◇TKCタックスフォーラムに参加しました
TKCタックスフォーラムに参加してきました。
TKCでは毎年、
各地域会が研究成果を発表しています。
今年の担当は、TKC東京都心会さん。
研究テーマは、
👉「確定決算主義と会計帳簿の証拠力」
でした。
とても興味深く、勉強になる研究発表でした。
特に私が関心を持ったのは、
👉民事訴訟における会計帳簿の証拠力です。
実は私自身、
現在、民事訴訟の当事者として裁判を戦っています。
そのため、
会計帳簿が裁判でどのように評価されるのかという問題は、
決して他人事ではありません。
今回の研究発表をきっかけに、
改めて考えてみました。
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◇会計帳簿は「報告証書」に分類される
民事訴訟では、契約書や領収書など、
さまざまな文書が証拠として提出されます。
これらを「書証」といいます。
書証には、大きく分けて、
👉「処分証書」と「報告証書」
という分類があります。
契約書や遺言書などは、処分証書。
一方、会計帳簿や領収書、日記などは、
一般に報告証書に分類されます。
会計帳簿は、
企業が行った取引の事実を記録したものです。
また、会社法第434条には、
裁判所が訴訟の当事者に対して、
会計帳簿の提出を命じることができると規定されています。
つまり、会計帳簿は、
税金を計算するためだけの資料ではなく、
裁判でも証拠となる文書なのです。
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◇形式的証拠力と実質的証拠力
民事訴訟における文書の証拠力には、
二つの考え方があります。
①形式的証拠力
その文書が、作成者の意思に基づいて真正に作成されたものか。
②実質的証拠力
その文書の内容が、証明しようとする事実について、
どれほど信用できるか。
会計帳簿についていえば、
会社が実際に作成した帳簿であることと、
そこに記載された取引が真実であることは、
別の問題です。
そこで重要になるのが、
帳簿がどのように作成され、
検証されているか
ということです。
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◇会社法が求める「適時・正確な記帳」
会社法第432条は、株式会社に対して、
適時に、正確な会計帳簿を作成すること
を義務づけています。
取引が発生するたびに、
業務の通常の過程で、その実態を把握し、
証憑に基づいて記帳する。
これが、
会計帳簿の証拠力を支える基本です。
当法人が、
お客様自らが会計帳簿を作成する
👉「自計化」
を重視するのも、このためです。
経営者が自社の取引を把握し、
自らの責任で帳簿を作成する。
その積み重ねが、
信頼できる会計帳簿につながります。
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◇巡回監査が、帳簿の証拠力を高める
私たちTKC会員が実践する、
👉巡回監査
では、
企業が自ら作成した会計帳簿について、
次の事項を検証します。
適時性:適時に記帳されているか
正確性:金額や会計処理が正確か
適法性:法律に従っているか
完全網羅性:記帳漏れがないか
実在性:取引が実際に存在するか
真実性:取引の実態を正しく反映しているか
そのために重視するのが、
👉「現地・現物・現人」による確認
です。
巡回監査は、
単に帳簿の数字をチェックする仕事ではありません。
取引の実態と帳簿の記載が一致していることを、
証憑や事実関係に基づいて検証する仕事です。
👉 この検証の積み重ねが、
会計帳簿の実質的証拠力を高めるのです。
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◇税理士法第33条の2の書面添付が持つ意味
さらに重要なのが、
👉税理士法第33条の2の書面添付制度
です。
この書面には、
税理士がどのような帳簿書類を確認し、
どのような審査を行ったのかを記載します。
そして……
税理士法第46条には、
添付書面に故意に虚偽の記載をした場合の
懲戒処分が規定されています。
税理士の懲戒権者は、財務大臣です。
つまり税理士は、
行政処分の責任を負う立場で、
自らの審査内容を明示している
ということになります。
ここに、
書面添付の大きな意味があります。
単に、「税理士が確認しました」
という話ではないのです。
何を、どのように確認したのか。
その内容を、
法律上の責任を伴う書面に記載するのです。
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◇自由心証主義と会計帳簿の証拠力
民事訴訟では、
民事訴訟法第247条によって、
👉「自由心証主義」
が採用されています。
裁判官は、
提出された証拠などを総合して事実を認定します。
では……
巡回監査を経た会計帳簿と、
税理士法第33条の2の添付書面は、
どのように評価されるのでしょうか?
……私は、次のように考えています。
企業が適時・正確に記帳し、
税理士が巡回監査によって取引の実態を検証する。
さらに、その審査内容を、
懲戒制度に裏付けられた書面に明示する。
この一連の仕組みは、
裁判官が帳簿の信用性を判断するうえで、
相当に有力な材料になるはずです。
もちろん、書面添付があるだけで、
帳簿の記載が必ず真実と認定される制度ではありません。
しかし、審査内容が具体的に記載されていれば、
裁判官の心証にも相当の影響を与え得ると考えます。
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◇税務では、帳簿の証拠力が法律で保護されている
ちなみに、税務の世界では、
会計帳簿の証拠力について、
さらに明確な仕組みがあります。
法人税法第130条と所得税法第155条です。
青色申告法人の帳簿の記載自体を否認して更正する場合、
課税当局には、帳簿の記載以上に信憑力のある資料に基づき、
更正の根拠を具体的に示すことが求められます。
適正に作成された会計帳簿を、
課税当局が理由もなく否認することはできません。
民事訴訟に同じ規定が適用されるわけではありませんが、
会計帳簿の証拠力が、
税法上も重要視されていることが分かります。
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◇会計帳簿は、企業を守るもの
私は、会計帳簿には二つの重要な機能があります。
①商業帳簿の証拠力の定立
企業活動の事実を記録し、
必要なときにその事実を証明すること。
②自己報告機能の発揮
経営者が自社の数字を把握し、
経営判断に活用すること。
今回のタックスフォーラムでは、
特に前者について、
改めて考える機会をいただきました。
自ら民事訴訟の当事者となっている今だからこそ、
深く考えることができました。
会計帳簿は、
決算や申告のためだけに作るものではありません。
日々の企業活動を記録し、
経営を支え、
いざというときには企業を守る証拠になる。
その信用性を支えるのが、
企業自身による適時・正確な記帳と、
税理士による巡回監査、
そして書面添付制度なのです。
大変勉強になる研究発表でした。
TKC東京都心会の皆様、
ありがとうございました。
