「トラステ賞」
天使がくれたピアノ 第11楽章
主のいない会社をたたみ、祖母は私を引き取り、5年間一緒に暮らしたの。でもその祖母に不幸が訪れたのは夏休みの最中だった。生徒の前でピアノを弾いている時、突然崩れるように祖母の身体が鍵盤を悲鳴に変えた。ひとり残された私の元に福祉課の女性が尋ねてきたのよ。そうして私は「天使寮」に入った。ここで暮らした6年間、友達も大勢出来たし、私にとってはとても充実した6年間だったわ。私が中学生になって始め弾いた曲、天使寮で開かれた七夕会の演奏会の時だったわ。曲名は「主は冷たい土の中に」フォスターの名曲だから知ってるわよね。一番左でピアノを弾いているのが私です。夢が叶った瞬間だったわ。ピアニストとはいかないけれど、数十人の人たちが見守る前で演奏出来たんだもの。この時とっても緊張していたわ。だってそうでしょ?指が震えて間違えないようにとそればかり考えていた。だから曲のリズムは覚えていなかった。でもこの曲悲しいわ。背景にはアメリカ社会の黒人奴隷があったし、この主はきっと白人だったと思う。私にとって、この曲は讃美歌だと思う。