#146 竜馬の妻とその夫と愛人 | 漂流バカボン

漂流バカボン

何か適当なテーマを自分で決めて自分で勝手に述べていこうという、そんなブログです。それだけです。

21世紀の最初の日、2001年の元旦。新神戸オリエンタル劇場で、東京ヴォードヴィルショーの公演「竜馬の妻とその夫と愛人」を観ました。

東京ヴォードヴィルショーについては、実はもう自分が中学生の頃から関心はありました。その頃、時々雑誌「ぴあ」を購入して、その時の映画や音楽、イベントなどをチェックしていたのですが(今ではインターネットで簡単に入る情報ですが、この頃は「ぴあ」とか「シティーロード」といったこれら情報誌が頼りでした)、その中に「演劇」のカテゴリーがあり、1980年代にはこの東京ヴォードヴィルショーや東京乾電池といった、新たに旗揚げされた劇団に人気が集まっていました。

 自分も、いつか一度は生でこれらの劇団の演劇を見てみたいと思いながら、中学生・高校生という身分では、決して安くはないチケット代の工面を含め、なかなか実現することが困難でした。

 この頃の東京ヴォードヴィルショーは、座長の佐藤B作や、団員の山口良一などは「欽ちゃんファミリー」でテレビでの露出も多く、また、同じく団員の市川勇は、確か「デカ鼻いっちゃん」との愛称で、「笑っていいとも!」のコーナーを持ったりしていて、勢いのある劇団という印象でした。

 しかし、その後、自分の興味の対象も他へ移ったこともあり、また東京も離れ、やがて仕事に追われる毎日となり、演劇を観に行くような環境にはその後しばらくなりませんでした。

 それでも、やがてポツリポツリと演劇やミュージカルなどを観る機会も出てきて、2001年のお正月が近づき、東京ヴォードヴィルショーが神戸で公演を行うという情報が入ってきました。それまでしばらく忘れていた懐かしい劇団名に、思わずチケットを購入し、ようやく人生初のヴォードヴィルショー公演を見ることとなったのです。

さらに、この「竜馬の妻とその夫と愛人」の脚本は三谷幸喜の手によるもの。今ではもう大御所感が漂っていますが、その当時の三谷幸喜は「古畑任三郎」の脚本を手掛けたり、映画「ラヂオの時間」の脚本・監督を務めたり、創作に勢いのある時期でした。(ちなみに、この「竜馬の妻とその夫と愛人」も、2年後に市川準監督で映画化されました)



この劇は、竜馬の妻おりょう(あめくみちこ)が主人公で、竜馬が暗殺されたのちに再婚したおりょうが、ちょっと冴えない夫(平田満)と、竜馬の再来と思われる「かっこいい」愛人(佐渡稔)との間で繰り広げるコメディーです。

おりょうが、死んだ竜馬の幻影を追い求めるがごとく愛人に惹かれ、駆け落ちしようとするのですが、それを何とか食い止めようとする夫と、おりょうの義理の弟(佐藤B作)。

また、竜馬似のおりょうの愛人虎蔵も、最初はかっこいいのですが、段々とボロが出てきて、結局は「やっぱり竜馬とは違うんだ」という事になります。

竜馬の死後の話ですので、竜馬自身はこの劇には出てきません。上で挙げた4人のみで、劇は最初から最後まで繰り広げられます。

三谷幸喜作品の真骨頂である、細かい笑いやペーソスあふれる作品で、またほろっとさせる場面もあり、時間を忘れて楽しめる作品でした。

そして今回、演じている舞台俳優が皆ベテランという事もあったかもしれませんが、初めて生で見た東京ヴォードヴィルショーの舞台は、俳優の動きや表情、台詞の一つ一つが観る者をひきつけ、自分をお芝居の中の世界へと引きずりこんでくれました。

もうこの公演を見て15年が経ちましたが、今でも印象に残っているお芝居であり、この公演と共に自分の21世紀の日々も始まったと思うと(大袈裟ですが)、感慨深いものがあります。