最近見終わったDark Winds。前にRotten Tomato(最近はドラマ、映画の評価を見たい時に、何を見たらいいかわからないので、Rotten Tomatoを見るようにしている)を見ていた時に、最近やっているドラマの中で一番いいのはどれか検索したら、このDark Windsと出たので、へえ、と意外な気がした。その時は、The Bearは2位だった気がする。The Bearは、その当時、一番ストリーミングで見られているドラマ、とテレビニュースで言っていたので、Rotten Tomatoが、そのThe Bearよりこのドラマの方がいいというなんて、よっぽどいいドラマなんだな、と思った。それでもDark Windsはテレビでシーズン1は録画しそびれてしまって、その後AMC+でしかやらなくなって、結局見れてなかった。今回、シーズン2が出て、シーズン1はアマゾンで無料で見れるようになったので、見始めたが、確かに結構面白い。それで、このDark Windsがどうして、Outer Rangeと同じようなことが言えるかと言うと、このドラマのプロデューサーはロバート・レッドフォードなのだ。ロバート・レッドフォードは、もうずいぶん年取ったけど、映画業界ではいまだに超大物で、伝説的存在だし、自身も何本も映画の監督をしているので、いいドラマ・映画とそうでないものの見分けがちゃんとついているだろうと思う。その人がこのドラマのプロデューサーなのだから、ただのドラマじゃないんだろう。

Rotten Tomatoは、でき始めは、掘り出し物の映画とか、インディーの映画とか、知る人ぞ知る的映画の評価とかして、かっこよかったのだが、近頃はもっとメジャーになってきたせいか、ハリウッド映画とか、有名俳優さんが出ている、メジャーなドラマ・映画の評価もするようになった。そして、ブラッド・ピットや、ロバート・レッドフォードのような超メジャーな人が名を連ねているようなドラマや映画が出てくると、真っ先に見て、ちょっと欲目で見る、というか、さっき言ったみたいに、こんな大物が推してるんだから、いいドラマ、というバイアスがかかっている気がする。もちろん、Rotten Tomatoの評価が高い映画やドラマは確かにたいていよい。Rotten Tomatoらしい、という部分もあるけれど。たまに彼らの評価と私の評価が合わないときもある。だから、盲目的に全部言うことを信じることもできないけれど。

このドラマは、まだシーズン1の途中までしか見てないけれど、結構面白い。どこが面白いか、と言うと、インディアンのレザベーション(保護地区)の中で起こる、殺人事件や、FBIも絡んでいる銀行強盗事件の話だからだ。ロバート・レッドフォードと言うと、昔、インディアンの儀式などを扱った映画の監督をしたこともある。だから、昔からこういったインディアンの儀式とか、土地に住み着いている霊魂とか、信仰などに興味があるのだと思う。インディアンで構成されている組織が銀行強盗を行い、保護地区の中に隠れることによって、アメリカの警察の手から逃れる、という現代的な話が一つ。神秘的な、隠れた儀式が行われて、少女が妊娠したり、少女の安否を気遣って訪れたインディアン保護地区警察官が気分が悪くなったり、未来を予知できる老婆がいて、老婆を保護している高校生の少女が何者かに殺される、という話がもう一つ。それらのストーリーがどう結びついているのかは、まだ途中なのでよくわからないけれど、どういうことなのかもっと見たくなる。そういった話だ。

 

この役者さん、よくインディアン役でいろんな映画やドラマに出ているけど、主役をやったのは初めてじゃないか。この役でエミーにノミネートされたと思う

 

シーズン2まである。シーズン1と2で共通しているテーマがあって、まず、主人公のインディアンの保安官と、奥さんの間の夫婦愛がいい。1960年代後半、インディアンなど白人以外の人種への差別が一番強かった時代の話で、今では公の事実となって、有名な話だが、インディアンの人口が増えないように、妊婦が病院に行くと、一人目を生んだ後で、本人には黙って子宮を摘出する、ということが、アメリカ政府の指令でこっそり行われていた。この時代、医者は全員白人、しかも男性がほとんどで、インディアン女性に、英語が話せないと思って(そんなことはなかったのだが)、平気で目の前で、「いい母親になれるわけないんだから、生まれないほうが子供も幸せだ」とか、言っていた。主人公の保安官の奥さんは、この時代には珍しく看護婦をやっていて、インディアン語で、病院に来た妊婦に「病院で産むと子宮を取られて子供を産めなくなるから、家で産みなさい。」と説いていた。彼女は、妊婦が陣痛が始まると家まで行って、助産婦をやっていた。彼女自身、そのことを知らないで、病院で男の赤ちゃんを産んでからそのまま、子宮を摘出されてしまったのだ。だから、一人息子しかいなかった。

その一人息子も、石油工の仕事をしていて、職場で不慮の爆発が起こり、死んだ。一人しか生めなかったので、その息子を失って夫婦の嘆きは深くて、シーズン1,2とも、夫婦愛と同時に息子の死に対する悲しみもドラマの根底に流れている。この職場で起こった不慮の爆発事故が、土地の値段を下げて、安く買い取ろうとする白人の地主が人を雇って起こしたことではないか、という証人が浮上し、息子は殺されたのか、と保安官は調査を再開する。

インディアンたちは、白人に多くをはく奪され続けるが、その中でもお互いをいたわり、コミュニティーとして、力強く生き続ける。一方若者は、新しい、「平等な」人生、世界を求めて、保護地区を出ていく者もいる。

若い美男美女のインディアンの恋愛ストーリーもあって、夫婦愛といい、心温まる部分も多いドラマだ。

 

インディアンの若者たち。美男美女。二人とも警察官。

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Hacksという現代コメディーも見た。これもなかなか良かった。コメディーはあまり見ないけれど、これはエミーなどでもベストドラマとしてノミネートされていたので、見てみた。HBOでストリーミングしている。最近シーズン3が出た。

まず題名の、Hackとはどういう意味かというと、偽物、とか、はったりとかいう意味で、例えば藪医者のことをHackと呼ぶ。コメディアンのドラマだけど、このタイトルがついている、ということは、偽物のコメディアンという意味だと思う。ドラマの第1エピソードで、若いコメディーライター、エイバが、面接で拒否されたときに、大物コメディアン、デボラに対して、「あんたなんかHackじゃないの」というセリフを吐く。このドラマのタイトルは、複数、Hacksなので、主人公のコメディアンも、コメディーライターの彼女も、はたまた業界の人全体、しょせんHackで、みんなそんな危ない橋の上を歩きながら笑いを取って生きている、という意味なんじゃないか、と思う。

 

デボラ・バンス。年を取って、世間一般の常識に疎くなり、いやな思いをすることも多くなった。

 

ラスベガスで毎日ステージを持っている、かつて売れていた伝説的女性コメディアン、デボラ・バンス。彼女はもう70歳に差し掛かっていて、さすがに毎日客席いっぱい、という具合にはいかない。ステージのオーナーが彼女との契約を更新せずに、ステージから下ろそうとしていた。方や、ハリウッドに住むZ世代のコメディーライターの女性、エイバが、冗談でSNSに女優さんをからかうようなツイートをしたところ、炎上して業界からつまはじきにされ、誰も彼女を雇ってくれなくなった。この二人は同じマネージャーを持っていて、困ったマネージャーは、この二人を結びつけることを考えた。Z世代の、売れ始めたが、さっそく躓いてしまったエイバを、70歳代の売れなくなったコメディアンのもとに送ったのだ。

最初は両者ともお互いと働くのを嫌がった。しかし、マネージャーに強く言われて、エイバが過去の人とはいえ、伝説的なコメディアンにラスベガスまで会いに行って、仕事を乞うことになった。

 

Z世代のコメディーライター、エイバ

 

デボラ・バンスは、何人もの召使がいて、何億ドルもするような豪邸に住んでいた。エイバはデボラに面会するが、「私は自分のジョークは自分で書くの。あなたのジョークはたいして面白くないからいらないわ」と剣もほろろに断わられて、キレてしまう。デボラや、館のことをぼろくそに言って、デボラが言い返して、二人の初めての出会いは、売り言葉に買い言葉の大ゲンカになった。でも結局、最後デボラが負けて、エイバの辛らつな言葉に噴出して笑いだし、「あんた面白いわね」となって、エイバはデボラに採用されることになった。それが二人の関係の始まりだった。

それから、エイバはデボラに付き添って、二人は話し合いながらジョークを書くようになった。デボラはエイバを通して、現代の人たちのセンスや、禁句、御法度、何がおかしいか、おかしくないかを学び、昔のコメディアンから、今のコメディアンへと変身する。年を取っていることで、マネージャーや、客に嫌なことを言われたり、されたりして落ち込んだり、やめたくなったりしても、エイバが励ましてくれて、やめさせてくれなかった。こうやって、娘と母親、というよりは、孫と祖母といってもおかしくないぐらい年の離れている女性たちの間に深い友情が生まれる。デボラがパーティーや、賞を取った時など、ことあるごとに、エイバに礼の言葉を述べた。業界も、デボラ・バンスを復活させたライターとしてエイバのことを許すようになり、またハリウッドから仕事の依頼が来るようになった。エイバはうれしくて、迷うのだが、結局断って、デボラのそばにいる生活を選んだ。エイバのおかげで、デボラもまた売れているコメディアンに返り咲くのだが、デボラはエイバに自分の元を離れて、もっと飛躍しなくてはいけない、と言って、突き放す。エイバはデボラのもとを泣く泣く離れて、ハリウッドに戻るのだが、しばらくして、また自分が必要ということがわかると、ハリウッドの仕事を辞めて、デボラのもとに戻るのだった。

という具合の、年がとても離れていて、普段だったら友情なんてありえないのだけれど、この二人の女性の間に生まれる、持ちつ持たれつの関係、お互いいたわりあう関係、そしてそこにコメディーが混ざっている。こういったもののブレンドがこのドラマを特異なものにしているし、見ててさわやかな気持ちにさせてくれて、温かい気持ちにしてくれる。

 

年の差がかなりある二人だが、お互いを信用し、助け合う友だち同士になる。