#262 いとうせいこう『想像ラジオ』 | 漂流バカボン

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何か適当なテーマを自分で決めて自分で勝手に述べていこうという、そんなブログです。それだけです。

時間の感覚とは、不思議なものです。

今日で、東日本大震災から、丸5年。
5年の月日が、長いのか短いのか。

震災のあの衝撃的な情景をテレビで目にしたのが、ついこの間のような気もします。

その一方で、昨年、一昨年、その前の年・・・と身の回りで起こったことを考えてみると、この5年の間に様々な事があり、それなりに時が流れているような気もします。


いとうせいこうの小説『想像ラジオ』は、この震災をうけて書かれた小説です。



樹の上にいる主人公のDJアークは、みんなの想像力に向けて、番組を発信し続けます。
DJアークが何故樹の上にいるのかというと、震災の津波で木の上に押し上げられたからであり、彼は「生者」と「死者」の間で、メッセージを、自分の想いを、DJとして発信し続けるのです。
そして、その結末は・・・

自分にとって、いとうせいこうという人は、1980~90年代ごろに活躍した「業界の人」であり、「タレント」というイメージしかありませんでした。
「ノー・ライフ・キング」という小説を書いて、そこそこ評判になった事も知っていましたが、その小説も読んだことはなく、多才な人なんだな、位の印象で、その後しばらく忘れていた名前でした。

今回、いとうせいこうは、物書きとして、思いを込めてこの小説を書いたのだと思います。
小説の内容の良し悪しについてはあまり分かりませんが、自分はこの小説の底にある暖かさに、読後は胸を打たれました。

この震災で亡くなった方々に、DJアークという主人公を借りて、それこそ作家としての「想像力」で、追悼の意を捧げるために書かれた小説だと思います。

それにしても、この小説に出てくるジングル、♪想ー像ーラジオーって、どんなメロディーなのかなぁ。

合掌。