#225 田宮二郎 | 漂流バカボン

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何か適当なテーマを自分で決めて自分で勝手に述べていこうという、そんなブログです。それだけです。

自分がテレビの中で活躍する田宮二郎を知ったのは、子供の頃によく見ていた、「クイズ・タイムショック」で、でした。




「クイズ!タ~イム、ショック!!1分間で100万円のチャンス・・・」の決まり文句から始まるこのクイズ番組、司会進行を務めていたのが、俳優の田宮二郎でした。




子供の目から見ても男前の端正な顔立ち、硬軟取り混ぜながら番組を進めていく鮮やかな司会進行。




自分の中では「格好いい司会者さん」として、田宮二郎を毎週見ていました。


でも、それ以上、田宮二郎という人物について、子供の自分には知っていることなど、ありませんでした。






そして、自分が小学校中学年くらいの、ある日。




たまたま、家に自分一人しかいなかった時ですが、午後3時頃、テレビを見ようと思って何の気なしにつけました。


午後3時頃といえば、「3時のあなた」とか、「3時にあいましょう」といったワイドショーが、当時は放送されていた時間帯です。


この頃、このワイドショーでよく「心霊写真特集」などの怖い特集が組まれており、自分は怖いもの見たさで、学校帰りによくこれらの特集を見ていました。




しかし、その日は、何やら番組の雰囲気が違いました。「田宮二郎、猟銃自殺!!」という見出しがブラウン管に映し出されており、なにやら現場の慌ただしい中継が流れていたのです。




最初、自分は、これも田宮二郎をネタにした、何かのオカルト企画か、と思って観てました。



しかし、確かその日の夜に、「ザ・ベストテン」の放送で黒柳徹子が田宮二郎の自殺に触れる発言をし、「あっ、本当の出来事だったんだ・・・」と実感しました。

この時、ちょうどテレビでは田宮二郎が財前五郎役を演じた「白い巨塔」が、あと数話というクライマックスを迎えていました。






「白い巨塔」は、後に唐沢寿明・江口洋介主演でもリメイクされましたが、この田宮二郎版「白い巨塔」はそれまでにも映画でヒット作となっており、田宮二郎は財前五郎役として、まさに「役が乗り憑った」かのごとくの迫真の演技を見せていました。

最終話は、その財前五郎が死亡する設定でした。

そして、その最終話が放映されたのは、田宮二郎が自殺した1週間くらい後でした。役者が実際に亡くなったすぐ後に、その役者が演じていた役も死ぬという偶然(?)に、世の中の関心が集まりました。

自分も、子供心ながら、この最終回は強烈な印象が残っています。

財前五郎が、教授まで上り詰めながらも、足をすくわれて権力の座をおちていく中、病に冒され亡くなるという最終回。

財前五郎が体調を崩し入院し、進行癌であることが判明しますが、周りは財前五郎にその事実を隠します。

そして、財前は何も知らず入院するのですが、ある日、ふと洗面所の鏡に写った自分の顔を目にします。

そこで、財前が、自分の顔に「黄疸」が出ていることに気がつきます。
何しろ財前は医師なので、そこで自分が冒されている病気に気がつくのです。

そして、自分が今でも覚えているのは、自分の姿を見た財前五郎が、病棟のナースステーションに走りこんできて、「どこだ!!俺のカルテは、どこだ!!」と怒鳴り込んでくるシーンです。

この時の田宮二郎の、まさに鬼気迫ると言ってもいい演技は、すでに実際に亡くなっているという事実を差し引いたとしても、ものすごくごくインパクトがありました、

もしかすると、これを演じている時、実際に田宮二郎は、自分の死について、既にある決断をしていたのかもしれません。

多分そのドラマを見た日、子供の自分はそのシーンが強烈すぎて、眠れなかったと思います。

自分としては、その当時、「あのタイムショックの司会のおじさん」の自殺の報道、そしてこのような迫真の演技を立て続けに見せられて、正直戸惑いの方が大きかったと思います。

そして、これから大人になっていくのに、どんな事が待ち受けているんだろう、と、身の引き締まる思いをしたのも事実です。

田宮二郎、享年43。既に自分は、その年齢を超えてしまいました。