何も考えずに行動してしまうのはいつもの癖・・・。
周辺は見事なまでに田園風景・・・だれか農作業をしている方がいるだろう・・・と思いきや・・・どなたもいない・・・。
町に一軒ある雑貨やのオバサンにある農家を紹介していただいた。
「ほれっ、あそこの家にいっているといいべ・・・。ウチは雑貨屋で農家じゃないからわからんけど、この辺の農家はこの先どうなるかわからんから皆自宅にいると思うっぺ!」

狭い田んぼのあぜ道を車で入る。一軒の米農家のお宅にお邪魔する事に・・・(写真はイメージ)。
先ほどは嫌がられたが今度も嫌がられたりして・・・。
まぁ~良い・・・話を聞いて嫌がられるのはアクの強い競馬雑誌「競馬・最●の法●」で慣れている



恐る恐る敷地に入る・・・今までの瓦礫の敷地とは違い、りっぱな農家のお宅である・・・。
たまたま農機具を整備されていた・・・。

「あの~~~ちょっと農家の事でお話を伺いたいんですけど・・・。フリーのカメラマンです・・・。」
名刺を渡す・・・。
「農家の事・・・話す事は山ほどあるど・・・」
良かった・・・お話できそうである・・・。
「いわき市の内陸部はほとんど震災の被害を受けてませんよね・・・。」
言葉を慎重に選んで話をしなければ「とっとと帰れっ!」と追い返されそうだ・・・のような気がする・・・。
「海岸線は全滅だぁ~(以下、福島弁→標準語)。百姓も大変だけど漁師も大変。俺らは何とか田んぼが残ったど、漁師は船も港も失ったからな・・・。」
「でも、原発事故の影響で福島県の農家の方々も大変じゃないんですか・・・。変な風評被害もあるようですし・・・。今日(3月31日)も朝のNHKニュースではきゅうりに放射物質が・・・なんて言ってましたけど・・・。」
「こうなったら今までのように全く大丈夫な野菜や果物なんてないよ。”路地ものはダメで、ハウスものは大丈夫”
なんて農業をしらない人間はそう思うんだろうけど、ハウスものも大変だよ。大きなハウスだと換気が必要で一日一回はハウスを換気するからね・・・。果物によっちゃ~一日中換気のためハウスを開けることもある・・・。
そ~ゆ~しっかりした説明を国ももっとちゃんとやらないと、これから”あれもダメ、これもダメ”なんてことになるな・・・。ますます消費者が混乱するだけだろ・・・。」
「福島はお米も有名ですよね・・・。私の地元神奈川県ではそろそろ田植えの準備を始めている農家もあるのですけど、この辺はまだ、冬の田んぼのままですよね・・・。」
「この辺りで800町歩くらいの田んぼがあるかな(どれくらい広いかわからない・・・私、写真人)。どれも手付かずさ・・・。何故だかわかるか?」
「・・・原発・・・事故の・・・影響ですか・・・」
「そうだっ。農協も福島県も国ももう少しまってくれの一点張りでなかなか田植えを始めさせてくれない。見てみろ、これだけの肥料や根付(籾殻からの発芽)の準備のしてるのによ・・・。」

「この肥料だけでいくらになると思う?一袋2000円から3000円するんだぞ。これが何袋あると思う・・・。
この倉庫一杯に肥料がある・・・。」
「もし、田植えが出来なくなったら大変な損害ですよね・・・。」
「兄ちゃん、コシヒカリってしってるか!?コシヒカリは早く植えて早く刈るのが旨い米になるんだぞ。例年なら3月のお彼岸あたりから籾殻を水につけ、2週間くらいで発芽を待つ。そのあと根付(苗を育てる)をして、ハウスで成長させて田植えだ・・・。まともなら4週間はかかる。ゴールデンウイークの前から田植えだ。
見てみろ、根付も出来ないまま農具はほったらかしだ!」

「もし田植えが出来たとしてもかなり遅い田植えになるんですね・・・。」
「今の時期だとそろそろ苗をハウスに移す時期なんだけどな・・・。この辺の農家はまだどっこもハウスの準備すらできてないだろう。」

「これだけ遅れるとかなり影響がありそうですね・・・。今年はおいしいコシヒカリが出来ないって事ですか!?」
「コシヒカリは田植えが早くて稲刈りも早い。9月には稲を刈る。この分でいったら10月に入り込む・・・そうなると米の味は間違いなく落ちる・・・。それでも、国や県は待ってくれの一点張り。ど~しょう~もねぇ~よっ!」
「そうですよね・・・潰れた工場は再建ができても農家の場合は種付けの時期が限られてきてますから、いつでも良いっていう訳には行きませんよね・・・。」
うなだれた様子で倉庫の中を眺める農家の方・・・。
「兄ちゃん、この辺はな・・・皆米農家なんだよ・・・。あと車で5分も走ってみろ・・・東電が言ってる30キロ圏内屋内待機圏だ・・・。その圏内を境に米農家と畑に分かれる・・・。俺らの地区は30キロ圏外・・・。どうゆうことかわかるかっ!?」
「・・・・・」(アホでスミマセン)
「俺らの地区は東電(東京電力)や国が定めた被害地域じゃないから、もし仮に田植えが出来なくても保障がないって事なんだよ・・・。つま恋(長野県)のレタス農家のように”農業団地”を作って大規模集約農家をやっているところなら作付けが出来なくなったら何らかの保障が受けられる・・・。この辺は皆個人でやってるからな・・・。まず、まともなら保障はないっ・・・少なくとも東電からの保障はないなっ!」
「えぇ~~~、田植えが出来なかったら収入ゼロじゃ~ないですか!」・・・当たり前のように驚く私、写真人。
「ゼロじゃねぇ~よ・・・赤字だよ・・・大赤字!!」
「保障問題があるから30キロ圏内のままじゃねぇ~のかな・・・。範囲を50キロにしてみろ!相馬の方は酪農が盛んだし、内陸にいけば果物や野菜をやってる農家も多い。この辺は田んぼが多い。とてもじゃないけど、すべて保障してたら東電なんてつぶれちまうぞ・・・。アメリカは80キロっていってるしな・・・。」
「お米(=農家)の事は良くわからないんですけど・・・やはり保障されるものなんですかね・・・。」
「今まで農家は何を作るのにも国の指導でやってきてるからな・・・。やれっ、作れだっ、作るなっとか・・・。作れれば問題ないけど、作るなだと保障が受けられる・・・まぁ~いろいろ細かい事はあるけど・・・。」
「今回はどうなるんでしょうね・・・。」
「一応、国が土壌の調査をしてその結果を発表するのが4月6日となってる。それまでは何もするなって言われてるよ・・・。でも、これじゃ~飼い殺しでね・・一日も早く発表して欲しいんだけどね・・・。もちろん、国以上に県は細かい調査点ですでに調査を始めてる。いくら県が大丈夫と言ったところで所詮、国の方が強いからな・・・。
県も国に従うしかない訳だ・・・。」
国の土壌調査にくらべ県の方では早くから細かいポイント(10キロ四方)調査を開始しているという。
「もし仮に4月6日の時点で国が大丈夫と定めた場合、それから籾殻を水につけて用意するわけだからギリギリ間に合うか、間に合わないかだな・・・。国は賢いからその辺も計算しているよ。そうなったら俺らは例年以上に大変になる。」
「・・・でも・・・失礼ですけど・・・万が一、国の調査でNGが出た場合はどうするんですか・・・。」
「そりゃ~ねぇ~よ!国は100%、米作れって言うだろう・・・。国が”米作るなっ!”ていったら全部国が農家に補償しなきゃならなくなるからな・・・。」
・・・安全な米が出来るのだろうか・・・ちょっと怖くなって無言になる私、写真人・・・。
「毎回、ニュース見て有名大学のエライ先生が”大丈夫、安全だ”なんて言ってるだろ。俺は解説している大学のお偉いさん達の大学を全部ノートにメモしてる・・・。ほとんどが国立大学の先生だろ・・・。国から給料もらってるお偉いさんは国に不利な事は言うはずないだろ・・・。本当に安全なら何も言わなくてもいいんだから・・・。」
確かにそうだ・・・。それは私、写真人も気になっていた・・・。私立大学のお偉いさんだと東電を敵に回さない・・・。
研究・取材でお世話になっているからだろう・・・。
「大体、国も東電も混乱しすぎるよ・・・。いわき市の災害被害は三陸地方に比べればまだいくらかマシなほう。
市全体が壊滅したわけじゃないからな・・・。うちらいわきの農家はこうして田んぼや畑が残っているわけだし・・・。
三陸地方で津波で田畑をなくしたり、塩害にあった人にくらべればまだマシかなって思う・・・。家族も無事で家もあるわけだから・・・。でも、原発に被害だけはどうしょうもない・・・。目に見えないからな・・・放射能は・・・」
「風評被害って出てますかね・・・」
「出てるさ・・・もちろん。俺はネットなんてもんやらねぇ~から良くわからんけど、風評被害の原因は国じゃねぇ~かと思うよ・・・。あれこれトンチンカンな事ばかりやってるからな・・・。見てみろ、もうじき海もヤバイって発表するから・・・。そんな事は地元じゃ皆とっくに心配してるのに・・・。」
話を伺ったのは3月31日・・・最近4月に入って、やっと海の汚染を問題視している・・・。地元をまるで無視した国の後手後手の発表・・・。
「結局、皆罪をかぶりたくないのさ・・・。俺らの生活もどうなるかわからんけど、少なくともこの地区の人間はとどまって百姓やろうと思ってる・・・。娘が離れた町にすんでるけど、マンション住まいでな・・・。一時避難してたけどやはり百姓は地べたの方が落ち着くから、皆戻ってきたよ・・・。」
あれこれ一時間近くお話を伺ったが写真を撮るのが本業なので、農家の方々の言葉を100%お伝えする事が出来ていないと思う。
明日はその土壌調査の発表がある4月6日。
国はどのように発表するのであろうか・・・。
その発表で福島県の農家の方々の生活はどうなるのであろうか・・・。

「・・・結局、俺らがこれから先がんばって旨いものを作っても、(国民が)今までどおりに買ってくれて、食べてくれると思うかっ!いくら”安全です”なんて言ってても誰もそうは思わないだろうな・・・。それでも百姓は農家やるしかねぇ~んだよ・・・。政治家や大学の先生は今までどおり給料をもらえるんだろうけどな・・・。」
う~~ん・・・農家ではないので余計に考えさせられてしまうお言葉・・・。
今日も長々書いてしまったが、明日から実は牧場撮影で北海道・・・。
北海道はまだ冬だろうな・・・寒っ・・。
取りあえず、明日早いので寝るとしよう!
今日から小学一年生になった次男・6歳牡馬とねるかっ・・・いつまで一緒に寝てくれるかな・・・。
★注意★
ここの記載されている写真と本文は関係ありません。
また、個々の発言についてもあくまでも地元個人の方々意見であり、
私、写真人の意見&いわき市民全体の意見ではないという事です。
プライバシーの保護のため、お話を伺った方々の個人情報等は一切公表致しません。
また、関係者からの要望により記事の削除、修正をする場合があります。