バンクーバー五輪で日本に初のメダルを齎したのは、スピードスケート男子500mだった。
金メダル候補が次々と後退していく中、長島圭一郎、加藤条治の両選手は、持てる力を全て出し切り、堂々の銀と銅メダルに輝いた。
会場は途中、製氷作業のトラブルで一時間ほど競技が中断される等のアクシデントがあったが、彼らは落ち着いていた。
元々メダル獲得の候補であり、当然期待も高まっていたが、各国の強豪がメダルを狙って火花を散らしている中で、最後まで冷静さを失わず、自分の滑りに徹した結果がメダルへと結びついたのであろう。
歓喜渦巻く会場で、一人順位を確認する長島選手の姿が印象的であった。
それにしても、女子モーグルの余韻がまだ冷めやらぬ中で、上村愛子の4位入賞はいまだ信じられないファンもいるのではないだろうか。
最もメダルに近く、大きな期待を背負っていた選手もそうはいないだろうと思う。
一歩ずつではあったが、確実に進化する彼女のスキーには挑戦者の魂が熱く燃え、滑る度に厚い氷を溶かしてきた。
今度こそという想いは彼女自身を大きく成長させ、それを見る我々にも希望と勇気を与え続けてきた。
スポーツは諦めない人たちの集まりである。
目標を達成出来た時の充実感と達成感は、それを共有することで、更に大きな波動となり拡がって行く。
惨敗で終わったとしても、それは次の指標となって必ず自分の血や肉に変わる。
しかし、誰もが経験し大きな壁となるのが、体力と年齢だ。
オリンピックは4年に一度というルールがある。
選手によってはラストチャンスだったかも知れない。
彼女に4年後頑張れとは言えない。
だが、4位というメダルが彼女の心に光り輝いているではないか。
金銀銅だけがメダルではない。
目に見えないメダル、それは笑顔の奥に輝く金メダル。
上村愛子にそして全てのアスリートに惜しみない拍手を贈ろうではないか。