#226 ユニコーン「ヒゲとボイン」 | 漂流バカボン

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何か適当なテーマを自分で決めて自分で勝手に述べていこうという、そんなブログです。それだけです。

奥田民生が中心となって結成したバンド、ユニコーン。

1980年代後半から1990年代前半の活躍は、ちょうど自分の大学生活とほぼ重なります。

当時、バンドブームもあり、様々なバンドがヒットチャートを賑わしていました。その中には様々なユニークなバンドがあり、また幾つかのバンドは現在もなお活躍しています。

「THE BOOM」「米米クラブ」「たま」「PRINCESS PRINCESS」「JUN SKYWALKER(S)」「 THE 東南西北」・・・。また、B-ing系の数々のバンドなど。それぞれのバンドや曲には、自分の当時の思い出もたくさん詰まっています。

その中で、この「ユニコーン」というバンドの曲は、当時異彩を放っていました。

バンドにしてもソロの歌手にしても、歌のテーマは通常、ほぼまずは「恋愛」や「男女の間の感情」です。また「青春の懐古」「弱い者、頑張っている者への励まし」「未来への希望」などがテーマになることもありますが、大体そのテーマの中からたくさんの曲が作られ、世に出されていきます。

そんな中、ユニコーンの出す曲といえば、例えば有名なところでは「大迷惑」。これは曲のテーマがなんと単身赴任。また、「服部」「働く男」「スターな男」など、恋愛などではない、独特な詞の世界が繰り広げられます。

かといって、コミックソングかというと決してそんなことはなく、ペーソス溢れた詞ですが、世の中の悲哀とおかしみのようなものをきちっと捉え、見事に曲に仕上げています。



そして、今日取り上げる1曲も、最もユニコーン「らしい」曲と言えるでしょう。

題名は「ヒゲとボイン」。

なんちゅう題名だ、と思うかもしれませんが、これにはきちっと元ネタがあります。それは、小島功による同名の漫画です。

小島功は、いわゆる昭和の短編漫画の名士で、ちょっと色っぽくエロティックな大人の漫画を得意とします。
絵のタッチはソフトで、中国の水墨画を思わせるような、味のある絵を描きます。日本酒「黄桜」の河童のデザインをしたのも、この人です。




そして、小島功は、このユニコーンの曲のCDジャケットに、実際イラストも描いているのです。

自分は、漫画としての「ヒゲとボイン」は読んでいないのですが、まあ「ヒゲ」は男性の象徴、「ボイン」は女性の象徴でしょう。

歌詞はというと、テーマはそうですね、「不条理」。

「ヒゲ=権力」と、「ボイン=色香」の間で悩む、ある意味男性特有の、尽きせぬ煩悶。
コミカルな中にも、おそらく多くの人が「わかるなあ」と共感したくなる、見事な歌詞です。

一生懸命頑張ってはいるんだけれど、自分の周りにいる「ヒゲ」と「ボイン」に悩まされる日々・・・。

♪ああ 男には 辛くて長い ふたつの道が
 ああ 永遠の 深いテーマさ ヒゲとボインが 手招きする



ユニコーンはその後、「雪が降る街」「すばらしい日々」という2曲を立て続けにリリースし、活動休止に入ります。この2曲は、これまでのユーモア路線を一変し、「雪が降る街」ではその叙情性、「すばらしい日々」ではそのメッセージの力が、いずれも高いレベルで紡がれた名曲です。

ちなみに「すばらしい日々」は、矢野顕子のカバーバージョンもありますが、これもなかなかいい作品です。

ユニコーン活動休止後、奥田民生はソロのミュージシャンとして活躍していくのですが、自分は、ちょっと「マッチョ」っぽくなったソロの奥田民生より、ユニコーン時代の、情けないけれどペーソス溢れた曲を作っていた奥田民生の方が好きです。