あのまろやかなリコーダーの音色が嫌いというわけではないのです。
ただ、聴いていると頭の中があのメロディーに支配されていき、ほぼ一日脳内BGMになってしまう悲劇。そして自分のあらゆる動きがリズミカルになって、傍から見たらただの変人ですよこんなん。
もう去年の話なのだけど…
ロンドンパンクの象徴ともいえるSex Pistolsのボーカルであるジョン・ライドンと長年連れ添った奥様(事実婚だったようだけど)がお亡くなりになったというニュースがあった。
この奥様については、ジョンよりかなり年上であること、前夫との娘がパンク/ニューウェイヴのバンド「スリッツ」にいたアリ・アップであることくらいしか知らなかった。けれどジョンがこの女性をパートナーに選んだ理由はなんとなくわかる。
ジョンの母親は若くしてジョンを産み、ジョンが部屋で風変りなレコードを聴いていたりすると中に入ってきて隣に座り、「ねえ、面白い音楽!なんていうバンド?」と目を輝かせて訊ねてくるような女性だったとのこと。イメージとして親は子供の聴く音楽など理解不能でうるさがるみたいな感じだと思うのだが、ジョンと母親はどこか友達のような感覚があったのかもしれない。
そしてジョンが7歳で大病を患った時に、献身的に看病をしてくれたのも母親だった。
それまでの記憶をなくすほどの重病で、母親は根気強く学習につきあい、読み書きなどを熱心に教え直したそうだ。ジョンは母親思いの青年へと成長し、ピストルズを結成、今現在でも影響を及ぼしているパンクムーヴメントの中心人物となった。しかし母親はその活躍を長くは見守ることができなかった。ピストルズが解散してしばらくの後、病気でこの世を去ったのだ。
ジョンの奥様自身は、クラシック音楽を好む落ち着いた「自分」をしっかりと持っていた女性だったという。ジョンが魅かれるのも無理はないでしょう。ジョンが奥様に母親を求めていたというのは穿ちすぎかもしれないけれど。
ジョンはアルツハイマーにかかった奥様のフルタイムの介護を、ヘルパーなどの協力を得ながら最期までやり遂げました。
夫が妻を介護する暮らし。わたくしはその切なさ苦しさを身につまされるほど理解できる立場でもあるので、ジョンライドンという人間を心からリスペクトしています。
明日の事なんか知らねえ!と自由と破滅と闘争を歌うパンク。
バンド仲間であり親友だったシド・ヴィシャスの生きざまなどまさにそれを体現しているかのよう。でも、こんな風に困難に立ち向かう背中を見せるジョンこそが、今はカッコいいと思います。
近所にいる怖そうだけど仲良くなったらめっちゃ面白くてためになる話してくれるおじさん感
アメリカ・テキサス州出身のKhuruanbin(クルアンビンと読む…由来はタイ語の”飛行機”という意味)の2018年のセカンドアルバムからの曲。
ジャンルはサイケデリックロック、ソウル、サーフロックにタイや中東の音楽が絡んでいる感じ?ローファイサウンドと言われればそんなテイストもある?
これ初めて聴いた当時は戦慄しましたね…果てしなく美しいのに、どこかに黒くて大きな穴があいているような感覚にとらわれました。
漂うニッチ感とは裏腹に彼らは世界中で人気を集めていて(フジロックにも来ていた)、今も精力的に活動しています。
主旋律を奏でるギターのメロディーに古さと新しさの同居を感じて、ついうっとりとほかの曲を続々と延々と聴くのですが…わたくしはいつも途中で軽い恐怖を感じてしまうのです。
他のジャンルの音楽に感じるアッパー系とは一線を画す、ひたすら甘美なダウナー系というか…「ドラッギー」というワードの意味をこのバンドから教えられた気がします。朝起きた時にこの曲が流れていたら、確実にその日は何もしないでただ外眺めてそうw