宇宙の存在が現在ほど明らかにされていなかった遥か昔、古代人の眼に月はどのように映っていただろうか。
月に纏わる話しは世界各地に散らばっており、その住人によって語り継がれている月の姿は様々だが、日本では「かぐや姫」の伝説が最も有名であり、そしてまた「うさぎの餅つき」はインドが発祥地となっている。
古代から人類と密接な関係にある月、子どもが産まれる確立が最も高いのが満月の時であり、潮の満ち引きも月の引力によって引き起こされる自然現象である。
どれほど科学や文化が進んでも、人は月の持つ神秘に魅せられ果てなき浪漫と情景を月に求めるものである。
6月16日の夜明けに近い時間、皆既月食が発生する。日本はあいにく、梅雨前線の厚い雲に遮られてこの天体ショーを観測する事は晴れ間の覗く限られた地域でしか見ることは出来ないが、東半球の大部分では、月が地球の本影(太陽の光を完全に遮る領域)に入り、オレンジや赤の色合いに染まる様子を2時間に亘って観測出来るという。
この皆既月食に纏わる伝説も世界の神話の中に散りばめられており、北欧では太陽と月が2頭の狼に追い回され、「月が狼に飲み込まれた」と捉えられている。そしてまたインド神話によると、ヒンドゥー教の神・ビシュヌの怒りを買い、首だけにされた4本腕の魔族「ラーフ」が、月を飲み込んでしまう等、「悪が月を飲み込む」と言った説が多く見受けられる。
いかにも古代人らしい、日蝕や今回の月蝕にしても不吉な予兆として捉えられていたようだが、その人類の叡智を超えた宇宙の神秘の前にあっては、まさに「神と悪魔」を象徴していると言ってよいのではないだろうか。
運よく、この神と悪魔が織り成す天体ドラマを見たという方がおられたなら、ぜひご一報頂ければと思います。
