したHurt Lockerだ。あと、Bourneシリーズにも出てるし、有名、大型映画出演多数で書ききれない。そのジェレミー・レナーが主演のドラマだから、ある程度いいのは保証されている。

ジェレミー・レナーは、キングスタウン、という、実在しない、ミシガン州の端っこにある小さな街のフィクサーをしている。フィクサーを日本語に訳すのは難しいけど、根回しをしたり、公にできないトラブルが起こった時に頼むと陰で直してくれる人のことだ。あまりにも町の闇の世界に影響力があるので、Mayor、市長、と呼ばれている。キングスタウンの本当の市長じゃない。キングスタウンは小さな、貧しい街だが、大きな刑務所があり、刑務所が町の唯一の「産業」なのだ。地理的な形状を言うと、この街は、周りを深い森に囲まれて、孤島のようになっている。何の資源もない、企業もない、周りを深い森に囲まれた離れ小島のような街。刑務所を建てるのはおあつらえ向きの街だ。この町の人間は、皆、刑務所にかかわる仕事をしている。町のどこにも犯罪がない場所がなく、住民の多くが、警察か、看守か、または、犯罪者、ギャングに所属していて、刑務所に入ったり、出て家に戻って暮らして、また犯罪を犯して刑務所に入れられて、という、刑務所の外と中を行ったり来たりしている。

この町では、あらゆる人種のギャングが存在し、警察も汚職まみれで、法律違反を犯すし、警察の名を借りて、警察官たちは町の住民を脅かし、看守たちは刑務所に入所している人たちを抑圧し、いじめる。刑務所の中の看守たちは威張っている。囚人同士がけんかしても、どっちが死んでも構わない、とばかり、見て見ぬふり。

いったんキングスタウンの刑務所に入るとギャングと関わる羽目になったり、看守に目をつけられて、中で犯罪に巻き込まれ、刑期が伸び、なかなか出られなかったりする。

刑務所の中にも外にもギャングのメンバーがいて、中でも外でも縄張り争いをしている。中のギャングと、外のメンバーは繋がっていて、禁止なのに、中の囚人たちはちゃんと携帯も持っているし、外の世界の情報を逐一知っている。キングスタウンでは、ドライブbyシューティング(車を走らせながら、窓から機関銃で標的をうつ)や、他のグループのギャングメンバーの殺人が後を絶たない。それをいくらかでも、落ち着かせて、少しでも平和をもたらせようと日々動き回っているのが、Mayorこと、マイクだ。

 

昔は兄と

 

このフィクサーという仕事、最初はマイクのお兄さんがやっていた。お兄さんは警察からも、犯罪者からも信用されるような男だった。しかし、事務所にいるときに、くだらない、ちゃちな強盗に入られて、金庫を開けさせられたのち撃ち殺されてしまった。自然とそれまで、兄にくっついて、アシスタントのようなことをやっていたマイクが、兄の仕事を引き継ぐことになった。兄の亡き後、それまで兄を頼ってきていた人たちが、マイクに頼みごとをするようになったのだ。刑務所の中の人間も、外の人間も、問題があったらマイクに打ち明ける。マイクは、そういった人たちからお金をもらって収入を得ている。クライアントに、刑務所の中に家族が入ることになったから保護してしい、と言われれば刑務の中のコネのある男に見張っててもらうよう頼む。初犯の、軽犯罪で刑務所に入ることになった若者が悪の手に染まらぬよう、他の刑務所に移動させたりする。看守、警察、囚人、ギャングたちとの間に入って仲介役も務める。

シーズン1では、看守の、囚人たちへの扱いがあまりにもひどいので、囚人たちが暴動を起こした。あまりにも大きな暴動になり、囚人たちが牢屋を出てしまって、看守たちに襲い掛かり、多くの看守を殴り殺し、何人かを人質に取る、という事態になってしまった。警察も人を殺したり、罪のない少年を刑務所にぶち込むことぐらい平気でやるので、これに対しての警察の対処は、SWATチームを送り込んで、囚人たちをほぼ全員機関銃で銃殺する、というものだった。

 

黒人ギャングのリーダーと仲がいい

 

シーズン2は、この暴動で全員死んでしまったことの後始末。刑務所の中の白人至上主義、ヒスパニック、黒人のギャングのリーダーたちが死んでしまった。刑務所の中のリーダーがいなくなり、暴動から生き残った者たちは混乱して、違う人種グループの囚人たちを殺し始めた。ある黒人グループはリーダーが服役していて、刑務所から外の世界の手下に指令を出していたが、そういうグループは、外にいる手下たちもリーダーを失った。リーダーが刑期を終えて出所し、戻ってくるのを待っていた者たちは、指令を出す人物を失って、自分たちはこれからどうしたらいいのか、方向を見失って混乱し、目蔵めっぽうにドライブバイシューティングを行ったり、ライバルグループのアジトを襲撃したりした。結果、刑務所の内外で統制が取れなくなり、平和がなくなり、治安が最悪になった。意味もなく、黒人が他の黒人のギャンググループを皆殺しにしたり、刑務所の中でも白人がヒスパニックを殺したりなど、収拾がつかなくなった。全く罪のない女子供まで、流れ弾が当たったり、その場にいた、というだけで殺された。ティーネイジャーの女の子がバス停でバスを待っているときに撃ち殺された。それもこれも、暴動の時に、警察がリーダーもろとも皆殺しにしてしまったからだ。生き残った者たちは、誰が自分たちの敵なのか、誰と手を組んでいるのか、誰に忠誠をつくしたらいいのか、方向が見えなくなってしまった。不安になった者たちは、自分たち以外のグループは全員殺そう、と刑務所の内外で思うようになり、日々銃撃戦や、殴り合いなどの殺し合いが絶えなくなった。警察もマイクも頭を抱えた。刑務所の中の秩序が乱れてしまったために、キングスタウン全体のバランスが崩れてしまった。どうしたら毎日続く殺し合いがなくなるのか。

そこでマイクが思いついたのが、外にいるリーダーたちを刑務所の中に一時的に送って、刑務所の中のリーダーを決め、リーダー同士で話しをつけてきて、決めたら出てくる、というものだった。マイクは、懇意にしている副検事から、リーダーたちを一時的に刑務所に入れる、という契約書を得、リーダーたちを刑務所に入れ込んだ。リーダーたちは、刑務所の中で自分たちの右腕となるものを任命したら即出てこれる、というマイクの言葉を信じて刑務所に入った。

しかし、ここからマイクに誤算があったことが明らかになる。

 

刑事たちとも毎日話し合う仲だ。

 

極悪犯罪人たちを刑務所に入れた検事は有頂天になった。また、彼らが確実に出られないように、暴動でボロボロになった刑務所にいた囚人たちを、リーダーもろともキングスタウン内の、違う、もっと新しくて、最新の警備設備の整った、厳重な刑務所に移してしまったのだ。リーダーたちは出られなくなり、マイクもリーダーたちが大きな、警備の厳重な刑務所のどこにいるのかわからなくなってしまった。リーダーたちは、たちまち弱い立場にさらされることになった。いろんな囚人たちが彼らを攻撃するようになり、毎日自分の身を守らなければならなくなった。自分たちをすぐ出すと約束したマイクはどこにもいない。リーダーたちはマイクを憎むようになった。マイクはマイクで、自分の計画が見事に裏目に出て焦った。検事に直接掛け合ったが、「出所させるなんて、とんでもない。しかも、お前のような犯罪者の言うことをおれが聞くわけないだろう。」と検事は笑った。しかし、この検事は、刑務所に入っていた黒人ギャングのリーダーの指令で銃殺された。結果、黒人のリーダーだけが外に出ることができた。黒人のリーダーは、他のリーダーたちは外に出してあげなかったのだ。白人至上主義のリーダーはまだ刑務所の中にいて、出られなかったので、マイクを憎んだ。外にいる手下に指令を出して、マイクの命を狙った。(死なないけど)黒人のリーダーは、刑務所の中のリーダー、彼に忠実な「子分」を指名した。そして、主に白人の看守たちと、白人至上主義グループと争わないよう仕組んだ。白人至上主義者と黒人たちは、手を組んで、ヒスパニックのリーダーを殺してしまった。前より厳重な刑務所と言うこともあり、依然起こったような暴動も起こりにくい。そういったことから、刑務所は徐々にバランスを取り戻した。

黒人のリーダーが外に出て、とりあえず、「平和」が戻った。真の平和などは、キングスタウンにはないのだが、少なくとも暴動が起こった前の世界にもどった。

しかし、マイクはいろんなややこしいことに関わっているので、命はまだ狙われていて、最後は脅迫者たちが、とうとう家にまでやってきた。

かなりおおざっぱだが、こういうところでシーズン2は終わり。

 

シーズン3

 

それで、今シーズン3のストリーミングをやっていて、最後まで放送し終わっていない。シーズン3は見始めたばかりだけど、外の世界でも、刑務所内でも、ヘロインを、死に至るフェンタノールかなんかで割ってある麻薬が横行し、次々と外の世界の若者や、囚人たちが死んでいく。なぜそんなのんだら死ぬようなドラッグを売るか、と言うと、わざとではない。薬学の知識が何もない、下っ端の売人が、フェンタノールが安く簡単に手に入るので、ヘロインと混ぜて、見た目を同じにして、ヘロインと同じ値段で売っているのだ。そうやって少しでも儲けを多くしようという浅知恵でやっているのだ。誰がやっているのか。どうやったら止まるのか。マイクの使命は、キングスタウンに少しでも平和をもたらすことだから、警察と一緒に、黒人のリーダーなどにも話を聞いて、フェンタノールで覆ってある薬物の出所を調べる、という話だ。

 

マイクは他にもケースを抱えているので、登場人物ももっとたくさんいるし、いろんなストーリーが同時進行していて、そのストーリーがお互い関係していたり、全く関係なかったりで、もっと複雑だ。

 

こういう具合で、わかりづらいところや、いつの間に黒人と、白人が手を結んだの?とか、刑務所内では、黒人同士も殺し合ったりして、誰が誰を恨んでいて、何のために殺すのかとか、その他いろいろわからないところがある。そういう箇所がいくつもあるので、それでストーリーは今一かな、と思っている。あと、男も女も不必要に汚い言葉を使う。なんか強がってるみたいだ。

あと、黒人がギャングトークをすると板についているのだけど、この主人公の白人や、他の白人が話すときは、黒人に追いつこうとして、無理しているように聞こえる。

 

このドラマの何が特別かと言うと、一つはこのドラマの主人公、ジェレミー・レナー。シーズン2の制作が2022年12月に終わった。シーズン3の撮影に入る前に、スタッフは休みに入った。2023年1月1日、ジェレミー・レナーはネバダ州の自宅で大型除雪機を使っていたが、操作を誤って飛び降りた。が、除雪機は暴走し始めたので、また止めようとして刃に絡まってしまった、という事故にあった。この事故で、重傷を負い、一時は死ぬと思われていた。少なくても、もう体は元に戻らない、俳優という仕事はもうできないだろうと思われていたが、強い精神力と体力でもって、復帰したのだ。そして、復帰して最初の仕事がこのドラマのシーズン3の撮影だった。本人の意思だったそうだ。病院にいる間、まだ幼い娘さんがずっと病室にいたのだけど、終始顔に不安そうな、怖がっているような表情を浮かべていたという。自分がいなくなったら娘はどうなるのか?その一心で、元気にならなければ、と思ったそうだ。

シーズン3の撮影中、レナーは、精神的、肉体的負担を感じたという。

私は、ジェレミー・レナーの事故のことはニュースで見て知っていた。なんせ、結構大きなニュースだったから。彼が病院のベッドで横たわって、体中からチューブが出ていたり、苦しそうな顔をしてリハビリを行っているシーンなどを見ていたので、てっきりシーズン3は怪我の前に撮影したのだ、と思っていた。見るまでは。彼が生きたのは奇跡と言われている。それ以上に、1年未満で撮影できるまで回復したのだから、運がよかっただけではなく、本人の生きたいという気力と、努力の賜物だろう。

シーズン3を見始めてすぐ、これは彼が怪我をした前に撮影したのか、あとにしたのか気になった。というか、「もしかしてこれ怪我から復帰してから撮影したんじゃないか?」と思った。それで気になって調べ始めたら、やっぱりそうだった。見て、わかるのだ。精神的、肉体的負担を感じた、というが、そういう風に見える。まず、舌が前ほどスムーズに回らないみたいで、このドラマは汚い言葉を交えて、早口でまくしたてるのだが、ろれつがうまく回ってないように感じた。あと、ずいぶんと肌荒れしている。まるで顔に細かい傷が無数についてるみたい。それと、シーズン1,2と比べると、元気がないように見えた。

 

シーズン3撮影初日。緊張している、とインスタグラムで述べていた

 

それからもう一つ、このドラマの特別なところ。このドラマは、テイラー・シェリダンが書いている。テイラー・シェリダンは、今売れっ子中の売れっ子脚本家だ。あの、イエローストーンの脚本家だ。テイラー・シェリダンは、多才で、一人で、ライター、プロデューサー、ディレクター、俳優を務めている。このドラマを見るまで、テイラー・シェリダンが書いているということは知らなかった。彼の名まえは、イエローストーンで初めて知った。しかし、イエローストーンで一躍有名になったから、それまで知らなかったというのは自然かもしれない。その前は映画Sicarioを手掛けたり、その他の映画の脚本を書いたらしい。あと、以前のブログでも書いた、Sons of Anarchyにはわき役俳優として出演。脚本を手掛け始めたのは、40歳を過ぎてから。(今は54歳)あと、イエローストーンみたいに、カウボーイ物も得意ジャンルらしい。それは、本人が本物のカウボーイだからだろう。今は大きな牧場を所有していて、そこに住んでいる。イエローストーンのプリクエル、1883,1923もシェリダンが書いている。

このMayor of Kingstownはイエローストーンと同時期に書かれている。今でも書き続けられているから、ずいぶんと忙しいことだろう。ネットに載っていた記事によると、シーズン11まで続けたい、と書いてあったから、意欲満々だ。

それと同時に、今ストリーミングされているLionessというドラマも見ているが、これもシェリダンが書いている。LionessはCIAもの。舞台は中東だ。アメリカ政府が、女性のスパイを育成して、中東のテロリストの家庭に送り込む、という話だ。こっちの方は、まだ始まったばかりだけど、見始めると結構面白い。もしかすると、このドラマより面白いかも。過去の経歴を見ると、SicarioがLionessの世界と似ているのかな?やはり暴力的、というところが他の作品との共通点だ。

同時進行で、Mayorと、イエローストーンと、このLionessと、それぞれ全く違う世界を、しかもどれも見ごたえのある物語をかけるなんて、なんて才能だろう。そして、すごい体力。売れてるうちにってことかな。

 

自身もカウボーイのTaylor Sheridan.テキサス出身。

 

そういう意味では、このドラマも捨てたもんじゃない。今後も見続ける価値がありそうだ。