国立新美術館で開催中の「ダリ展」行ってまいりました。
最初から最後まで、入口から出口までダリ、ダリ、ダリ、ダリ…、全部ダリ。
ダリだらけ。
「ダリ展なんだからダリの絵ばっかりなのは当たり前だろう」と思う方も多いでしょうが、
意外とそうでもないんですよ。奥さん。


かつて「フェルメールとレンブラント展」ていうのがありまして。
当然のごとくフェルメールの絵とレンブラントの絵が勢揃いしてると思うでしょ。
ところがどっこい、中へ入ってみて驚いた。吃驚仰天。

探せど探せど、ない。ない。ないないない。ないないないないないない。
フェルメールの絵が全然ない。
ぐるぐるぐるぐる館内を巡り巡って、ようやく見つけた一枚の絵。
「あ、あったー!フェルメール!」館内中走り回って見つけたフェルメール結局たったの一枚。
ウォーリーならぬ「フェルメールを探せ」ですよ。

まあ現存するフェルメールの数は元々少ないんで、仕方ないといえば仕方ない。
代わりにレンブラントは相当あるだろう。と思って探してみると、
ない。ない。ないないないないない、あ、あった!
見つけました!その数なんと!…二枚。

しかも、よーく見ると、一枚の方は「レンブラントに帰属」
帰属ってつまりは「レンブラントが描いたかもしれない絵」って事ですよ。

てことは、美術館中探してもフェルメールの絵が一枚、レンブラントの絵が一枚。
「フェルメールとレンブラント展」なのに…。





これって音楽に例えるならば、矢沢永吉のコンサートを見に行って、
永ちゃん一曲だけ歌ってすぐに「じゃ、あとヨロシク!」って帰っちゃうようなもんでしょ。
その後矢沢B吉、C吉、D吉が次々出てくるみたいな。



美術館巡りをしていると、こんな落とし穴も多々あります。
なので今回の「ダリ展」は間違いなく「ダリ展」である。という事を明らかにした上で、
本題に入りたいと思う所存にございます。





ダリって聞くと一般的には、ぐにょっと曲がった時計だとか
びよーんと伸びたピアノだとかを思い浮かべる方々も多いかと思います。
今回もびよーんぐにょーんぐるりんにょろーんの絵がメインだったんですが、
個人的に面白いなーと思ったのが初期のダリ作品。
ダリなんだけどダリっぽくない、ちょっと先輩たちの影響が透けて見える初々しい絵。

見る側からすると「おっ!最初っから完成されてた訳じゃなく
色んな試行錯誤の積み重ねがあって初めてダリ的世界が出来上がるのか」
って思える、ダリのルーツを覗けるような絵。
確かに見る側からすると嬉しいんだけど、ダリ本人からするとこれはこれで相当恥ずかしいんだろうな。
「うわっ!やめて。そんな昔の絵出すのやめて。俺天才のイメージで売ってるのに、
デビュー当時のすべってる映像流すのやめてー、
いやすべってはいないよ!ただなんか、ほら、イメージ違うでしょ!」
って気分だろうと思うんですよ。ダリ的に。

画家の宿命ですかねえ。
生きてるうちはともかく死後も展覧会を開かれるレベルの画家は大変ですよ。

カラヴァッジョっていう画家の展覧会に行った時も感じました。




この人、数々の犯罪を犯し、最終的には殺人まで犯して
逃亡しながら絵を描いていたっていう伝説の画家なんですけど、
「カラヴァッジョ展」の会場に入ると、絵以外に変わったものも展示してあったんです。
何だと思います?

正解は、
「カラバッジョが事件を起こしたときの取り調べ調書」
やめてあげてー!
そして「その時の裁判記録」
かんべんしたげてー!

プライバシーだだ漏れ。

さらに五姓田義松っていう明治時代の洋画家の展覧会に行った時には、
生涯年表が張り出されていました。
まあ、年表自体はどの画家でも張り出されているので驚くに値しないのですが、
何かいつもとは異なる違和感が…。

「1855年、洋画家である五姓田芳柳の次男として生まれる」
へー、お父さんも画家なのかー。
「1865年、10才の頃横浜でチャールズ・ワーグマンに弟子入り」
なるほどー早熟だねー。
「1871年、絵画販売を始める」
おー、16才でもうプロだ。ん?あれ?最後に何か書いてある。

「1871年、絵画販売を始める。収入47円35銭」えっ?
「1872年 収入145円35銭」
「1873年 収入250円50銭5厘5毛」
うわわわわ、収入バラされてるよ!

「1874年 収入335円」
やった!増えた!
「1875年 収入75円」
あちゃー!激減!

「1881年 収入4130フラン」
フラン?そーかフランス行ったのか!
けど増えたのか減ったのかピンと来ないよ。
喜んでいいのか、悲しんでいいのか…

いやいやいや!問題はそこじゃない!
こんなにあからさまに収入バラされるってどういう事だ!
ここまで露骨に年収バラされるのって五姓田義松か一発屋芸人くらいだ!

しかも「1879年 金時計を盗まれる…」
誰だー!盗んだヤツ!返してやれー!

さらには晩年収入が激減し、
後輩の「黒田清輝に自分の絵を買ってもらうよう依頼する…」
せつねー。
そしてその隣には「その時書いたの直筆の手紙」。まさに公開処刑。

おそるべし!美術展!
プライバシーも何のその!
画家を目指す若人よ!ゆくゆくは君のすべてが公開されると肝に銘じよ!