小松左京にはまり中 | かんちくログ

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1発屋どころか、まだ1発も打ち上がってませんが。勝負は、これから。



名前も作品も(「日本沈没」など)よく聞いたことがあるのに、今までまったく読んだことなかった。たくさん作品があるので何から手をつけていいのか分からず、東浩紀さんが編んだセレクションから読み始めたら、面白くて面白くて。読ませるし、文章うまいし、先がどうなるかドキドキするし、読み終わって考えさせられるし。良質の小説。

小松左京は日本のSFの祖と呼ばれる作家だけど、SFという枠におさまらない。というか、いつの間にかSFという枠のほうが狭くなった…と東さんが解説している。もし歴史がこう変わってたらこうなる…とか、もしこんな世界があったら…という、もうひとつの世界を生き生きとリアルに描いていくその手法は、小説って本当はこんなに自由だったんだと気づかせてくれる。

そして今の時代に読むからこそ響くものがある。「戦争はなかった」という短編は、主人公には確かに第二次大戦の体験の記憶があるのに、周りの人たちはそんな戦争はなかったと言い、歴史資料を調べても戦争はなかったことになっている、という話だ。主人公ひとりが戦争の悲惨さを訴えるが、周りからは狂人扱いされてしまう。

今読むと笑えない。大震災、原発事故、あの悲惨さを目の当たりにして全国民が心からショックを受けたはずなのに、被害のなかった人たちは今までと同じように暮らしているし、世界はたいして変わっていない。一方で、その被害とまだ戦い続けている人たちがいる。それはまるで世界が分断されているかのようだ。小松左京の小説のように。原発事故がなかった世界と、あった世界とに。パラレルワールド。

小説はもっと自由になれる。そして自由になった先に真実が見える。小松左京の作品を読んでるとそんなことを思う。小松左京を読み漁ったらSF書いて創元SF短編賞に応募しよう。これが新年1作目になるでしょう。

不条理さ・残酷さに目をそむけず真摯に向き合うこと(そしてそこから光を拾い上げること)、三人称の仕掛けが複雑な物語に挑戦すること(そしてその中でわたしの持ち味である心理描写を生かすこと)、これが来年の小説の目標です。

よし。これで今年の締め日記にしましょう。
今年もブログを読んでいただき、ありがとうございました。