本日はクリスマスイブとなりますが,この日に紹介したい製品がありました.KATOのオリエント急行(NIOE)です.
この列車の運行に際し,KATO製品に付属のパンフレットをしても「N.I.O.Eの全国ツアーはまるで鉄道模型ファンの運転会のように,いろいろな機関車が次々に繰り出された。」と書かれてしまうほどの,現在では到底考えられない・実現できない未曾有の巨大企画です.それだけ,1980年代当時の日本企業には資金力・技術力・交渉力があったことを思い知ることになります.フジテレビの番組担当者の方が,オリエント急行(VSOE社含む)に関する番組を制作された後,真剣に考えられたその熱意が国鉄当局・諸外国鉄道当局・日立製作所など技術グループを動かしました.
そして,1988年9月5日にフランス・パリを出発,香港到着後は日本への輸送・日立製作所笠戸事業所にて改造の上,1988年10月17日より日本国内の運行を開始しました.
このような情報はweb上でも少なく,まとまった情報があるのはWikipedia程度です.この記事に限らず頼りにしているサイトではありますが,特にこの記事はその傾向が強いです.
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9_%2788
模型を見る
前置きはこの辺りにしておき,製品を見ておきます.
オリエント急行の各車両はねじ式連結器であるため,日本国内ではアダプター車両が用意されました.1号車側に「マニ50 2236」が,11号車側にはナハネフ23 8を改造した「オニ23 1」が用意されます.前車にはリネン・食材・非常用部品が搭載されており,後者は改造を担当した日立製作所の,当時最新式のハイビジョンテレビのデモに使われていたとのことです.
客室用車両は6両です.乗車される方は一度の運行で40〜80名程度が募集され,一人16万円以上の設定であったにも関わらず,平均して5倍,コースによっては20倍を超える高倍率の抽選式で販売されました.
ラウンジカーにはピアノもあり,模型でも作り込まれています.
各車両の台車は,スハ43型のものを改造して使用しています.
この4158号車は現在でも箱根ラリック美術館で保存されています.
フランス大統領専用車として整備された車両も日本を走りました.長テーブルの大食堂があります.そのような設備を備えた車両は日本では他にALFA-X程度であったと思います.
ある意味オリエント急行を象徴づける荷物車です.キューポラは日本運行時に取り替えられたようです.車内の電源はここで賄います.
こちらはスタッフ寝台車です.
各車両には日本での運行に必要な検査表記,そして所属表記「東シナ」が書かれています.このため,この製品は日本型であり,当ブログでも「【模型車両】東京南・横浜・東京西・千葉」として紹介します.
牽引機
全国から車両が集められていました.オリエント急行の車両はほぼ全て「カ」級どころか,それでも重量の問題があり一部車両は冷房装置を外す,セノハチなど,通常旅客列車が単機で牽引できる区間を重連で牽引するなどの措置が取られました.旅客列車の機関車のみならず,JR貨物の機関車も使用されていました.
このEF81 81は筆者がこの列車への使用を踏まえて加工したものです.それでも細部が違いますが,目を瞑っておきます.
(実際に運行された列車とは異なります)
全国各地で「オリエント急行」は人気を博していましたが,ちょうど35年前の12/23〜12/25をもってラストラン,その際には「D51 498+EF58 61」の重連が実現しました.
「D51 498」はこの際の運行を目指して整備がなされていましたが,交通博物館(→大宮鉄道博物館)に保存されており,最も状態が良いとされていたC57 135を復元する構想もあったようです.
模型なのでこのような編成も組めてしまいます.
製品について
模型は2008年に初めて販売された後,2012年・2018年にも再販されており,筆者が所有しているのは2012年ロットです.その後,「パリ〜香港」仕様も発売されており,そちらには日本運行編成から漏れたシャワーカーが含まれています.
模型としてみると1/150でも1/160でもなく,日本型としてバランスの取れたサイズとなっているようです.そもそも外国の鉄道車両を日本で売ることが企画上難しいのですが,それのみならず模型としての出来も,歴代のKATO製品としては最高クラスです.
昭和の最後の最後に輝いたこの一編成,例えば「完全新規のEF58 61」などを提げて,運行から35年を経てそろそろ再販されても良いような気がします.