傷だらけのチャンピオン。 | プールサイドの人魚姫

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うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
迷える人達に心のメッセージを贈る、言葉のかけらを拾い集めてください。


プールサイドの人魚姫-世界王座

 ボクシングファン待望の試合が先日、6月20日に大阪・ボディメーカーコロシアムで行われ、超満員の会場は2人の王者の激しい打ち合いに釘付けとなった。

 WBC世界ミニマム級王者の井岡一翔と、WBA同級王者の八重樫東との世界王者統一戦である。日本ボクシング史上初の日本人世界王者同士による団体王者統一戦という事もあり、試合開始前から好カードとして大きな注目を集めて来た。

 試合開始直後から、井岡の放ったストレート、フックが八重樫の顔面を捉え、試合終盤まで井岡のペースで進みはしたものの、八重樫もチャンプのプライドを守る為、必死に打ち返し最後まで2人の激闘が続いた。

 井岡の強烈なパンチを浴びた八重樫の顔面は見る見る内に腫れ上がり、膨れ上がった両瞼の奥で、井岡のパンチが見えていないようにも思われたが、その奥に光るボクサーの眼光は最後まで死んではいなかった。

 2回のドクターチェックをものともせず試合に臨む八重樫の闘争心は、井岡を委縮させるほどの脅威になっていたが、天才ボクサーの名を欲しいままにして来た井岡にも意地があった。

 左ジャブを容赦なく八重樫に浴びせポイントを重ねる井岡であったが、これぞWBAのパンチとも言える右ショートにたじろぎ腰が落ち掛けた。

 然し、『日本ボクシング界を背負う』使命感に燃えている若干23歳の若武者は負ける訳には行かなかった。

 井岡は試合5日前に38度の高熱を出したばかりで本調子とは言えなかったが、僅かなチャンスをものにする野生感と勝負運が八重樫より一歩リードしていたのかも知れない。

 12回をフルに戦い抜き、その統一王者の称号を手にしたのは、井岡一翔であった。3-0の判定勝ちではあったが、その試合内容は近年のボクシング史上類を見ないほどの好試合であった。

 2人のボクサーの実力が拮抗している場合、手数の多い方が試合を有利に進めるものであるが、有効打の数から言えば、彼らの差は五分五分だっただろうと思う。

 世界を背負っている2人の意地のぶつかり合いであったが、どちらが勝っても負けても2人とも日本を代表する世界チャンピオンである事は間違いない。

 低迷を続ける日本ボクシングの現状を省みれば、彼らの試合が今後の日本ボクシングに与えた影響は計り知れない。

 八重樫がこのまま引き下がるとも思えないし、おそらくリベンジマッチが近い将来実現するだろう。エリートボクサー井岡VS苦労人ボクサー八重樫の再戦が今から待ち遠しくて仕方がないと思っているのは、わたしだけではないかも知れない。